60話 オーク討伐
Eランクへ昇格した翌日。
俺たちは、山道へ向かっていた。
今回の依頼は――
『山道周辺のオーク討伐』
Eランクになって初めて受ける依頼だ。
「オークって、どれくらい強いの?」
レティシアが歩きながら尋ねる。
「ゴブリンよりはかなり強い魔物です」
エリスが答える。
「でも、今の私たちなら大丈夫だと思います」
「油断はしないようにしよう」
俺は前方を見る。
山道の先には、深い森が広がっていた。
---
しばらく進むと、木々の向こうから声が聞こえた。
「……何かいる」
俺は魔力感知を使う。
「三匹」
「オーク?」
「うん」
レティシアが剣を抜く。
エリスも弓を構える。
木の陰から、三体のオークが姿を現した。
大きな身体。
手には棍棒。
「来る!」
オークが一斉に走り出す。
「《ウィンドステップ》!」
エリスの補助魔法が発動する。
三人の身体が軽くなる。
レティシアが一体を引きつける。
「こっちは任せて!」
俺は別の一体へ向かった。
---
オークの棍棒が振り下ろされる。
俺は横へ避ける。
――ドゴン!
地面が砕ける。
「力が強い……!」
正面から戦うのは危険だ。
俺は距離を取る。
魔力を集中する。
「《フレイムスパイラル》!」
炎の螺旋がオークへ飛ぶ。
――ゴォォッ!
オークが腕で顔を守る。
炎に包まれ、動きが止まった。
「今!」
俺は一気に近づく。
――ザンッ!
オークが倒れる。
「一体!」
---
レティシアも苦戦していた。
オークの攻撃を避け、何度も距離を取る。
「こいつ……強い!」
だが、以前とは動きが違う。
攻撃を受け止めるのではなく、相手の力を利用して横へ流している。
「レティシア、そのまま!」
「分かってる!」
オークが大きく棍棒を振る。
レティシアは一歩下がる。
攻撃が空を切る。
その瞬間――
――ザンッ!
レティシアの剣がオークの脇腹を捉えた。
「やった!」
オークが倒れる。
「今の、かなり良かったよ」
俺が声をかける。
「でしょ?」
レティシアが嬉しそうに笑う。
---
最後の一体が逃げようとする。
「逃がしません!」
エリスが弓を引く。
――シュッ!
矢が飛ぶ。
オークの足へ命中。
「止まった!」
レティシアが走る。
俺も反対側から回り込む。
三人で挟み込む。
――ザンッ!
最後のオークが倒れた。
「終わった!」
---
戦いが終わったあと。
俺は倒れたオークを調べていた。
「……まただ」
「黒い魔力?」
エリスが聞く。
「うん」
オークの身体に、ほんの僅かな黒い魔力が残っている。
前に遭遇した魔物ほど濃くはない。
けれど、確かに同じものだ。
「この辺りの魔物にも広がってる」
レティシアが不安そうにする。
「どうしてだろう?」
「まだ分からない」
俺は立ち上がる。
「でも、今の俺たちが深入りするのは危険だ」
Eランクになったばかり。
できることには限界がある。
まずは自分たちが受けられる依頼をこなし、実力をつける。
それが今の俺たちにできることだった。
---
帰ろうとしたとき。
エリスが地面を見つめていた。
「どうしました?」
俺が尋ねる。
「ここ……誰かが通った跡があります」
土の上に、微かな足跡。
人間のものだった。
「冒険者?」
「分かりません」
エリスが首を横に振る。
足跡は森の奥へ続いている。
そして、その近くには――
黒い魔力の痕跡。
「……魔物だけじゃない」
俺は呟いた。
誰かが、この異変を調べている。
それとも――
異変を起こしている側なのか。
まだ何も分からない。
「今日は帰ろう」
俺はそう言った。
「うん」
三人で山道を下る。
---
街へ戻ったあと。
ギルドで依頼達成を報告する。
オーク討伐の報酬を受け取り、宿へ戻る。
その夜。
俺の視界にステータスが浮かんだ。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:E
レベル:25
「25……」
少しずつだけど、確実に強くなっている。
レティシアもエリスも、以前より戦い方が上手くなっている。
だけど――
俺はあのアーマードボアを思い出す。
今の俺たちでは、まだ勝てない。
「もっと強くならないと」
焦る必要はない。
一つずつ。
FランクからEランクになった。
次はDランク。
その先には、まだまだ長い道がある。
---
翌朝。
ギルドの掲示板に、一枚の新しい依頼書が貼られた。
『山間部にて魔物の群れを確認。追加調査を求む』
依頼書の下には、小さくこう書かれていた。
「通常より魔物の数が多い模様」
俺はその文字を見つめる。
黒い魔力。
増え続ける魔物。
そして、森の奥へ続く謎の足跡。
少しずつだけど――
何かが繋がり始めていた。
第60話 終




