58話 自分達にできること
アーマードボアとの遭遇から数日。
俺たちは再び冒険者ギルドへ来ていた。
「今日は何にする?」
レティシアが掲示板を眺める。
俺も依頼書を確認する。
俺たちはまだFランク。
だから受けられる依頼も、基本的には簡単なものばかりだ。
「これにしよう」
俺が一枚の依頼書を取る。
『薬草採取・街道周辺』
「地味だね」
「仕方ないよ。俺たちはまだFランクだから」
「分かってるけど……」
レティシアが少し残念そうにする。
エリスが依頼書を確認する。
「でも、薬草採取なら危険も少なそうです」
「うん。今日はこれにしよう」
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街から少し離れた森。
薬草が生えている場所を探す。
「この辺りだったはず」
エリスが周囲を見る。
「薬草は日当たりのいい場所に生えることが多いです」
「詳しいね」
「エルフですから」
エリスが少しだけ笑う。
レティシアが薬草を見つける。
「あった!」
「それは違う」
「えっ?」
「それ、毒草」
「危なかった……」
三人で笑う。
戦闘ではない。
こういう時間も悪くない。
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薬草を集めていると、茂みが揺れた。
「魔物?」
俺は魔力感知を使う。
「一匹」
出てきたのは、小さな魔物だった。
灰色の毛。
鋭い牙。
「グレイラットです」
エリスが言う。
「弱そう」
レティシアが剣を抜く。
グレイラットが飛びかかってくる。
「任せて!」
レティシアが剣を振る。
――ザンッ。
一撃。
「終わり!」
レティシアが剣を戻す。
「これくらいなら楽勝だね」
「うん」
俺も頷く。
だが――
エリスがグレイラットの死体を見つめている。
「どうしたの?」
「……この魔物にも、少しだけ黒い魔力が残っています」
「え?」
俺も確認する。
確かに微弱だ。
ほとんど気づかないほどの量。
「また……」
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薬草採取を終えて森を出る。
俺は考えていた。
ゴブリン。
ホーンウルフ。
アーマードボア。
そして今回のグレイラット。
種類は違う。
でも――
どの魔物にも黒い魔力の痕跡がある。
「やっぱり偶然じゃない」
俺が呟く。
「うん」
レティシアも頷く。
「何かがおかしい」
エリスが静かに言う。
「でも、私たちはまだFランクです」
「分かってる」
俺は答える。
「今の俺たちだけで調べるのは危険だ」
だからこそ、まずは自分たちの力をつける。
焦ってはいけない。
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街へ戻る前。
俺は少しだけ魔法の練習をすることにした。
「《フレイムスパイラル》」
炎と風が螺旋を描く。
――ゴォッ。
昨日より安定している。
「おお!」
レティシアが拍手する。
「前より上手くなってる!」
「まだまだだけどね」
俺は魔力の流れを確認する。
以前より少ない魔力で維持できるようになっている。
「魔力操作が上がってるんだと思う」
エリスが頷く。
「はい。以前より魔力の無駄が少なくなっています」
俺は炎を消す。
「もっと練習しよう」
新魔法は、まだ完成したとは言えない。
でも、少しずつ自分のものになっている。
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街へ戻り、依頼を報告する。
「薬草採取、確認しました」
受付嬢が依頼達成を記録する。
「お疲れ様でした」
「ありがとうございます」
報酬を受け取る。
レティシアが小さな袋を見る。
「……これだけ?」
「Fランクだからね」
「うーん……」
レティシアが肩を落とす。
エリスが笑う。
「焦らなくても大丈夫です」
「そうだね」
俺も笑う。
ランクは一気に上げるものじゃない。
少しずつ実績を積んでいけばいい。
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ギルドを出ようとしたとき。
「キラさん」
受付嬢に呼び止められる。
「はい?」
「先日のアーマードボアの件ですが、調査が始まったそうです」
「本当ですか?」
「はい。近いうちに、上位ランクの冒険者による調査隊が組まれる予定です」
俺は頷く。
やっぱり、あの魔物は普通じゃなかった。
「ありがとうございます」
ギルドを出る。
レティシアが聞く。
「私たちも調査に参加する?」
「まだ無理だと思う」
「Fランクだもんね」
「うん」
今は、自分たちにできることをする。
それでいい。
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夜
宿へ戻った俺は、ステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
冒険者ランク:F
レベル:23
変化はない。
でも、焦りもなかった。
レベルを上げる。
魔法を磨く。
依頼をこなす。
仲間と強くなる。
まずはそこからだ。
そしていつか――
あのアーマードボアにも勝てるようになる。
俺は静かにステータス画面を閉じた。
まだ始まったばかりだ。
第58話 終




