55話 範囲魔法 フレイムスパイラル
洞窟から戻った翌日。
俺は朝から魔法の練習をしていた。
「《フレイムスパイラル》……!」
炎と風を同時に操る。
昨日は偶然できた。
でも今日は――
――ボッ。
炎が一瞬だけ形を作り、すぐに消えた。
「……駄目だ」
魔力が一気に抜けていく。
やっぱり、まだ安定しない。
「昨日はできたのにね」
レティシアが横から覗き込む。
「戦闘中はできたんだけど」
「じゃあ、戦ってる方が得意なのかも」
「そんなわけないよ」
俺は苦笑する。
そのとき、後ろからエリスが近づいてきた。
「キラさん」
「ん?」
「少しだけ、やり方を変えてみてはどうでしょう?」
「やり方?」
「炎と風を同時に動かそうとしているから、魔力の消費が大きいのでは?」
俺はエリスを見る。
「……なるほど」
エリスは地面に枝で簡単な図を描く。
「最初に炎を作って、その周囲に風を流す。二つを別々に作るのではなく、一つの魔法として繋げるんです」
「魔力の流れを一本にする……」
「はい」
俺はもう一度試してみる。
炎を作る。
その周囲に風を流す。
――ゴォッ。
昨日より長く維持できた。
「できた!」
レティシアが喜ぶ。
炎はまだ小さい。
けれど、昨日より安定している。
「ありがとう、エリス」
「いえ……」
エリスは少し照れたように笑った。
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練習を終え、三人でギルドへ向かう。
掲示板には、いつもより多くの依頼が貼られていた。
「今日はどれにする?」
レティシアが依頼書を見る。
俺も確認する。
すると――
「これ、どうかな」
一枚の依頼書を取る。
『西街道・魔物討伐及び街道警備』
討伐対象は――
ホーンウルフ。
「ホーンウルフ?」
「最近、西街道で目撃が増えている魔物ですね」
エリスが説明する。
「群れで行動することが多いです」
「ちょうど三人で戦う練習にもなるね」
レティシアが頷く。
「行こう!」
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西街道を歩いていると、エリスが突然足を止めた。
「……来ます」
「分かるの?」
「音がします」
耳を澄ませる。
俺にも魔力反応が見えた。
「五匹」
「じゃあ、準備しよう」
俺が剣を抜く。
レティシアも構える。
エリスは少し後ろへ下がり、弓を構えた。
――ガサッ。
茂みからホーンウルフが飛び出してくる。
「来た!」
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一匹が俺に飛びかかる。
剣で受け止める。
――ガキッ!
「速い!」
ホーンウルフが横へ跳ぶ。
その瞬間。
――シュッ!
エリスの矢が飛ぶ。
矢はホーンウルフの前足をかすめた。
「惜しい!」
「次は当てます!」
エリスがもう一度弓を引く。
レティシアが横から突っ込む。
「私が追い込む!」
ホーンウルフが逃げようとする。
レティシアが進路を塞ぐ。
そこへ――
――シュッ!
矢が飛ぶ。
今度は肩に命中した。
「当たった!」
エリス自身が驚いている。
「いいね!」
俺がホーンウルフを倒す。
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残りの四匹が一斉に襲ってくる。
「エリス、補助魔法!」
「はい!」
「《ウィンドステップ》!」
風が三人を包む。
だが――
「一匹、多い!」
レティシアの前に二匹が迫る。
俺が助けに向かおうとした、そのとき。
「私がやります!」
エリスが弓を構えた。
一本。
二本。
矢を連続で放つ。
――シュッ、シュッ!
二本の矢が別々のホーンウルフへ飛んでいく。
一匹の動きが止まった。
「今!」
レティシアが斬り込む。
俺も残った一匹へ向かう。
最後のホーンウルフを倒した。
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「エリス、今のすごかった」
レティシアが言う。
「二匹を同時に狙ったの?」
「はい……たまたまです」
「たまたまでもすごいよ」
エリスは少し嬉しそうだった。
俺はエリスの弓を見る。
昨日より明らかに動きが良くなっている。
「少しずつ上手くなってるね」
「……ありがとうございます」
エリスは弓を握り直す。
その表情から、昨日までの遠慮が少しだけ消えていた。
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街道警備を続けていると、最後に大きなホーンウルフが現れた。
普通の個体より一回り大きい。
「強そう……」
レティシアが構える。
「俺がやる」
魔力を集める。
炎を作る。
その周囲へ風を流す。
昨日よりも安定している。
「《フレイムスパイラル》!」
炎の螺旋が飛ぶ。
――ドォン!
ホーンウルフが吹き飛ぶ。
「倒した!」
レティシアが喜ぶ。
俺は息を吐く。
昨日より魔力消費が少ない。
「少しだけ、使えるようになった」
エリスが頷く。
「魔力の流れが綺麗になっています」
「本当?」
「はい」
新魔法は、少しずつ俺のものになっていた。
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依頼を終え、街へ戻る途中。
またステータス画面が浮かぶ。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
レベル:22
「また上がった」
「22?」
レティシアが笑う。
「順調だね!」
俺は頷く。
だが、レベルが上がるだけではない。
魔力操作。
魔法。
そして仲間との連携。
少しずつ、全部が変わっている。
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その夜。
ギルドの掲示板に、新しい依頼が貼られた。
『西街道周辺にて、ホーンウルフの異常繁殖を確認』
さらに、その下には――
『原因調査を含む討伐隊募集』
俺は依頼書を見つめる。
最近、魔物の異常が続いている。
南部森林だけではない。
西街道でも異変が起き始めていた。
レティシアが隣に立つ。
「……次の依頼、これにする?」
俺はエリスを見る。
エリスも依頼書を見ていた。
「三人なら……行けると思います」
「うん」
俺は頷いた。
新しい仲間。
新しい魔法。
そして、広がっていく魔物の異変。
次の冒険は、今までより少し大きなものになりそうだった。
第55話 終




