54話 新しい魔法
セレスタへ戻ってから数日。
俺たちは街の近くで、簡単な依頼をこなしていた。
ゴブリン討伐。
薬草採取。
街道の魔物退治。
三人で行動することにも、少しずつ慣れてきた。
「次はどの依頼にする?」
レティシアが掲示板を見る。
その隣で、エリスも依頼書を眺めていた。
「これならどうでしょう?」
エリスが指したのは、街の近くにある小さな洞窟の調査依頼だった。
「洞窟?」
「最近、魔物が出るそうです」
俺は依頼書を確認する。
報酬も悪くない。
「行ってみよう」
「決まり!」
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街から少し離れた場所に、その洞窟はあった。
入口はそれほど大きくない。
「魔物の気配は?」
レティシアが聞く。
「……少し」
魔力感知を使う。
洞窟の奥に複数の反応。
「五……いや、七匹くらい」
「ゴブリン?」
「たぶん」
エリスが弓を構える。
「では、私が先に一匹狙います」
「お願い」
俺たちは洞窟へ入った。
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奥へ進むと、ゴブリンたちがこちらに気づいた。
「グギャッ!」
「来るよ!」
レティシアが前へ出る。
俺も剣を構える。
「《ウィンドステップ》」
エリスの補助魔法。
三人の体が軽くなる。
俺は先頭のゴブリンへ斬り込む。
――ザンッ!
レティシアが二匹目を倒す。
エリスの矢が、奥のゴブリンの足を射抜く。
「今です!」
「ありがとう!」
俺が一気に距離を詰める。
順調だった。
だが――
「……まだいる」
俺は洞窟の奥を見る。
「え?」
「もっと奥に魔力反応がある」
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さらに進む。
すると、大きな空間に出た。
そこにはゴブリンたちが集まっていた。
数は――十匹以上。
「こんなに……」
レティシアが剣を握る。
俺も構える。
「一気に来る!」
ゴブリンたちが襲いかかってきた。
「《ウィンドステップ》!」
エリスが魔法を使う。
俺たちは左右へ散る。
だが、数が多い。
一匹倒しても、すぐ次が来る。
「キラ!」
「分かってる!」
剣を振る。
しかし、また別のゴブリンが迫ってくる。
魔法を使おう。
――《火球》。
火球が飛び、ゴブリンを吹き飛ばす。
けれど、それだけだった。
一匹を倒すだけ。
「もっと……!」
俺は魔力を集中する。
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最近、ずっと考えていた。
魔法は、決められた形でしか使えないのか。
火球なら火球。
風刃なら風刃。
でも――
魔力そのものを操作できるなら。
「形を……変えられる?」
俺は手のひらを見る。
魔力を集める。
火球を作る。
いつもなら、そのまま飛ばす。
でも今回は――
火球を維持したまま、魔力の流れを変える。
「……っ」
難しい。
少しでも集中を失えば消えてしまう。
それでも、魔力を細かく分けていく。
火球の周囲に、薄い風をまとわせる。
「キラ、何してるの?」
「分からない……!」
自分でも分からない。
ただ――
できる気がした。
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火球が変化する。
炎が細く伸びる。
その周囲を風が回転する。
――ゴォォォッ!
「何それ……」
レティシアが驚く。
俺も驚いていた。
「……いける!」
手を前へ突き出す。
「《フレイムスパイラル》!」
炎と風が螺旋状に回転しながら飛んでいく。
――ドゴォォォン!
ゴブリンの群れをまとめて吹き飛ばした。
洞窟の壁まで炎が届く。
「……」
「……」
「……」
三人とも、しばらく黙っていた。
「今の……」
エリスが呟く。
「新しい魔法です」
「たぶん……」
俺自身もまだ信じられない。
火球と風。
別々の魔法を組み合わせた。
そして、それを魔力操作で一つの形にした。
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「……でも」
俺は膝をついた。
「キラ!」
レティシアが駆け寄る。
「大丈夫……」
体に力が入らない。
魔力を使いすぎた。
エリスがすぐに気づく。
「かなり魔力を消費しています」
「うん……」
「今の魔法は、まだ連続では使えませんね」
「そうみたい」
エリスは少し考える。
「でも、魔力操作が高くなければ、あんなことはできないと思います」
俺は自分の手を見る。
新しい魔法。
まだ完成したとは言えない。
威力は高い。
だけど消費も大きい。
「もっと練習しないと」
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残ったゴブリンたちが逃げようとする。
「逃がさないよ!」
レティシアが走る。
エリスが弓を構える。
「《ウィンドステップ》」
レティシアの動きが加速する。
――シュッ!
エリスの矢がゴブリンの足元へ。
「今!」
レティシアが斬り込む。
最後の一匹が倒れた。
「終わった……」
レティシアが息を吐く。
「三人だと、本当に戦いやすいね」
エリスも頷く。
「はい」
俺は二人を見る。
新しい魔法も手に入れた。
そして、仲間も増えた。
少しずつだけど――
俺たちは強くなっている。
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ステータス
洞窟を出る前。
俺はステータスを確認した。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
レベル:21
レベルが一つ上がっていた。
そして、魔法欄には新しい名前が追加されている。
《フレイムスパイラル》
「新魔法……」
俺は小さく呟く。
まだ使いこなせない。
でも、いつか。
この魔法を自分の力として完全に扱えるようになりたい。
そう思った。
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その日の夕方。
ギルドへ戻る俺たち。
レティシアが楽しそうに話す。
「次はどんな魔法を作る?」
「まだ分からないよ」
「じゃあ、私も新しい技を考えようかな」
「私も補助魔法を研究してみます」
「三人で強くなろう!」
レティシアの言葉に、俺とエリスも頷いた。
まだ俺たちはFランク。
けれど――
いつか、もっと上へ。
三人の冒険は、少しずつ大きくなっていく。
第54話 終




