53話 ゴブリンリーダー
夜の農村。
村の外にある畑を囲むように、俺たちは立っていた。
暗闇の中から、ゴブリンたちが次々と姿を現す。
「……多いね」
レティシアが剣を握る。
「うん」
俺は魔力感知で周囲を探る。
「全部で……十五匹くらい」
「十五……」
エリスが小さく息を呑む。
その中に、一匹だけ明らかに大きな個体がいる。
手には太い棍棒。
他のゴブリンとは違い、周囲のゴブリンを指示するように動かしている。
「ゴブリンリーダーだ」
俺が言う。
「普通のゴブリンより強い?」
「かなり」
レティシアが一歩前に出た。
「じゃあ、あいつを倒せばいいんだね」
「そう簡単にはいかないと思う」
ゴブリンリーダーが棍棒を振り上げた。
すると周囲のゴブリンたちが一斉に走り出した。
「来る!」
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「エリス、補助魔法!」
「はい!」
エリスが両手を前に出す。
「《ウィンドステップ》!」
風が俺たちの足元を包む。
体が軽くなる。
「行くよ!」
レティシアが飛び出した。
俺も続く。
左右から迫るゴブリンをかわし、一匹を斬る。
「キラ、後ろ!」
レティシアの声。
振り返る。
ゴブリンが棍棒を振り下ろしていた。
――ガキィン!
剣で受け止める。
「ぐっ……!」
力が強い。
その瞬間。
――シュッ!
エリスの矢がゴブリンの腕に突き刺さった。
「今です!」
「ありがとう!」
俺はゴブリンを蹴り飛ばした。
レティシアが横から斬り込む。
――ザンッ!
「一匹!」
倒れたゴブリンを見て、レティシアが笑う。
「いい感じ!」
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残りのゴブリンを倒していく。
しかし、ゴブリンリーダーは動かない。
周囲の仲間が減っているのに、逃げる様子もない。
「……変だ」
俺は呟く。
「どうしたの?」
「普通のゴブリンなら、仲間がこれだけ倒されたら逃げる」
ゴブリンリーダーがこちらを見る。
そして――
大きく吠えた。
「グギャアアアッ!」
残ったゴブリンたちが一斉に襲いかかってくる。
「まだ動けるの!?」
レティシアが驚く。
「エリス!」
「はい!」
エリスが再び魔法を使う。
「《ウィンドステップ》!」
三人の動きがさらに速くなる。
俺は前へ出た。
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ゴブリンリーダーが棍棒を振り回す。
――ブンッ!
大きな風圧が起きる。
俺は後ろへ飛んで避けた。
「重い……!」
まともに受けたら危険だ。
魔力感知で動きを読む。
右。
次は左。
振り下ろし。
俺は紙一重で避ける。
「そこ!」
剣を振る。
――ザシュッ!
腕に傷をつけた。
「グギャッ!」
ゴブリンリーダーが怒り、棍棒を振り回す。
「キラ!」
レティシアが横から攻撃する。
――ガキン!
しかし、棍棒に弾かれた。
「きゃっ!」
「レティシア!」
ゴブリンリーダーが追撃しようとする。
その瞬間――
――シュッ!
エリスの矢が飛んだ。
ゴブリンリーダーの足に突き刺さる。
「今です!」
「分かった!」
俺は一気に踏み込む。
「《身体強化》!」
全身に魔力を巡らせる。
そして――
――ザンッ!
ゴブリンリーダーの棍棒を持つ腕を斬りつけた。
「グギャアアアッ!」
棍棒が地面に落ちる。
レティシアが立ち上がった。
「キラ!」
「うん!」
二人で同時に踏み込む。
――ザンッ!
ゴブリンリーダーが倒れた。
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残っていたゴブリンたちも逃げていく。
村の外が静かになった。
「……終わった?」
レティシアが息を切らしながら言う。
「うん」
俺も剣を下ろす。
エリスがこちらへ駆け寄ってきた。
「お二人とも、大丈夫ですか?」
「大丈夫!」
レティシアが答える。
「エリスも助かったよ」
「私も……役に立てましたか?」
「もちろん」
俺が答える。
「矢も補助魔法も、かなり助かった」
エリスは少し照れたように俯いた。
「……ありがとうございます」
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戦闘が終わった直後。
頭の中に、いつもの音が響いた。
――ピロン。
俺はステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
レベル:20
レベル20。
また一つ、力が増えた。
「レベル、上がった?」
レティシアが聞く。
「うん。20になった」
「おめでとう!」
エリスも笑う。
「すごいですね」
「ありがとう」
俺はステータス画面を閉じる。
けれど、今回の戦いで一番嬉しかったのは、レベルが上がったことじゃない。
三人で戦えたこと。
それが一番大きかった。
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翌朝。
俺たちはセレスタへ戻り、ギルドへ報告した。
「ゴブリンリーダーまで倒したんですか?」
受付嬢が驚く。
「はい」
「それはかなりの実績ですね」
依頼の達成報告を終える。
受付嬢は記録を確認した。
「今回の依頼を含め、これまでの実績もかなり増えてきました」
レティシアが期待した顔をする。
「もしかして……?」
「まだです」
「また!?」
レティシアが肩を落とす。
俺は思わず笑った。
「ですが――」
受付嬢が続ける。
「この調子で実績を積めば、近いうちに昇格試験を受けられると思います」
「本当!?」
「はい」
レティシアの顔が明るくなる。
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ギルドを出る。
隣にはレティシア。
そして、その少し後ろにはエリス。
「ねえ、エリス」
レティシアが振り返る。
「はい?」
「今日からもっと近くを歩いてよ」
「え?」
「仲間なんだから!」
エリスは少し驚いたあと――
「……はい」
三人が並んで歩く。
まだ始まったばかりの関係。
けれど、少しずつ。
確実に。
俺たちは仲間になっていく。
そしてその頃――
南部森林の奥では、また黒い魔力が脈打っていた。
――ドクン。
その異変は、静かに広がり続けていた。
第53話 終




