51話 三人目の仲間
セレスタへ戻る街道。
俺とレティシアは、北街道で出会ったエルフの少女について話していた。
「変わった子だったね」
「うん」
弓を持っていた。
けれど、弓は苦手だと言っていた。
エルフなのに、弓も魔法も苦手。
それだけが、妙に気になっていた。
「また会えるかな?」
「分からない」
俺がそう答えたときだった。
「――待ってください!」
後ろから声がした。
振り返る。
そこにいたのは、先ほどのエルフの少女だった。
息を切らしながら、こちらへ走ってくる。
「どうしたの?」
レティシアが尋ねる。
「……少し、お願いがあります」
少女は息を整えながら言った。
「私も……一緒に行ってもいいですか?」
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名前
「一緒に?」
俺が聞き返す。
「はい」
「どうして?」
少女は少し俯いた。
「一人で旅をすることに、少し疲れてしまって……」
少し迷ったあと、少女は顔を上げた。
「それに、お二人と一緒にいると……不思議と安心するので」
レティシアが笑う。
「私はいいと思うよ」
「レティシア、まだ名前も知らないよ」
「あっ」
少女が少しだけ笑った。
「そうですね」
そして胸元に手を当てる。
「私は――エリスです」
「エリス……」
「はい」
「俺はキラ」
「私はレティシア!」
「よろしくお願いします」
エリスは丁寧に頭を下げた。
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三人で街道を歩く。
しばらくすると、レティシアがエリスの弓を見る。
「エリスって、ずっと弓を使ってるの?」
「はい」
「エルフなら、やっぱり弓が得意なの?」
その質問に、エリスは少しだけ表情を曇らせた。
「……そういう人が多いと思います」
「エリスは?」
「私は……」
エリスは少し黙った。
「昔から、あまり上手くありませんでした」
「そうなんだ」
「はい」
それ以上は話さなかった。
自分から話したくないことなのかもしれない。
俺も、それ以上は聞かなかった。
ただ、一瞬だけ見えたエリスの表情が気になった。
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「じゃあ、魔法は?」
今度は俺が尋ねる。
「少しなら使えます」
「どんな魔法?」
「補助魔法です」
「見せてもらってもいい?」
「はい」
エリスは立ち止まり、手を前へ出す。
「《ウィンドステップ》」
淡い風が俺たちの足元を包んだ。
「……!」
体が軽い。
足を一歩踏み出すと、いつもより明らかに速く動けた。
「すごい!」
レティシアが驚く。
「これ、補助魔法?」
「はい」
「十分すごいじゃん!」
エリスは戸惑ったようにレティシアを見る。
「……そう、でしょうか」
「うん!」
レティシアは迷いなく答えた。
エリスは少しだけ笑った。
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「弓も見せてよ!」
レティシアが言う。
「……あまり上手くありませんよ?」
「一回だけ!」
エリスは苦笑しながら弓を構えた。
街道脇の木。
その枝に、小さな木の実がある。
エリスは静かに狙いを定める。
――シュッ!
矢は木の実の横を通り過ぎた。
「あ……」
エリスが弓を下ろす。
「やっぱり、駄目ですね」
「もう一回やってみようよ」
レティシアが言う。
「でも――」
「一回失敗しただけじゃん!」
エリスは少し驚いた顔をした。
俺も頷く。
「もう一度やってみよう」
「……はい」
エリスは再び弓を構えた。
今度は少しだけ狙いを変える。
――シュッ!
矢が木の実に当たった。
ポトッ。
木の実が地面に落ちる。
「当たった!」
レティシアが喜ぶ。
「……当たった」
エリスも驚いている。
そして――
ほんの少しだけ、嬉しそうに笑った。
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再び街道を歩く。
「エリス」
「はい」
「よかったら、しばらく俺たちと一緒に行かない?」
エリスが足を止める。
「私と……?」
「うん」
「でも、私はまだ何も――」
「補助魔法がある」
俺は言った。
「それに、弓もこれから上手くなればいい」
「そうそう!」
レティシアも笑う。
「三人の方が楽しそう!」
エリスは二人を見つめる。
すぐには答えなかった。
やがて――
「……少しだけ、お世話になってもいいですか?」
「もちろん」
「やった!」
レティシアが嬉しそうに笑う。
エリスも小さく笑った。
こうして俺たちは、しばらく三人で行動することになった。
まだ正式な仲間というわけではない。
ただ――
この日から、三人で歩く時間が始まった。
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一方、その頃。
南部森林の調査隊がセレスタへ戻ってきていた。
ギルド内に緊張が走る。
「森の奥で、異常な魔力源を確認した」
調査隊の一人が報告する。
「魔物たちは、その魔力から逃げている可能性が高い」
「つまり……」
「あの大量発生は、森から追い出された魔物たちだったということだ」
周囲の冒険者たちがざわめく。
さらに男が続ける。
「そして、その魔力源は今も強くなっています」
ギルド内が静まり返った。
セレスタを襲った魔物の群れ。
それは、この異変の始まりにすぎなかった。
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北街道を歩く三人。
レティシアが楽しそうに話している。
エリスはまだ少し緊張している。
俺は二人の前を歩きながら、ふと後ろを見る。
エリスは弓を背負っている。
その表情には、まだどこか遠慮がある。
彼女がどんな過去を持っているのか。
俺たちはまだ知らない。
けれど――
いつか、その過去も知ることになるのだろう。
今はただ。
三人で歩いていけばいい。
第51話 終




