49話 セレスタ防衛
夜のセレスタ。
南門から響いた警鐘が、静かな街を揺らしていた。
――ゴォォォン!
「南街道から魔物が来たぞ!」
叫び声が響く。
俺とレティシアは、急いで冒険者ギルドへ戻った。
ギルドの中は、すでに騒然としている。
「南部森林から魔物が大量に出ています!」
「数は!?」
「まだ分かりません!」
受付嬢たちが慌ただしく指示を出している。
昨日まで森の奥で起きていた異変。
それが、ついにセレスタまで届いた。
「キラ」
レティシアが俺を見る。
「行こう」
「うん」
二人で武器を手に取り、南門へ向かった。
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南門には、すでに多くの冒険者が集まっていた。
EランクやDランクの冒険者。
さらに上位の冒険者も何人かいる。
「Fランクは前に出るな!」
一人の冒険者が叫ぶ。
「街へ入り込んだ魔物を優先して対処しろ!」
「分かりました!」
俺は頷く。
無理に強い魔物と戦う必要はない。
今の自分たちにできることをする。
それが大切だ。
「レティシア、行こう!」
「うん!」
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暗闇の向こう。
木々の間から、最初の魔物が姿を現した。
「グレイウルフ!」
誰かが叫ぶ。
一匹。
二匹。
三匹。
次々と姿を現す。
その後ろには――
「ゴブリンまでいる!」
さらにフォレストボアまで森から飛び出してきた。
本来なら、生息域の違う魔物たち。
それがまるで何かから逃げるように、同じ方向へ走っている。
「やっぱり、おかしい……」
俺は呟いた。
この群れは、ただ街を襲いに来たわけじゃない。
何かに追われている。
そんな気がした。
「来るぞ!」
誰かの声が響く。
魔物たちが一斉に走り出した。
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「《風刃》!」
俺の放った風の刃が、先頭のグレイウルフの足元を切り裂く。
「今!」
「任せて!」
レティシアが駆ける。
――ザンッ!
一匹。
さらに一匹。
「右!」
「分かってる!」
俺は剣を抜き、飛びかかってきたグレイウルフの爪を受け流す。
レティシアが横から斬り込む。
――ザシュッ!
「次!」
二人の動きが、以前より自然に噛み合っている。
俺は魔力感知で周囲を確認する。
「まだ来る!」
「どこ!?」
「あっち!」
俺が指差す。
レティシアが走る。
俺も続いた。
---
そのときだった。
魔物の群れの奥から、大きな影が姿を現した。
「……何だ、あれ」
周囲の冒険者たちがざわめく。
黒い毛。
巨大な体。
鋭い牙。
「ブラックファングだ!」
「Eランク相当の魔物だぞ!」
ブラックファングが低く唸る。
――グルルル……
次の瞬間。
地面を蹴った。
「速い!」
数人の冒険者が迎え撃つ。
――ガキィン!
「ぐっ!」
一人が大きく吹き飛ばされる。
レティシアが前へ出ようとした。
「私も――」
「待って!」
俺が止める。
「俺たちじゃ無理だ!」
「でも……!」
「今は街を守る方が大事!」
レティシアは悔しそうに唇を噛んだ。
そして頷く。
「……分かった!」
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ブラックファングに冒険者たちが集中している隙に、何匹かのゴブリンが門を抜けた。
「ゴブリンが街に入った!」
「キラ!」
「行こう!」
俺たちは街へ走った。
ゴブリンが商店の方へ向かっている。
「止まれ!」
俺は魔力を集中させる。
「《火球》!」
――ドンッ!
ゴブリンが吹き飛ぶ。
残った一匹がレティシアへ襲いかかる。
「はっ!」
双剣が閃く。
ゴブリンが倒れた。
「まだいる!」
魔力感知に反応がある。
別の通りからも魔物が入り込んでいる。
「行こう!」
「うん!」
二人で走る。
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何体目かのゴブリンを倒したときだった。
頭の中に、聞き慣れた音が響く。
――ピロン。
俺は一瞬だけ動きを止めた。
視界に文字が浮かぶ。
【レベルアップ】
戦闘の最中だったが、俺は一瞬だけステータスを確認する。
【ステータス】
名前:キラ
年齢:12歳
レベル:18
以前より、確実に強くなっている。
けれど、今はそれを喜んでいる場合じゃない。
「キラ?」
「大丈夫!」
俺は剣を握り直す。
「まだ魔物がいる!」
「分かった!」
レティシアとともに、再び街を走った。
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戦いは長く続いた。
上位の冒険者たちが強力な魔物を抑え、俺たちは街へ入り込んだ魔物を倒していく。
一匹ずつ。
確実に。
そして――
空が少しずつ明るくなり始めた。
「魔物が引いていくぞ!」
誰かが叫ぶ。
森へ戻っていく魔物たち。
最後まで残っていたブラックファングも、やがて森の奥へ姿を消した。
静寂が戻る。
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俺は南門の近くに座り込んだ。
「……疲れた」
レティシアも隣に座る。
「私も……」
しばらく二人とも黙っていた。
やがてレティシアが笑う。
「でも、街を守れたね」
「うん」
「私たちだけじゃないけど」
「それでいいと思う」
強い冒険者たちが魔物を食い止めた。
門番たちが街を守った。
たくさんの冒険者が戦った。
その中で、俺たちにもできることがあった。
それだけで十分だった。
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朝になり、俺たちはギルドへ戻った。
受付嬢が俺たちを見る。
「二人とも、お疲れさまでした」
「はい」
「今回の防衛戦での働きも、きちんと記録しておきます」
レティシアが期待した顔をする。
「じゃあ……ランクアップ?」
「まだです」
「えぇ……」
レティシアが肩を落とす。
受付嬢が苦笑する。
「ですが、昇格候補として正式に記録します」
「本当!?」
「はい。もう少し実績を積めば、次のランクも見えてくるでしょう」
レティシアの顔が明るくなる。
「頑張ろう、キラ!」
「うん」
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ギルドを出る。
朝のセレスタには、まだ戦いの跡が残っていた。
壊れた柵。
傷ついた門。
疲れた冒険者たち。
でも、街は無事だった。
俺は一度だけ振り返る。
南の森。
あの奥には、まだ何かがいる。
そして、今回の襲撃は偶然ではない。
そう思えてならなかった。
「キラ、行こう!」
レティシアの声がする。
「うん」
俺は前を向いた。
レベルは18になった。
冒険者ランクは、まだF。
それでも――
俺たちは少しずつ前へ進んでいる。
そしてセレスタを襲った異変は、まだ終わっていなかった。
第49話 終




