47話 セレスタ周囲の異変
翌朝。
セレスタの冒険者ギルドは、いつもより騒がしかった。
俺とレティシアが中へ入ると、掲示板の前に冒険者たちが集まっている。
「何かあったのかな?」
レティシアが首を傾げる。
「昨日の森のことかもしれない」
俺たちは人の間を抜けて掲示板を見る。
新しい依頼書が何枚も貼られていた。
『南部森林周辺・魔物調査』
『南街道・警戒任務』
『魔物の群れに関する情報収集』
そして、その中に一枚だけ赤い印のついた依頼書があった。
『南部森林・緊急調査』
「緊急……」
俺は依頼書を見る。
「昨日のこと、やっぱり大きな問題になったみたい」
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上位冒険者たち
ギルドの奥から、数人の冒険者が出てきた。
装備も雰囲気も、俺たちとは違う。
「Dランクの人たちかな」
レティシアが小声で言う。
「たぶん」
その中の一人が受付へ話しかける。
「南部森林の調査は俺たちが行く」
「お願いします」
別の冒険者が俺たちを見る。
「昨日の報告をした子供って、この二人か?」
「はい」
受付の女性が答える。
「Fランク?」
「そうです」
「……よく無事だったな」
俺は少し緊張する。
「森の奥には近づかなかったのか?」
「はい。危険だと判断して戻りました」
男は頷いた。
「それでいい」
そして、俺の肩を軽く叩いた。
「強さだけが冒険者の価値じゃない。生きて帰る判断も大事だ」
昨日と同じような言葉だった。
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俺たちは今日の依頼を探す。
だが、いつものFランク依頼が少ない。
「どうして?」
レティシアが掲示板を見る。
「南側の依頼がほとんどなくなってる」
「危険だからだと思う」
南街道が警戒区域になったらしい。
俺たちは別の依頼を探す。
すると――
『北街道・商隊護衛』
という依頼が目に入った。
「護衛?」
「うん」
「やってみようよ」
「Fランクでも受けられるみたい」
俺は依頼書を確認する。
「街の近くまでなら大丈夫そう」
「決まり!」
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商隊
昼前。
俺たちは北門へ向かった。
そこには三台の荷馬車が並んでいた。
「君たちが護衛をしてくれる冒険者か?」
商隊の男が聞く。
「はい。キラです」
「レティシア!」
「よろしく頼む」
商隊には商人が数人。
そして、馬車の御者たちがいた。
「二人だけ?」
商人が少し不安そうにする。
「大丈夫です」
レティシアが胸を張る。
俺は少し苦笑する。
「危険があればすぐ報告します」
「それなら頼む」
こうして商隊とともに北街道を進むことになった。
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歩き始めてしばらく。
何も起こらない。
「護衛って暇だね」
レティシアが言う。
「そういうものじゃない?」
「もっと魔物が出てくると思ってた」
「出ない方がいいよ」
「それもそうか」
俺は周囲を確認する。
魔力感知。
近くには魔物の反応はない。
平和な時間が続く。
だが――
夕方。
森の近くを通ったとき。
俺は突然足を止めた。
「……待って」
「どうした?」
レティシアが振り返る。
「魔物がいる」
「何体?」
「分からない」
魔力が複数。
でも、普通の魔物とは違う。
「……こっちに近づいてる」
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森の中から、緑色の小さな魔物が姿を現した。
「ゴブリン!」
レティシアが剣を抜く。
ゴブリン。
人型の小型魔物。
一匹ならFランクでも対処できる。
だが――
「多い!」
次々と森から出てくる。
十。
二十。
さらに増える。
「これ……」
俺は息を呑む。
「群れだ」
ゴブリンたちが武器を構える。
商隊の人たちが慌て始める。
「護衛を固めろ!」
商人が叫ぶ。
俺はレティシアを見る。
「どうする?」
「戦う!」
「うん!」
俺たちは商隊の前に立った。
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「《風刃》!」
俺の魔法が先頭のゴブリンを吹き飛ばす。
「今!」
レティシアが突っ込む。
――ザンッ!
ゴブリンの武器を弾き飛ばす。
「キラ!」
「分かってる!」
俺は周囲を確認する。
数が多い。
全員を相手にするのは無理だ。
「馬車を守りながら戦おう!」
「了解!」
レティシアが前方を抑える。
俺は後方へ回る。
魔法でゴブリンの動きを止める。
「《火球》!」
――ドンッ!
爆発。
ゴブリンたちが散る。
そこへレティシアが飛び込む。
「はぁっ!」
双剣が閃く。
しかし――
「まだ来る!」
森からさらにゴブリンが現れる。
「キラ!」
「分かってる!」
俺は歯を食いしばる。
魔力が減っていく。
まだ倒せる。
でも長引けば危ない。
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そのとき。
「下がれ!」
別の声が響いた。
商隊の後ろから、護衛として雇われていた別の冒険者が駆けつける。
剣士と槍使い。
「ここは俺たちが抑える!」
ゴブリンの群れへ突っ込む。
戦況が変わる。
俺とレティシアも援護する。
「《風刃》!」
「そこ!」
レティシアが倒す。
冒険者たちが前線を押し返す。
やがて――
ゴブリンたちが森へ逃げていった。
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「……終わった」
レティシアが息を吐く。
「疲れた……」
「俺も」
商隊の人たちが無事なのを確認する。
被害はほとんどなかった。
護衛依頼としては成功だ。
だが――
俺は森を見る。
「キラ?」
「……おかしい」
「何が?」
「昨日は南部森林」
「うん」
「今日は北街道」
ゴブリンが現れた森は、南部森林とは反対方向だった。
「魔物が、あちこちで増えてる」
レティシアも表情を変える。
「じゃあ……」
「何かが起きてるのかもしれない」
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商隊を無事に送り届け、俺たちは街へ戻った。
ギルドへ報告すると、受付の女性が驚いた。
「ゴブリンの群れが北街道に?」
「はい」
「南部だけではなかった……」
受付の女性が呟く。
その言葉に、周囲の冒険者たちも反応する。
「またか」
「昨日は南、今日は北……」
「魔物の移動が始まってるのか?」
ギルド内がざわめく。
俺はレティシアを見る。
彼女も同じことを考えているようだった。
南部森林で見た、巨大な魔力。
街道へ出てきたグレイウルフ。
そして今日のゴブリンの群れ。
全部、別々の出来事なのか。
それとも――
何か一つの原因で繋がっているのか。
まだ答えは分からない。
けれど、セレスタの周囲で確実に何かが変わり始めていた。
第47話 終




