44話 息の合う2人
翌朝。
セレスタの街は、朝から多くの人で賑わっていた。
俺は冒険者ギルドの前に立っていた。
「……早いね、キラ」
後ろから声がする。
振り返る。
赤い髪を揺らしながら、レティシアが走ってきた。
「おはよう」
「おはよう!」
レティシアは俺の隣に並ぶ。
「昨日言ったよね?」
「何を?」
「今日も一緒に依頼に行くって!」
「覚えてるよ」
「ならよし!」
レティシアは満足そうに笑った。
俺たちはギルドへ入る。
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掲示板には、たくさんの依頼が貼られていた。
「どれにする?」
レティシアが腕を組む。
「昨日は魔物と戦ったから、今日は簡単なのにしよう」
「えー、もっと強いのがいい」
「危険なのは駄目だよ」
「キラって慎重だね」
「一人で旅してるからね」
「私もいるじゃん」
「正式な仲間じゃないでしょ」
「じゃあ、今日正式に仲間になればいい?」
「……そういう問題じゃないと思う」
レティシアが笑う。
「冗談!」
俺は掲示板を見る。
薬草採取。
街道の簡単な見回り。
小型魔物の討伐。
「これにしよう」
俺が指したのは、街の近くにある森での薬草採取だった。
「いいよ」
レティシアも頷く。
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セレスタの街を出て、しばらく歩く。
目的の森が見えてきた。
「結構近いね」
「うん」
森に入る。
木々の間から光が差し込んでいる。
昨日の戦闘とは違い、今日は静かだった。
「薬草ってどれ?」
レティシアが周囲を見回す。
「依頼書に絵がある」
「……これ?」
「違う」
「じゃあこれ?」
「それも違う」
「じゃあ――」
「それ、ただの草」
「分かんないよ!」
レティシアが頬を膨らませる。
俺は思わず笑った。
「昨日、あんなに魔物と戦えたのに……」
「戦うのと薬草を探すのは別!」
その通りだった。
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俺は魔力感知を使う。
薬草には微弱な魔力がある。
「こっち」
「本当に?」
「たぶん」
「たぶんなんだ」
「まだ練習中だから」
俺たちは薬草を探していく。
一つ。
二つ。
少しずつ袋に入れていく。
レティシアも慣れてきた。
「これじゃない?」
「それ」
「やった!」
嬉しそうに薬草を掲げる。
「簡単じゃん!」
「最初は間違えてたけどね」
「それは忘れて!」
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そのとき。
俺は足を止めた。
「……待って」
「どうしたの?」
「何かいる」
魔力感知。
遠くから、複数の魔力を感じる。
「魔物?」
「分からない」
レティシアが剣を抜く。
「行ってみよう」
「慎重にね」
「分かってる!」
二人で森の奥へ進む。
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木々の間を抜ける。
そこには、倒れた木があった。
そして、その周囲に小さな魔物が数体。
「昨日のより多い……」
俺が呟く。
レティシアが双剣を構える。
「どうする?」
「戦う」
「よし!」
レティシアが走り出す。
「待って!」
「大丈夫!」
「だから――」
レティシアが一体を斬り倒す。
しかし、その瞬間。
――ガサッ!
左右から魔物が飛び出してきた。
「レティシア!」
「えっ――」
俺は魔力を集中する。
「《風刃》!」
――シュッ!
魔物の進路を逸らす。
レティシアが振り返る。
「助かった!」
「周りを見て!」
「分かった!」
今度は二人で周囲を確認する。
レティシアが一体。
俺が一体。
残りは二体。
「右は俺!」
「じゃあ左!」
それぞれが走る。
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数分後。
魔物はすべて倒れていた。
レティシアが息を整える。
「……昨日より楽だった」
「昨日より連携できたからだと思う」
「そうかな?」
「うん」
昨日は互いの動きを知らなかった。
今日は少しだけ分かる。
レティシアは前に出る。
俺は後ろから状況を見る。
自然と役割ができ始めていた。
「ねえ、キラ」
「何?」
「私たち、結構いいコンビじゃない?」
「……そうかも」
レティシアが嬉しそうに笑った。
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帰り道。
レティシアが突然聞いた。
「キラって、魔力少ない?」
「……分かる?」
「昨日の魔法を見てたら何となく」
俺は少し黙る。
「うん。多くはない」
「でも魔法は上手いよね」
「魔力が少ないから、工夫してる」
「そっか」
レティシアはそれ以上聞かなかった。
そして自分の双剣を見る。
「私も魔法は苦手」
「そうなの?」
「うん。だから剣を使ってる」
俺たちは少し似ているのかもしれない。
足りないものを、別の方法で補っている。
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セレスタへ戻り、依頼を達成する。
受付の女性が二人を見る。
「薬草、確認しました。魔物の討伐も報告されていますね」
「はい」
「二人で?」
「そうです」
受付の女性が少し驚く。
「昨日も魔物を倒したそうですね」
周囲の冒険者たちがこちらを見る。
「またこの二人か」
「12歳だろ?」
「最近の子供はすごいな……」
レティシアは嬉しそうに笑っている。
俺は少し恥ずかしい。
「これが報酬です」
「ありがとうございます」
報酬を受け取る。
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ギルドを出る。
夕方になっていた。
「今日も楽しかった!」
レティシアが言う。
「うん」
「明日も一緒に行こうよ」
「いいよ」
「じゃあ決まり!」
レティシアが手を差し出す。
「これからよろしくね、キラ」
俺はその手を見る。
少しだけ迷ってから――
握った。
「よろしく、レティシア」
まだ正式な仲間ではない。
でも。
昨日より確実に近い存在になっていた。
俺はまだ知らなかった。
この少女との出会いが――
これから始まる長い旅の、大切な一歩になることを。
第44話 終




