番外編 時を胸に刻む
6歳から11歳までのお話はこれでおしまいです。
次のお話からは少年期12歳からのお話となります。
その前に少し日常を。
第40.5話 旅立つ前の一日
旅立ちの日が近づいていた。
俺は毎日、剣の練習をしている。
魔法の研究もしている。
旅に必要な道具も揃えている。
12歳になった俺は、昔よりずっと大人になった気がする。
……少なくとも、自分ではそう思っていた。
「キラ!」
突然、外から声が聞こえた。
「キラ、いる?」
トーマだ。
「いるよ!」
窓を開ける。
外にはトーマとミナ、そして少し離れたところにカイルが立っていた。
「何してるの?」
「遊ぼう!」
「……遊ぶ?」
「うん!」
トーマが元気よく答える。
「旅に出る前に、最後にみんなで遊ぼうぜ!」
俺は少し考えた。
旅の準備もある。
魔法の練習もしたい。
剣も振りたい。
でも――
「……分かった」
俺は外へ出た。
---
「何して遊ぶ?」
ミナが聞く。
「鬼ごっこ!」
トーマが即答した。
「12歳にもなって?」
「いいだろ!」
「キラはどう?」
俺は少し考える。
「……やる」
「よし!」
トーマが笑う。
鬼はトーマ。
「じゃあ逃げろ!」
「待って!」
俺たちは一斉に走り出した。
――ダッ!
「キラ、そっち!」
ミナが叫ぶ。
「分かった!」
俺は路地へ走る。
後ろからトーマが追ってくる。
「待てー!」
「嫌だ!」
自分でも驚くほど、夢中になっていた。
剣も魔法も関係ない。
ただ走る。
捕まらないように逃げる。
昔と同じだった。
---
トーマがどんどん近づいてくる。
「もう少し!」
「捕まる!」
俺は思わず魔力を使った。
「《風――》」
そこで止まる。
「……」
危ない。
遊びで魔法を使ったら危険だ。
俺は慌てて方向を変える。
「逃げた!」
「キラずるい!」
トーマが叫ぶ。
「魔法使おうとしただろ!」
「使ってない!」
「今、絶対使おうとした!」
「使ってないから!」
ミナが笑い出す。
「二人とも、子供みたい」
「子供だよ」
カイルがぽつりと言った。
「……」
俺たちは三人とも黙る。
「そうだった」
思わず笑ってしまった。
---
次にトーマが向かったのは、広場の大きな木だった。
「登ろうぜ!」
「また?」
ミナが呆れる。
「昔よくやっただろ!」
「今はもう大きくなったから危ないよ」
「キラは?」
「……登る」
「よし!」
俺たちは木に登った。
枝に手をかける。
一つ。
二つ。
少しずつ上へ。
「キラ、速い!」
「昔からこういうのは得意だから」
俺は笑う。
気づけば、かなり高いところまで来ていた。
街が見える。
家々。
冒険者ギルド。
遠くの城壁。
「ここから見ると、街って小さいな」
俺が言う。
ミナが隣に座る。
「旅に出たら、もっと大きな街があるんだよね」
「うん」
「楽しみ?」
「楽しみ」
トーマが枝に座りながら笑う。
「俺たちもいつか行こうな!」
「うん」
カイルは静かに街を見ていた。
「……僕も」
---
そして――
「キラ!」
突然、トーマが叫ぶ。
「何?」
「どっちが先に降りられるか競争しよう!」
「いいよ」
「絶対負けないからな!」
二人で木を降り始める。
――ダッ!
「俺の方が速い!」
「待って!」
ミナが呆れた顔をする。
「二人とも危ないよ!」
カイルも少し心配そうに見ている。
俺は笑いながら木を降りた。
そして地面に着いた瞬間――
「勝った!」
「え?」
トーマが先に着地していた。
「俺の勝ち!」
「……悔しい」
「キラでも負けるんだな!」
「もう一回!」
「いいぞ!」
二人で笑う。
ミナも笑っている。
カイルも少しだけ笑っていた。
---
夕方。
俺たちは広場に座っていた。
服は泥だらけ。
髪には葉っぱがついている。
腕には小さな擦り傷。
「……父さんに怒られそう」
俺が言うと、ミナが笑った。
「旅立つ前なのに泥だらけね」
「でも楽しかった」
トーマが言う。
「うん」
俺も頷いた。
魔法の練習。
剣の訓練。
冒険者との戦い。
旅の準備。
そんなことばかり考えていた。
でも、俺はまだ12歳だ。
遊んだっていい。
くだらないことで笑ったっていい。
こうやって友達と走り回る時間も、大切なんだと思う。
「キラ」
カイルが呼ぶ。
「ん?」
「旅に行っても……こういうこと、覚えてる?」
俺は少し驚いた。
「もちろん」
俺は三人を見る。
「忘れないよ」
「じゃあ、帰ってきたらまた遊ぼう」
ミナが言う。
「うん」
トーマが拳を上げる。
「今度は俺がもっと速くなってるからな!」
「じゃあ、俺ももっと速くなる」
「勝負だ!」
カイルが小さく笑う。
「……僕もやる」
「カイルも?」
「うん」
四人で笑った。
夕焼けが街を赤く染めていく。
この時間が、ずっと続けばいい。
そんなことを一瞬だけ思った。
でも――
俺はもうすぐ旅に出る。
だからこそ。
今日のことを忘れないようにしたかった。
剣を握るキラでもなく。
魔法を使うキラでもなく。
未来の最強を目指すキラでもない。
ただ友達と遊んで、笑って、泥だらけになった――
12歳の子供としての自分。
その時間を胸に刻んで。
俺は家へ帰った。
時を胸に刻む 終
11歳時点 レベル17
能力
キラ 同世代平均
HP
32 35
MP
25 40
筋力
20 22
敏捷
18 20
防御
14 17
魔力
24 32
魔力操作
23 17
スキル
レベルリセット
新魔法創造
魔力操作
無詠唱
魔力感知
剣術
近接戦闘
戦闘判断
魔法
火球
水魔法
風刃
光球




