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『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』60000pv突破  作者: 異世界文庫 きらっち
最終章 魔境エリオス編

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269話 ゼファリアス



――ドォォォォォン!!


エリスの身体が――。


大きく吹き飛んだ。


「――――っ!!」


背中から壁へ叩きつけられる。


ドゴォォォン!!


壁が大きく陥没する。


エリスの身体が――。


そのまま壁にめり込んだ。


「…………っ」


口元から――。


赤い血が流れる。


「……かはっ」


血を吐く。


視界が揺れる。


身体に力が入らない。


「…………」


そして――。


エリスは自分の胸へ手を当てた。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


心臓が――。


異常なほど速く鼓動している。


「はぁ……はぁ……」


呼吸が乱れる。


冷たい汗が頬を伝う。


「…………」


エリスは顔を上げた。


そこに――。


アイセラがいた。


「…………」


何も言わない。


ただ。


じっとエリスを見ている。


その表情には――。


余裕しかなかった。


「…………」


エリスの唇が震える。


怖い。


初めて――。


本当に怖い。


「…………勝てない」


その言葉が――。


自然に口から漏れた。


「私……」


拳を握ろうとする。


だが。


指が震える。


「勝て……ない……」


アイセラは――。


何も言わない。


ただ見ている。


その沈黙が――。


逆に怖かった。


「こんな……」


エリスの目から涙が一粒落ちる。


「こんなに……力が違うなんて……」


今までにも。


自分より強い敵と戦ったことはあった。


苦戦したことも。


死にかけたことも。


それでも――。


どこかにあった。


勝てるかもしれないという気持ち。


仲間となら。


キラとなら。


リゼッタとなら。


戦い続ければ――。


届くかもしれない。


だが。


目の前の男は――。


違う。


「…………」


何をしても届かない。


魔法の矢も。


肉弾戦も。


全力の攻撃も。


まるで――。


子供が大人に挑んでいるようだった。


「…………」


エリスは俯いた。


「もう……」


戦いたくない。


「このまま……」


負けてもいいのではないか。


そんな考えが――。


頭をよぎった。


「…………」


キラさん。


ごめんなさい。


私は――。


「…………」


その時。


エリスの指先に――。


小さな魔力が集まった。


「…………」


一本の弓。


細い。


弱々しい。


ほとんど力の残っていない――。


魔力の弓。


「…………これだけ……」


エリスは震える腕を上げる。


「これだけ……やってみよう」


キィィン……。


魔法の弓を引く。


そして――。


「……っ」


放った。


シュッ!!


一本の矢が――。


アイセラへ飛んでいく。


「…………」


アイセラは――。


首を少し傾けただけだった。


ヒュン。


矢はアイセラの横を通り過ぎる。


「…………」


簡単に避けられた。


「なんだ」


アイセラがエリスを見る。


「まだやんのか」


そして――。


ゆっくり歩き始める。


コツ。


コツ。


コツ。


一歩。


また一歩。


エリスへ近づいてくる。


「…………」


エリスは動けない。


足が震える。


「諦めたのか?」


アイセラが笑う。


「それとも――」


さらに近づく。


「まだ俺様に挑むつもりか?」


「…………」


その時だった。


エリスの脳裏に――。


一つの光景が蘇った。


――幼い頃。


「いやぁぁぁぁぁ!!」


小さな身体から――。


大量の魔力が溢れ出していた。


暴走する魔力。


吹き荒れる風。


砕ける大地。


何もかもを飲み込もうとする力。


「止めて……!」


幼いエリスが泣いている。


「誰か……止めてぇぇ!!」


そして――。


その力は封じられた。


「…………」


エリスは目を見開く。


「そうだ……」


忘れていた。


いや。


忘れようとしていた。


「私の……本当の力……」


幼い頃。


自分でも制御できなかった魔力。


だから――。


封印された。


恐ろしくて。


危険で。


誰にも扱えないと言われた力。


「…………」


アイセラが目の前まで来る。


「どうした?」


エリスは――。


ゆっくり顔を上げた。


その瞳に。


先ほどまでとは違う光が宿る。


「…………」


そして。


「……これしかない」


エリスは呟いた。


「私が勝つためには……」


拳を握る。


「これに……全部賭ける」


「…………?」


アイセラが眉をひそめる。


その瞬間。


エリスの身体から――。


魔力が噴き出した。


「――――ッ!!」


ドォォォォォォォォォン!!


「なに!?」


アイセラが初めて驚いた。


エリスの周囲に――。


暴風が巻き起こる。


床が砕ける。


壁が震える。


大広間そのものが――。


揺れ始めた。


「ぐ……っ!」


エリス自身も苦しそうに顔を歪める。


「これが……」


ドクン。


「私の……」


ドクン。


「本当の魔力……!」


ドォォォォォォン!!


魔力がさらに膨れ上がる。


制御など――。


しない。


いや。


できない。


「――暴れろ!!」


エリスが叫ぶ。


「全部……全部出てきて!!」


ゴォォォォォォォォォ!!


魔力が爆発する。


まるで巨大な竜巻。


大広間を埋め尽くしていく。


「ほう……!」


アイセラが笑う。


「面白い!」


だが――。


エリスはそこで終わらなかった。


「…………」


暴走する魔力を――。


両手で掴む。


「な……!」


アイセラの顔から笑みが消える。


「何をしている!?」


エリスは――。


暴走する魔力を。


圧縮し始めた。


「ぐ……あぁぁぁぁぁ!!」


魔力が身体へ押し込まれていく。


ドォォン!!


ドォォン!!


ドォォン!!


膨張する力を――。


無理やり。


自分自身の中へ。


「こんな……力……!」


血管が浮かび上がる。


身体が震える。


「私が……!」


魔力が暴れる。


「私自身が……!」


エリスは歯を食いしばる。


「使いこなす!!」


ドォォォォォォォォォン!!


その瞬間。


エリスの中で――。


何かが弾けた。


「――――」


世界が止まったように感じた。


そして。


頭の中に――。


無機質な声が響く。


『スキル――』


『自然を取得』


「…………!」


さらに。


『スキル――』


『天変地異を取得』


エリスの目が見開かれる。


そして――。


『スキル――』


『精弓魔武』


一瞬。


静寂。


『統合を開始』


「…………」


エリスの周囲に――。


巨大な魔法陣が展開する。


一つ。


二つ。


十。


百。


無数。


そして――。


『統合完了』


『新たなるスキル――』


『ゼファリアスを取得』


――――。


その瞬間。


世界が――。


変わった。


エリスの背中。


そこに――。


巨大な円形の紋章が浮かび上がった。


「…………」


その紋章の周囲に――。


いくつもの魔法陣が展開する。


さらに。


さらに。


さらに。


無数の魔法陣が――。


背中から空中へ広がっていく。


「これは……」


アイセラが初めて――。


警戒した。


エリスはゆっくりと立ち上がる。


さっきまで震えていた脚。


今は――。


震えていない。


「…………」


エリスが弓を握る。


背後の魔法陣が回転する。


ギュルルルルル……。


その中心から――。


一本の矢が生まれた。


そして。


二本。


十本。


百本。


千本。


矢が次々と生成される。


「…………」


それは――。


終わりが見えなかった。


無限に。


無限に。


魔法陣から矢が生まれていく。


「ゼファリアス……」


エリスが呟く。


「これが……私の力……」


アイセラが笑う。


「面白い!」


拳を握る。


「なら――」


アイセラが突っ込む。


「その力ごと叩き潰してやる!!」


ドォォォォォン!!


エリスも――。


同時に動いた。


「――――!」


一瞬。


二人の姿が消える。


次の瞬間。


ドゴォォォォォン!!


拳と拳が激突した。


「――っ!」


アイセラの腕が弾かれる。


「何!?」


エリスが踏み込む。


「はぁぁぁぁ!!」


拳。


ドゴッ!!


アイセラが腕でガードする。


だが――。


「ぐっ!?」


アイセラの腕に――。


螺旋状の衝撃が食い込んだ。


「な……!」


エリスの一撃。


ただの拳ではない。


螺旋を描く力が――。


防御そのものを貫いてくる。


アイセラの魔法障壁が――。


バキィィィン!!


砕け散る。


「――――!!」


アイセラが目を見開く。


「俺様の障壁が……!」


エリスは止まらない。


「まだです!!」


ドゴォォォン!!


二発目。


三発目。


四発目。


「ぐっ!」


「はぁぁっ!!」


拳。


肘。


蹴り。


すべての攻撃に――。


螺旋が宿っている。


ガードする。


だが――。


防御が砕かれる。


肉体で受ける。


すると――。


「ぐあっ!!」


その場所が螺旋状にえぐられ、切り刻まれる。


「この……!」


アイセラが後退する。


初めて。


アイセラが――。


押されていた。


その瞬間。


背後の魔法陣が一斉に輝いた。


「…………」


エリスが振り返る。


「行って――」


無数の矢が――。


一斉に放たれる。


「ゼファリアス!!」


ズドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!


空間そのものを埋め尽くすほどの矢。


アイセラが腕を交差する。


「こんなもの――!」


ドドドドドドドドドドッ!!


矢が直撃する。


「ぐっ……!」


アイセラが耐える。


だが――。


「なに……!?」


矢が――。


螺旋を描きながら食い込んでくる。


「ぐあああああああああ!!」


アイセラの魔力障壁が砕ける。


バキィィィィィン!!


さらに矢が――。


身体を削る。


「――――っ!!」


アイセラが初めて苦痛の声を上げた。


エリスは――。


その姿を真っ直ぐ見つめる。


恐怖はない。


絶望もない。


あるのは――。


戦う意思。


「私は……」


エリスは弓を引く。


背後の魔法陣がさらに増える。


「もう……負けません」


無数の矢が構えられる。


「キラさんのところへ――」


エリスの瞳が鋭く輝く。


「絶対に帰ります!!」


そして――。


「行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


無限の矢が――。


再びアイセラへ殺到する。


ドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!


アイセラは必死に腕で防ぐ。


だが――。


防げない。


避けられない。


受ければ削られる。


防げば砕かれる。


「ぐ……おおおおおおお!!」


その瞬間。


エリスが――。


一気に間合いへ飛び込んだ。


「――――!」


拳を握る。


拳にも――。


螺旋の力。


「これで――!」


エリスが叫ぶ。


「反撃です!!」


ドゴォォォォォォォォォン!!


エリスの拳が――。


アイセラへ叩き込まれる。


その一撃は――。


今までとはまるで違った。


アイセラの身体が――。


大きく吹き飛ぶ。


「――――ッ!!」


壁を突き破る。


ドゴォォォォォォォォォン!!


瓦礫が舞い上がる。


「…………」


エリスはその場に立っていた。


背中には――。


巨大な円形の紋章。


無数の魔法陣。


そして。


そのすべてから生まれ続ける――。


無限の矢。


「…………」


エリスは静かに呟いた。


「ここからです」


その瞳に――。


もう迷いはなかった。


「私の――」


弓を構える。


「反撃が始まります」


――――。


そして。


三大天・傲慢のアイセラとの戦いは――。


ここから。


本当の死闘へと変わっていく。


第269話 終

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