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『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』60000pv突破  作者: 異世界文庫 きらっち
最終章 魔境エリオス編

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268話 傲慢のアイセラ



――魔境城。


その内部。


長く続く廊下を抜けた先に――。


巨大な大広間があった。


天井は見上げても果てが分からないほど高い。


壁には黒い装飾が施され、ところどころに青白い炎が灯っている。


その中央。


大広間の最奥には――。


ドンッ……。


まるで王座のような――


どデカい椅子が置かれていた。


そして。


そこに一人の男が座っていた。


「…………」


男は肘をつきながら、退屈そうにこちらを見ている。


キラ。


ジュダ。


エリス。


三人が大広間へ入ってくる。


その瞬間――。


男が口元を吊り上げた。


「来たか」


低い声。


それだけで――。


空気が重くなる。


「…………」


キラは足を止めた。


ジュダも目を細める。


エリスは無意識に弓へ手を伸ばした。


男はゆっくりと立ち上がる。


巨大な身体。


鍛え上げられた肉体。


そして――。


全身から放たれる、圧倒的な魔力。


「俺様は――」


男は胸を張った。


「三大天」


その名を告げるだけで、大広間の空気が震える。


「傲慢のアイセラ」


「…………!」


キラの表情が険しくなる。


三大天。


また一人――。


エリオスへ続く道を阻む存在。


アイセラは三人を見回す。


そして――。


「ほう」


その視線がエリスで止まった。


「…………」


エリスもアイセラを睨み返す。


その瞬間。


エリスが一歩前へ出た。


「ここは――」


弓を握る。


「私の出番ですね」


「エリス……」


キラが振り返る。


エリスは小さく笑った。


「キラさん」


その声には――。


いつもの柔らかさがあった。


だが。


瞳には強い意志が宿っている。


「先へ進んでください」


「…………」


キラは一瞬、何か言おうとした。


しかし――。


アイセラが鼻で笑う。


「ふっ」


そして――。


「お前が相手か」


エリスを見下ろす。


「いいだろう」


アイセラは巨大な椅子から降りる。


ドンッ!!


その一歩だけで――。


床が僅かに震えた。


「そこの二人は進め」


「何……?」


アイセラはエリスの横。


その先にある巨大な扉を指差した。


「この先だ」


「…………」


キラが扉を見る。


「この先は――」


アイセラが笑う。


「異次元となっている」


「異次元……?」


ジュダが眉をひそめる。


「ああ」


アイセラは肩をすくめる。


「エリオス様のところへ続いている」


そして――。


「まぁ」


アイセラはエリスを見る。


「がんばれよ」


「…………」


その言葉に。


エリスの眉が僅かに動いた。


「……言われなくても」


キラはエリスを見る。


「エリス」


「大丈夫です」


即答だった。


「私も……」


エリスは弓を握り直す。


「強くなったんです」


「…………」


キラはしばらくエリスを見る。


そして――。


「分かった」


キラは頷いた。


「任せる」


「はい!」


キラとジュダは――。


アイセラの横を通り抜ける。


巨大な扉へ向かって歩き始めた。


「…………」


アイセラは止めない。


ただ――。


エリスだけを見ている。


キラとジュダが扉の前に立つ。


キラが振り返る。


「エリス」


「はい」


「絶対に来いよ」


エリスは笑った。


「もちろんです」


キラとジュダは扉を開く。


ギィィィィ……。


扉の向こうには――。


何もない。


ただ。


深い闇。


その奥から――。


普通の空間では感じられない、奇妙な魔力が流れている。


「行くぞ、ジュダ」


「ええ」


二人は――。


異次元の中へ消えていった。


バタン。


扉が閉じる。


「…………」


大広間に残されたのは――。


エリスとアイセラ。


二人だけ。


長い沈黙。


やがて。


アイセラが笑った。


「ふっ……」


「…………」


「これで邪魔者はいなくなったな」


エリスは弓を構える。


「ええ」


アイセラは肩を回す。


ゴキッ。


骨の鳴る音。


「俺様がこの世で一番強い」


「…………」


「残念だが――」


アイセラの口元が歪む。


「お前たちはエリオス様に会う前に」


一歩。


踏み出す。


「この俺に殺される」


ドンッ!!


凄まじい魔力が噴き上がった。


大広間の床に亀裂が走る。


「…………!」


エリスの髪が風圧で大きく揺れる。


それでも――。


エリスは退かなかった。


弓を構えたまま――。


「それは――」


エリスの瞳が鋭くなる。


「どうかしら」


その瞬間。


エリスの身体から魔力が爆発的に溢れ出した。


「――精弓魔武」


シュゥゥゥゥ……!


精霊の力。


弓の力。


そして武の力。


三つが一つに重なっていく。


エリスの周囲に風が渦巻く。


髪が舞い上がる。


瞳が鋭く輝く。


「…………」


アイセラが笑った。


「ほう」


「行きます!」


エリスが地面を蹴った。


――ドンッ!!


一瞬で距離を詰める。


「速いな」


アイセラが笑う。


エリスは弓を引く。


「はぁっ!」


ズバァッ!!


至近距離から魔法の矢。


しかし――。


アイセラは腕一本で弾き飛ばした。


「なっ……!」


エリスが驚く。


その隙に――。


「遅い」


「――っ!」


アイセラの拳が迫る。


エリスは身体を捻って避ける。


ブォン!!


拳が頬を掠める。


「っ!」


続けて――。


アイセラの蹴り。


エリスは両腕で受け止める。


ドゴォォォン!!


「――ぐっ!」


身体が大きく吹き飛ぶ。


……しかし。


すぐに空中で体勢を立て直す。


空中を蹴る。



エリスは再び突っ込んだ。


「まだ!」


弓を構える。


「アルテミス・レイン!」


ドドドドドドドドッ!!


無数の魔法矢が降り注ぐ。


アイセラは――。


笑った。


「ははっ!」


腕を振る。


ズガガガガガッ!!


拳圧だけで矢を吹き飛ばしていく。


「嘘……!」


エリスの目が見開かれる。


「この程度か?」


アイセラが笑いながら突っ込んでくる。


「――っ!」


エリスは咄嗟に弓を振る。


ガキィン!!


弓と腕がぶつかる。


そのまま――。


「おらぁっ!」


アイセラの拳がエリスの腹へ叩き込まれる。


ドゴォォォォン!!


「――っ!!」


息が――。


止まった。


「かはっ……!」


身体がくの字に折れる。


それでもエリスは倒れない。


歯を食いしばる。


「まだ……!」


アイセラが笑った。


「いいぞ」


「…………」


「いつぞやの剣聖よりは――」


アイセラは楽しそうに拳を握る。


「楽しめるぞ」


「……!」


その言葉に。


エリスの心臓が大きく跳ねた。


――剣聖。


おそらく。


かつてアイセラが戦った、強者。


それよりは自分の方が楽しめる。


そう言っている。


つまり――。


目の前の男は。


まだ――。


本気ですらない。


「…………」


エリスの額から汗が落ちる。


「この……化物……」


小さく呟いた。


アイセラが笑う。


「化物?」


一歩。


また一歩。


エリスへ近づいていく。


「違うな」


ニヤリ。


「お前が弱すぎるだけだ」


「…………!」


その瞬間。


アイセラが消えた。


「――え?」


次の瞬間。


ドゴォッ!!


「――ぐっ!」


エリスの頬に拳が入る。


身体が横へ吹き飛ぶ。


ドガァァァン!!


壁へ叩きつけられる。


「かはっ……!」


肺から空気が抜ける。


床へ落ちる。


だが――。


「まだだ」


アイセラが目の前に現れた。


「――っ!」


エリスは必死に立ち上がろうとする。


その瞬間。


ドゴッ!!


「――あぁっ!」


拳。


ドガッ!!


蹴り。


ドゴォッ!!


拳。


「ぐっ……!」


「ほら!」


ドゴォォン!!


「――っ!」


何度も。


何度も。


エリスの身体が吹き飛ばされる。


床を転がる。


壁に叩きつけられる。


それでも――。


エリスは立ち上がろうとした。


「……まだ……」


膝が震える。


「まだ……私は……」


アイセラは笑っている。


「いい根性だ」


そして――。


「だが」


拳を引く。


「それだけだ」


ドォォォン!!


「――――っ!!」


エリスの身体が大きく吹き飛んだ。


数メートル。


十メートル。


そのまま床を何度も転がる。


「……っ……」


エリスは震える手で床を掴んだ。


「立た……ないと……」


息が苦しい。


視界が滲む。


身体中が痛い。


それでも――。


「キラさん……」


小さく呟く。


――絶対に来いよ。


さっきのキラの言葉が頭に浮かぶ。


「……はい」


エリスは震えながら立ち上がる。


「私も……行きます……」


その姿を見て――。


アイセラはさらに笑った。


「そうだ」


「…………」


「その顔だ」


「もっと見せろ」


「お前がどこまで耐えられるのか――」


アイセラの魔力が膨れ上がる。


「俺様に見せてみろ!」


「…………!」


エリスは弓を握り直した。


震える腕。


痛む身体。


それでも。


「……まだです」


エリスは魔力を集中させる。


掌に――。


一本。


魔法の弓が生まれる。


「私には……」


一本。


また一本。


「負けられない理由がある!」


エリスが両手を前へ突き出す。


「――いけぇぇぇぇ!!」


ズドドドドドドドドドッ!!


魔法の弓から――。


無数の矢が連射される。


一本。


十本。


百本。


まるで雨のように。


「…………」


アイセラは――。


笑っていた。


「ははははははは!!」


矢が迫る。


だが。


アイセラは一歩も動かない。


「こんなものが――」


アイセラの身体を包む魔力が――。


さらに膨れ上がる。


「俺様に効くと思うか!!」


ドォォォォォォォォン!!


魔力の爆発。


無数の矢が――。


すべて吹き飛ばされた。


「…………!」


エリスの目が見開かれる。


「そんな……」


一本も。


届いていない。


アイセラは笑う。


「まだ終わりじゃないぞ」


「――っ!」


次の瞬間。


アイセラが突進する。


「来る……!」


エリスは弓を構える。


だが――。


速い。


あまりにも速い。


「――――っ!」


ドゴォォォォォン!!


「きゃああああっ!!」


エリスの身体が再び吹き飛ぶ。


床を跳ねる。


壁へ叩きつけられる。


「ぐっ……!」


それでも――。


アイセラは止まらない。


拳。


蹴り。


拳。


肘。


膝。


怒涛の猛攻。


「どうした!!」


ドゴッ!!


「俺様を倒すんだろう!?」


ドガッ!!


「俺様に負けたくないんじゃないのか!?」


ドォォン!!


「それとも――」


アイセラが笑う。


「その程度なのか!!」


「――――っ!!」


エリスは必死に立ち上がろうとする。


身体が言うことを聞かない。


視界が揺れる。


それでも――。


弓を握る手だけは。


離さなかった。


「……まだ……」


震える声。


「……まだ……終わってない……」


アイセラが笑う。


「そうだ」


さらに魔力が膨れ上がる。


「なら――」


アイセラが拳を構える。


「もっと楽しませろ」


――――。


エリスは歯を食いしばった。


恐怖。


痛み。


絶望。


それでも。


その瞳から――。


戦う意思だけは消えなかった。


「…………」


次の瞬間。


アイセラが――。


再びエリスへ突っ込んだ。


「――――ッ!!」


大広間を震わせる轟音が――。


再び響き渡った。


第268話 終

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