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『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』60000pv突破  作者: 異世界文庫 きらっち
最終章 魔境エリオス編

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260話 赤黒い大地と夢の話



――魔境門内部。


「…………」


キラたちは――。


ゆっくりと歩いていた。


魔境門を抜けた先。


そこには――。


大地が広がっていた。


何もない大地。


果てしなく続く――。


荒涼とした大地。


「…………」


キラは空を見上げる。


そこには――。


青空などなかった。


赤黒い空。


まるで血と闇が混ざり合ったような――。


不気味な空だった。


「…………」


レティシアも周囲を見渡す。


「何もないわね……」


「うん」


キラが頷く。


建物もない。


人の姿もない。


遠くに山が見えるわけでもない。


ただ――。


大地だけが広がっている。


「…………」


エリスが足元を見る。


「……あれ」


地面には――。


見たことのない植物が生えていた。


赤黒い茎。


紫色の葉。


奇妙な形をした花。


中には――。


まるで生き物のように蠢いている植物まである。


「…………」


セリーナが少し後ずさる。


「こ、これは……」


「触るなよ」


キラが言う。


「毒があるかもしれない」


「は、はい!」


セリーナは慌てて手を引っ込める。


ジュダは植物を見ながら――。


「魔境の植物か」


「見たことある?」


キラが聞く。


「いや」


ジュダは首を横に振る。


「私が魔境にいた頃も、こんな場所は知らない」


「…………」


キラは少しだけ眉を寄せた。


かつて魔王だったジュダでさえ知らない。


それほど――。


この場所は未知だった。


その時。


「……あれ」


エリスが前方を指差した。


「道があります」


「道?」


全員が見る。


そこには――。


細い道が続いていた。


舗装された道ではない。


人が歩いた跡でもない。


何かの獣が何度も通ったことでできたような――。


獣道。


「…………」


ジュダが目を細める。


「何かが使っている道だな」


「敵?」


レティシアが剣へ手を添える。


「分からない」


キラは獣道の先を見る。


「でも――」


その道がどこかへ続いているのは間違いない。


「行ってみよう」


「はい」


五人は――。


獣道に沿って歩き始めた。


――――――――――


ザッ。


ザッ。


ザッ。


五人の足音だけが――。


静かな大地に響く。


赤黒い空。


不気味な植物。


どこまでも続く荒野。


そして――。


遠くから聞こえる。


「…………」


何かの鳴き声。


キラが立ち止まる。


「…………」


全員が足を止める。


「今の……聞こえた?」


エリスが小声で聞く。


「聞こえた」


レティシアが答える。


「獣……かな」


「…………」


ジュダが周囲を見る。


「近くにはいない」


「分かるのか?」


「気配が薄い」


ジュダは前を見る。


「だが――」


少し間を置く。


「この魔境には、私たちの知らない生物がいるだろうな」


「…………」


キラは剣に手を添えた。


「じゃあ、気をつけながら進もう」


「そうね」


五人は再び歩き始める。


――――――――――


どれくらい歩いたのか。


分からない。


太陽らしきものは見えない。


空はずっと赤黒いまま。


時間の感覚すら――。


少しずつ失われていく。


それでも。


五人は歩き続けた。


その道中。


ふいに――。


キラが口を開いた。


「なあ」


「?」


四人がキラを見る。


「みんなさ」


キラは前を向いたまま言った。


「この戦いが終わったら――」


少しだけ間を置く。


「何がしたい?」


「…………」


四人が顔を見合わせる。


こんな場所で。


これから黒神エリオスと戦うという時に。


あまりにも突然の質問だった。


キラは少し笑う。


「なんとなく、聞きたくなった」


「…………」


最初に答えたのは――。


セリーナだった。


「私は!」


元気よく手を上げる。


「シルオットで、私はみんなの役に立ちたいです!」


「…………」


キラが笑う。


「セリーナらしいな」


「はい!」


セリーナは笑顔で頷く。


「シルオットで、困っている人たちを助けたいです!」


エリスは


少しだけ声を落とす。


「マニルで、祖父を支えたいです」


「祖父を?」


レティシアが聞く。


「はいっ」


エリスは頷く。


「祖父には、これまでたくさん心配をかけましたから」


胸の前で手を握る。


「今度は私が、祖父を支えたいんです」


そして――。


エリスは少し照れながら笑った。


「それと……」


「まだあるの?」


レティシアが笑う。


「はい」


エリスは嬉しそうに頷く。


「みなさんと旅をした記録を――」


少しだけ空を見上げる。


「本にしたいです」


「本?」


キラが聞く。


「はい」


エリスは頷く。


「私たちが旅をしたことを、全部残したいんです」


「どこへ行ったのか」


「誰と出会ったのか」


「どんな戦いがあったのか」


セリーナは笑った。


「いつかみんなで、その本を読みたいです」


「いいな」


キラが笑う。


「俺も読みたい」


「本当ですか?」


「ああ」


「じゃあ――」


エリスは嬉しそうに笑う。


「キラさんの活躍も、いっぱい書きますね」


「……変なところは書くなよ?」


「…………」


エリスが少し考える。


「それは――」


「書くのかよ!」


「ふふっ」


エリスが笑う。


レティシアも笑った。


――――――――――


「じゃあ、レティシアは?」


キラが聞く。


レティシアは少し考える。


「うーん……」


腕を組む。


「わかんないけど――」


少しだけ笑う。


「もっと強くなるために、世界を回りたいかな?」


「世界を?」


エリスが聞く。


「うん」


レティシアは剣に手を添える。


「まだまだ知らない剣士もいるだろうし」


「知らない技もある」


「だから――」


前を見る。


「いろんな場所を旅して、もっと強くなりたい」


キラは笑う。


「やっぱりレティシアだな」


「何よ」


「いや、レティシアらしい」


「そう?」


「うん」


レティシアは少しだけ笑った。


「まあ――」


「強くなったら、またキラと手合わせしてあげるわ」


「なんで上からなんだよ」


「私のほうが強くなるから」


「今でも十分強いだろ」


「まだまだよ」


レティシアは笑う。


――――――――――


その時。


ジュダが――。


「…………」


キラの横へ少しだけ近づいた。


「ん?」


キラが見る。


ジュダは――。


顔を赤くしながら。


「…………」


小さな声で。


「私は……」


キラにだけ聞こえるように――。


ごにょごにょ。


「…………」


キラの表情が止まる。


「え?」


「…………」


ジュダはさらに小さな声で。


「だから……」


ごにょごにょ。


「…………」


キラはしばらく黙る。


そして――。


「……そっか」


ジュダは顔を逸らす。


「……別に」


「…………」


レティシアが二人を見る。


「何話してるの?」


「いや」


キラは苦笑する。


「なんでもない」


「怪しい……」


レティシアが目を細める。


ジュダは――。


何も答えなかった。


ただ。


キラの隣を歩いていた。


――――――――――


しばらくして。


レティシアがキラを見る。


「じゃあ――」


「ん?」


「キラは?」


「俺?」


キラは少し考えた。


そして――。


前を見る。


赤黒い空。


果てしなく続く大地。


その先には――。


まだ見えない。


黒神エリオス。


キラは少しだけ笑った。


「俺は――」


「やっぱり冒険者かな」


「冒険者?」


エリスが聞く。


「ああ」


キラは頷く。


「世界中を旅して」


「いろんな場所へ行って」


「いろんな人に会って」


「まだ見たことのないものを、いっぱい見たい」


レティシアが笑う。


「キラらしいね」


「そうか?」


「うん」


エリスも笑う。


「キラさんらしいです」


セリーナも元気よく頷く。


「はい!」


ジュダは――。


小さく笑った。


「……そうだな」


キラは四人を見る。


「だからさ」


少しだけ歩く速度を落とす。


「この戦いが終わったら――みんながまたしたいと思えたら」


「また旅をしよう」


「…………」


四人がキラを見る。


レティシアが笑う。


「もちろん」


エリスが頷く。


「はい」


セリーナも笑顔で答える。


「行きましょう!」


ジュダは少しだけ顔を逸らして――。


「……仕方ない」


「決まりだな」


キラは笑った。


――――――――――


五人は再び歩き始める。


ザッ。


ザッ。


ザッ。


赤黒い空の下。


見たことのない植物が揺れている。


獣道は――。


どこまでも続いている。


その先にあるのは――。


黒神エリオス。


この世界を滅ぼそうとしている存在。


五人は――。


その場所へ向かって歩いていく。


だが。


今だけは――。


戦いのことを忘れていた。


この先。


何が待っているのかは分からない。


生きて帰れる保証もない。


それでも――。


五人には。


戦いが終わった後に――。


やりたいことがある。


行きたい場所がある。


そして――。


また一緒に旅をするという約束がある。


「…………」


キラは前を見る。


遠く。


赤黒い空の下。


獣道が――。


一本の線のように伸びている。


その先へ。


五人は――。


静かに歩いていった。


目的地は――。


エリオスのいる場所。


第260話 終

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