258話 伝説の剣聖――天極聖断
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――デダルクの門。
無数の白銀の剣が――。
空を埋め尽くしていた。
一本。
十本。
百本。
千本。
数え切れないほどの巨大な剣。
そのすべてが――。
ライオへ向けられている。
「…………」
ライオは黒剣を構えた。
漆黒の魔力が爆発する。
ゴォォォォォォォォォォォォ……!!
大地が震える。
黒い炎のような魔力が、ライオの全身を包み込む。
「来い」
低い声。
「アシュレイン」
「…………」
アシュレインは剣を構えた。
身体は限界。
全身傷だらけ。
血も流れている。
呼吸も荒い。
それでも――。
その目だけは――。
一切揺れていなかった。
「これが――」
白銀の剣が眩い光を放つ。
「僕のすべてだ」
ライオが黒剣を握り直す。
「ならば――」
漆黒の魔力がさらに膨れ上がる。
「すべてを叩き潰す」
「…………」
アシュレインは――。
静かに笑った。
「やってみてよ」
その瞬間――。
「行くぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
アシュレインが踏み込んだ。
ドォォォォォォォォォォォン!!
大地が爆発する。
同時に――。
「――――!!」
無数の白銀の剣が一斉に動いた。
「天より――!」
一本。
二本。
十本。
百本。
千本。
空を埋め尽くしていた白銀の剣が――。
一斉に降り注ぐ。
「――堕ちろぉぉぉぉぉ!!」
ズガガガガガガガガガガガガガン!!
ズドォォォォォォォォォォォン!!
ズガァァァァァァァァァァン!!
大地が次々と爆発する。
白銀の剣が地面へ突き刺さる。
巨大な光の柱が何本も立ち上がる。
「…………!」
ライオが黒剣を振る。
「――黒断!!」
ズガァァァァァァン!!
漆黒の斬撃が放たれる。
白銀の剣をまとめて吹き飛ばす。
ドォォォォォン!!
だが――。
「まだだ!!」
アシュレインが叫ぶ。
空に残っていた白銀の剣が――。
一斉に軌道を変えた。
「――!!」
前。
後ろ。
左右。
頭上。
地面。
あらゆる方向から――。
ライオへ襲いかかる。
「…………!」
ライオが黒剣を振る。
ギィィィィィン!!
一閃。
二閃。
三閃。
次々と白銀の剣を弾き飛ばす。
しかし――。
「多い……!」
初めて。
ライオの声に――。
僅かな焦りが混じった。
「まだ終わらない!!」
アシュレインが走る。
「うおおおおおおおおおお!!」
白銀の剣を一本。
その手に掴む。
そして――。
「斬る!!」
ズバァァァァァン!!
ライオの黒鎧へ一撃。
「――ッ!」
ライオが受け止める。
ギィィィィィィン!!
その瞬間。
上空から――。
巨大な白銀の剣が落下した。
「――!!」
ドォォォォォォォォォォン!!
ライオが吹き飛ぶ。
「グッ……!」
数十メートル。
地面を削りながら転がる。
ザザザザザザザザッ!!
「ライオ!!」
戦場の兵士たちが息を呑む。
「押している……!」
「アシュレインが……!」
だが――。
ライオは立ち上がった。
「…………」
黒い鎧は大きく砕けている。
ヘルムにも亀裂。
身体から黒い血が流れる。
それでも――。
立っていた。
「…………なるほど」
ライオはアシュレインを見る。
「これがお前の……すべてか」
「…………」
アシュレインは答えない。
ただ――。
剣を構える。
「ならば――」
ライオの身体から――。
今までとは比べ物にならない黒い魔力が噴き出した。
ゴォォォォォォォォォォォォォォォ!!
空が黒く染まる。
大地が沈む。
周囲の瓦礫が吹き飛ぶ。
「俺も――」
黒剣を両手で握る。
「すべてを出す」
「…………!」
キラが目を見開く。
「アシュレイン……!」
レティシアも息を呑む。
「まだあんな力を……!」
セリーナは両手を胸の前で握る。
「アシュレインさん……!」
ジュダが目を細める。
「……最後のぶつかり合いか」
アブソリューは――。
静かに笑った。
「見届けてやるよ」
――――――――――
「…………」
アシュレインは剣を握る。
身体が震える。
「…………っ」
膝が崩れそうになる。
それでも――。
立つ。
「はぁ……」
息を吐く。
「はぁ……はぁ……」
そして――。
ライオを見る。
「…………」
アシュレインの口元が――。
僅かに上がった。
「ライオ」
「…………」
「これで終わりだ」
ライオも構える。
「そうだな」
二人が――。
同時に踏み込む。
「「うおおおおおおおおおおお!!!」」
ドォォォォォォォォォォォォン!!
二人の姿が消える。
次の瞬間――。
中央で。
白銀と漆黒が激突した。
「――――!!」
ギィィィィィィィィィィィィン!!
衝撃波が爆発する。
ドゴォォォォォォォォォォォォン!!
大地が割れる。
建物の残骸が吹き飛ぶ。
そして――。
アシュレインが叫んだ。
「これが――!」
白銀の光が爆発する。
「僕の最後の剣技!!」
無数の白銀の剣が――。
アシュレインの一本の剣へ吸い込まれていく。
一本。
十本。
百本。
千本。
すべての光が――。
一点へ。
アシュレインの剣へ。
白銀の刀身が――。
眩いほどの光を放つ。
「――天極聖断!!」
その瞬間。
世界が――。
白く染まった。
「――――!!」
アシュレインが剣を振り下ろす。
ズガァァァァァァァァァァァァン!!!!
巨大な白銀の斬撃が――。
デダルクの大地を一直線に走った。
だが――。
ただの斬撃ではない。
その一撃の中には――。
これまで放ったすべての剣技。
白閃。
銀月連斬。
天翔裂光。
聖翔一閃。
そして――。
勇者として覚醒した力。
そのすべてが――。
一本の斬撃へ凝縮されていた。
「――黒滅!!」
ライオも黒剣を振り下ろす。
漆黒の巨大な斬撃が放たれる。
白銀と漆黒。
二つの極大斬撃が――。
真正面から衝突した。
「――――!!」
一瞬。
音が消えた。
そして――。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
爆発。
巨大な光と黒炎が――。
空を覆い尽くす。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
兵士たちが吹き飛ばされる。
「ぐっ……!」
キラも腕で顔を覆う。
レティシア。
エリス。
セリーナ。
ジュダ。
全員が衝撃から身を守る。
アブソリューでさえ――。
目を細める。
「…………」
中央では。
二つの力がぶつかり続けている。
白銀。
漆黒。
押し合う。
押し返す。
そして――。
「うおおおおおおおおおお!!」
アシュレインが叫ぶ。
「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
さらに力を込める。
白銀の斬撃が――。
少しずつ。
少しずつ。
漆黒を押し始める。
「…………!」
ライオの目が見開かれる。
「馬鹿な……」
黒剣が震える。
「この俺が……!」
アシュレインの身体から――。
最後の光が噴き出す。
「これで――」
一歩。
踏み込む。
「終わりだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ズガァァァァァァァァァァァァァァン!!!!
白銀の斬撃が――。
漆黒を完全に飲み込んだ。
「――――!!」
ライオの身体が――。
宙へ浮く。
「グッ……!」
そして――。
ズバァァァァァァァァァン!!
白銀の光がライオを貫いた。
「…………」
ライオの黒剣が――。
手から落ちる。
カラン……。
地面へ転がった。
「…………」
ライオは立ったまま――。
動かない。
そして。
黒い鎧に――。
大きな亀裂が走った。
ピシッ。
ピシピシッ。
次の瞬間――。
バキィィィィィィィン!!
黒い鎧が砕け散る。
ライオの身体が――。
ゆっくりと倒れた。
ドサッ。
「…………」
静寂。
誰も――。
何も言わない。
「…………」
アシュレインは――。
剣を下ろした。
白銀の光が消えていく。
そして――。
「…………はぁ」
大きく息を吐いた。
「はぁ……はぁ……」
肩が上下している。
額には大量の汗。
全身傷だらけ。
服もボロボロ。
それでも――。
アシュレインは――。
笑っていた。
「…………」
キラが駆け寄る。
「アシュレイン!」
「大丈夫」
アシュレインは手を上げる。
「ちょっと……疲れただけだよ」
「いや、ちょっとどころじゃ――」
キラが言いかける。
だが。
アシュレインは――。
余裕のある笑みを浮かべた。
「……勝ったからね」
「…………」
キラは思わず笑った。
「そうだな」
アシュレインは倒れたライオを見る。
「…………」
そして――。
「終わったね」
静かに呟いた。
「…………」
誰も答えない。
ただ――。
戦場にいた全員が。
倒れたライオを見つめていた。
最後の魔境将軍。
ライオ。
その男は――。
伝説の剣聖アシュレインによって――。
ついに倒された。
――――――――――
しばらくして。
キラが前へ出た。
「…………」
デダルクの門を見る。
巨大な城塞。
長く魔境軍に支配されていた――。
魔境への入口。
キラは周囲を見渡した。
七つの軍勢。
聖騎士団。
魔法星団。
魔族軍。
剣士たち。
そして――。
伝説のパーティ。
全員がここまで戦い抜いてきた。
「…………」
キラが剣を抜く。
「デダルクは――」
剣を高く掲げる。
「俺たちが占拠する!」
「――――!!」
その声が――。
戦場全体に響き渡った。
「おおおおおおおおおおおお!!」
兵士たちが一斉に叫ぶ。
「デダルクを取り戻せ!!」
「門を確保しろ!!」
「魔境軍を追い払え!!」
七つの軍勢が――。
一斉に動き始める。
城壁へ向かう。
門を確保する。
残った魔境軍を制圧する。
武器を捨てた兵士たちを拘束する。
そして――。
デダルクの巨大な門に――。
同盟軍の旗が掲げられた。
バサァァァァァ……。
風に――。
旗が大きくなびく。
「…………」
キラはそれを見上げる。
アシュレインも。
レティシアも。
エリスも。
セリーナも。
ジュダも。
仲間たちが並んで――。
その光景を見つめていた。
デダルク。
魔境へ続く最後の巨大要塞。
それを――。
ついに。
七つの軍勢が手に入れた。
「…………」
キラが静かに呟く。
「これで――」
その先にあるのは。
魔境。
そして――。
黒神エリオス。
「…………」
キラは拳を握る。
「次は――」
仲間たちを見る。
「魔境だ」
――――――――――
その頃。
倒れたライオの近くでは――。
誰も気づいていなかった。
砕けた黒い鎧の下。
ライオの指が――。
ほんの僅かに――。
動いたことを。
第258話 終




