253話 マントラ撃破
――デダルク正面、右戦場。
「はぁぁぁぁぁ!!」
リゼッタが拳を振り抜く。
ドゴォォォォォン!!
「ぐっ……!」
マントラの巨体が吹き飛ぶ。
地面を何度も転がり――。
ズザザザザァァァ!!
ようやく止まった。
「…………」
リゼッタはゆっくりと拳を構える。
「どうした?」
マントラが立ち上がる。
口元から血を拭う。
「さっきまでの勢いはどうした?」
リゼッタは笑う。
「まだまだこれからだろ?」
「…………」
マントラは笑っていた。
「フフフ……」
リゼッタの拳が再び飛ぶ。
「おおおおお!!」
ドゴォォォォン!!
マントラが腕で受ける。
「ぐっ!」
そのままリゼッタが踏み込む。
「はぁっ!!」
ドガァァァァン!!
腹へ拳。
「ぐおっ!」
さらに――。
「せぇぇぇい!!」
ズドォォォォン!!
蹴り。
マントラが後退する。
一歩。
二歩。
三歩。
「…………」
リゼッタは追う。
「まだだ!」
ドンッ!!
一気に距離を詰める。
「おおおおおお!!」
拳。
肘。
膝。
蹴り。
怒涛の連撃。
「ぐっ……!」
マントラは防ぐ。
だが――。
完全に押されていた。
「どうした!?」
リゼッタが叫ぶ。
「魔境将軍っていうのは、その程度か!?」
マントラの身体が後ろへ流れる。
「…………」
それでも。
マントラは――。
笑っていた。
「フフ……」
リゼッタの動きが止まる。
「……何がおかしい?」
マントラは血を吐きながら笑う。
「余裕だな」
「…………」
「確かに――」
マントラが拳を握る。
「今は押されている」
「だが……」
ギシッ。
マントラの身体から――。
凄まじい力が溢れ出す。
「まだ終わってはいない」
リゼッタが構える。
「来い」
「…………」
マントラが――。
一歩踏み込む。
ドンッ!!
「――ッ!」
次の瞬間。
マントラの拳が――。
リゼッタの腹へ突き刺さった。
「ぐっ……!!」
ドゴォォォォォォン!!
「――――っ!!」
リゼッタの身体が吹き飛ぶ。
ズガァァァァァン!!
瓦礫を突き破る。
さらに――。
ドォォォォォン!!
地面へ叩きつけられる。
「リゼッタ様!!」
遠くから声がする。
だが――。
リゼッタは動かなかった。
「…………」
静寂。
マントラはゆっくり歩いてくる。
「終わりか?」
「…………」
「先ほどまでの威勢はどうした?」
マントラが笑う。
「これが――」
拳を握る。
「魔境将軍の力だ」
その時。
「…………」
瓦礫の中で――。
リゼッタの指が動いた。
「……まだ……」
ゆっくりと。
身体を起こす。
「……終わってない……」
ガラ……。
瓦礫を押しのける。
そして――。
立ち上がった。
「…………」
身体はボロボロ。
息も荒い。
足元もふらついている。
それでも――。
リゼッタは歩き出す。
一歩。
「…………」
また一歩。
フラ……。
身体が揺れる。
それでも止まらない。
マントラの前まで――。
ゆっくりと歩いていく。
「…………」
マントラが目を見開く。
「まだ立つか……」
リゼッタは答えない。
ただ――。
マントラを睨みつける。
「…………」
その目に――。
一切の迷いはなかった。
「……なるほど」
マントラが笑う。
「ならば――」
リゼッタが拳を握る。
「…………」
そして。
「スキル――」
空気が震える。
「暴拳武王」
ドォォォォォォォォン!!!!
瞬間。
リゼッタの身体から――。
凄まじい力が爆発した。
「――――!」
マントラの表情が変わる。
「な……」
リゼッタの傷ついた身体を――。
圧倒的な闘気が包み込む。
ドドドドドドド……。
地面に亀裂が走る。
リゼッタはゆっくりと拳を握り直す。
「……ここからだ」
「…………」
マントラが構える。
「来い!!」
リゼッタが――。
消えた。
「――ッ!?」
次の瞬間。
ドゴォォォォォン!!
拳がマントラの頬へ叩き込まれる。
「ぐおおおおお!!」
マントラの巨体が吹き飛ぶ。
「まだだ!!」
リゼッタが追う。
ドンッ!!
ズドォォォォン!!
腹へ拳。
さらに――。
「おおおおお!!」
ドガァァァァァン!!
顎へアッパー。
マントラの身体が宙へ浮く。
「ぐっ……!」
リゼッタは空中へ跳ぶ。
「はぁぁぁぁ!!」
ドゴォォォォォン!!
空中で拳を叩き込む。
マントラが地面へ落下する。
ズガァァァァァン!!
「ぐおおおお……!!」
マントラが立ち上がる。
だが――。
その目には、初めて焦りが浮かんでいた。
「なぜ……」
リゼッタが歩いてくる。
「さっきまでとは……!」
「言っただろ」
リゼッタは拳を構える。
「ここからだって」
ドンッ!!
また消える。
「速い……!」
マントラが腕を構える。
だが――。
遅い。
ドゴォォォォォン!!
「ぐあっ!!」
右。
ドガァァァァン!!
左。
ズドォォォォン!!
正面。
マントラは防ぎきれない。
「ぐっ!」
「おおおおおお!!」
リゼッタの拳が――。
何度も。
何度も。
マントラを打ち抜いていく。
「ぐおおおおおお!!」
マントラが反撃する。
拳を振る。
しかし――。
リゼッタは避ける。
「遅い!」
ドンッ!!
一撃。
「遅い!!」
ドンッ!!
二撃。
「まだまだ!!」
ドゴォォォォォン!!
三撃。
マントラの身体が大きく吹き飛ぶ。
ズガァァァァァン!!
「…………」
マントラは立ち上がろうとする。
だが――。
膝が震えていた。
「……これほど……とは……」
リゼッタが歩いてくる。
「終わりだ」
マントラが顔を上げる。
「…………」
リゼッタは――。
拳を引く。
「これで――」
全身の力を拳へ集める。
「終わらせる!!」
ドンッ!!
一瞬で距離を詰める。
「――――ッ!!」
マントラも最後の力を振り絞る。
「うおおおおおおお!!」
拳を振る。
リゼッタは――。
真正面から踏み込む。
「おおおおおおおおお!!」
拳と拳が交差する。
そして――。
ズドォォォォォォォォォン!!!!
リゼッタの拳が――。
マントラの身体を貫いた。
「…………」
マントラの動きが止まる。
「……ぐ……」
リゼッタの拳が――。
その身体の中心を完全に突き抜けていた。
「……な……」
マントラの目が見開かれる。
リゼッタは静かに拳を引き抜く。
マントラの巨体が――。
ゆっくりと崩れ落ちる。
ドサッ。
「…………」
魔境将軍マントラ――。
敗北。
リゼッタは荒い息を吐く。
「はぁ……はぁ……」
それでも――。
まだ戦場には大量の魔境軍が残っている。
リゼッタは振り返る。
そして――。
声を張り上げた。
「魔境将軍は倒した!!」
「…………!」
周囲の兵たちが振り返る。
リゼッタは拳を掲げる。
「このまま攻めろ!!」
「おおおおおおおお!!」
味方の兵たちが一斉に声を上げる。
「進めぇぇぇぇぇ!!」
「魔境軍を押し返せぇぇぇ!!」
戦場が再び動き出す。
その時――。
「リゼッタ!」
後ろから声がした。
振り返る。
「…………」
そこには――。
パオとジミーが走ってきていた。
「リゼッタ!」
パオが駆け寄る。
「マントラを倒したヨ!」
リゼッタは笑う。
「……ああ」
パオはリゼッタの傷を見て――。
少し心配そうな顔をする。
「もう休むヨ」
「…………」
「ここからは、少し休んでいいヨ」
リゼッタが苦笑する。
「そうだな……」
その横で――。
ジミーが兵器を握る。
「私たちが……」
一歩前へ出る。
「残りの敵を倒します」
「…………」
ジミーは魔境軍を見る。
「魔導兵器の魔力も、少し回復しました」
そして――。
小さく笑う。
「まだ戦えます」
リゼッタは二人を見る。
パオ。
ジミー。
そして――。
笑った。
「ありがとう」
「ここは任せる」
パオが笑う。
「任せるヨ!」
ジミーも頷く。
「はい!」
リゼッタはゆっくりと拳を握る。
「じゃあ――」
マントラが倒れた先を見る。
「休んだら私も残ってる敵を倒してくる」
「え?」
パオが目を丸くする。
「大丈夫かヨ?」
リゼッタはニヤリと笑った。
「少し休めばな」
「…………」
パオとジミーが顔を見合わせる。
そして――。
「やっぱりリゼッタだヨ」
「ですね……」
そして
リゼッタは再び戦場へ駆け出した。
「行くぞぉぉぉぉ!!」
その背中を見ながら――。
パオとジミーもリゼッタへ続く
右戦場は――。
魔境将軍を一人、討ち取った。
そして――。
戦いは、さらに激しさを増していく。
第253話 終




