239話 三つ巴の戦い
――ドォォォォォン!!
デダルクの街に、再び轟音が響き渡った。
崩れた建物の壁が吹き飛ぶ。
瓦礫が宙を舞う。
砂埃が一気に巻き上がり、視界を覆っていく。
「――そこだ!」
キラが踏み込む。
「魔法剣術――!」
剣に炎が宿る。
「インフェルノ・テンペスト!!」
――ゴォォォォォ!!
炎と風が渦を巻き、巨大な竜巻となって黒騎士たちへ襲いかかる。
だが。
黒剣士が前へ出た。
「…………」
剣を一閃。
――ズバァァァン!!
炎の竜巻が真っ二つに裂けた。
「なっ……!」
その瞬間。
「――撃つ」
ハンターの弓が引き絞られる。
ギリ……。
矢に黒い魔力が集中する。
「――ッ!」
シュンッ!!
矢が放たれた。
キラは剣を横に構える。
キィィィン!!
弾く。
だが――
矢は空中で方向を変えた。
「また追尾か!」
キラが跳ぶ。
ヒュンッ!
矢が追ってくる。
「しつこい!」
キラは空中で身体を捻り、剣を振る。
――ガキィン!!
矢を叩き落とす。
その瞬間。
「――ブラック・グラビティ」
魔術師。
ズンッ!!
空間そのものが重くなる。
「ぐっ……!」
キラの身体が地面へ引きずり下ろされる。
「くそっ!」
膝が地面につく。
そこへ――
黒剣士が突っ込んできた。
「――ッ!」
キラはギリギリで立ち上がる。
ガキィィィン!!
剣と剣が激突。
「ぐ……!」
黒剣士の一撃が重い。
二撃目。
三撃目。
四撃目。
キラは剣で受け流す。
キィン!
キィン!
キィン!
だが――
「――!」
背後から矢。
キラは身体を捻る。
ヒュッ!
頬を掠める。
「危な――」
その瞬間。
ドゴォォォン!!
魔術師の魔法が爆発した。
「ぐあっ!!」
キラが吹き飛ぶ。
瓦礫の山へ突っ込む。
「く……!」
キラは立ち上がる。
だが、息が荒い。
「こいつら……」
三人。
それぞれの攻撃だけなら対処できる。
しかし――
「連携が……異常に上手い……!」
黒剣士が接近戦。
ハンターが遠距離。
魔術師が補助と拘束。
一人に意識を向ければ、別の一人が必ず攻撃してくる。
「――行くぞ!」
キラは地面を蹴った。
「テンペスト・ゼロ!」
――ズガァァァン!!
巨大な風圧が街を走る。
黒剣士が吹き飛ぶ。
「今だ!」
キラが追撃。
剣を振り下ろす。
――ガキィィィン!!
黒剣士が受け止める。
その瞬間。
「――ヴォルティック・アクア!」
水と雷が融合。
巨大な雷水流が魔術師へ向かう。
「…………」
魔術師が杖を掲げる。
黒い壁が展開。
ドォォォン!!
雷水流と黒い壁が衝突する。
「まだだ!」
キラが剣を振る。
「マグマ・カタストロフ!」
地面が赤く染まる。
灼熱の溶岩が噴き上がる。
ハンターが後ろへ跳ぶ。
「…………!」
しかし――
三人は崩れない。
「くっ……!」
キラが歯を食いしばる。
その時だった。
――シュンッ!!
空気を切り裂く音。
「――!」
矢。
キラが反射的に剣を振る。
ガキィン!!
だが、その矢の影から――
黒剣士が現れた。
「――なっ!」
ドゴォォォン!!
強烈な一撃。
キラの身体が吹き飛ぶ。
「ぐあっ!!」
壁へ叩きつけられる。
「はぁ……はぁ……」
立ち上がろうとする。
だが――
魔術師の杖が向けられる。
「…………」
空気が歪む。
「まずい――!」
ドォォォォォン!!
爆発。
キラの身体が再び吹き飛んだ。
「ぐっ……!」
瓦礫の中へ倒れ込む。
「……強い」
キラがゆっくりと立ち上がる。
天使の羽衣が白く輝いている。
「天使の羽衣を使ってるのに……」
キラは三人を見る。
「押されるのか……!」
黒剣士が剣を構える。
ハンターが弓を引く。
魔術師が杖を掲げる。
三人が――同時に動いた。
「――!」
その瞬間。
「キラーーー!!」
聞き慣れた声。
「――!」
キラが振り返る。
街の入り口側。
二つの影が走ってくる。
「レティシア!」
「キラ!」
レティシアが双剣を握ったまま駆けてくる。
その隣には――
エリス。
「遅くなりました!」
キラが目を見開く。
「二人とも……!」
レティシアは笑う。
「もうむこうは大丈夫!」
エリスも頷く。
「ジュダとセリーナに任せてきた!」
「そっちは任せてきたのか……」
「うん!」
レティシアが双剣を構える。
「だから――」
エリスも魔力を集中させる。
「ここからは――」
キラは三人の敵を見る。
そして――
「ここから反撃だ!」
――ドンッ!!
三人の魔力が一気に膨れ上がった。
黒剣士。
魔術師。
ハンター。
それぞれが構える。
レティシアが黒剣士を見る。
「その剣士は私がやる」
エリスがハンターを見る。
「では、私はあの弓使いを」
キラは魔術師を見つめる。
「俺は――あいつだ」
魔術師が杖を向ける。
「…………」
キラの背中で――
白い翼が大きく広がった。
「天使の羽衣」
パァァァァァ……!
純白の光がデダルクを照らす。
「さあ――」
キラが剣を構える。
「やろうか」
――三対三。
戦いの形が変わった。
---
「――来い!」
レティシアが黒剣士へ突っ込む。
黒剣士も剣を振る。
ガキィィィン!!
一撃目。
レティシアは受ける。
二撃目。
身体を横へ滑らせる。
三撃目。
しゃがむ。
四撃目。
――空歩。
レティシアの身体が宙へ浮いた。
「遅い!」
空中で身体を回転。
「双月斬!!」
――ズバァァン!!
左右から同時に斬撃。
黒剣士が剣で受ける。
ガキィン!!
「やっぱり硬い!」
レティシアは笑う。
「なら――」
一歩。
消える。
「瞬歩!」
黒剣士の背後へ。
「無影連斬!!」
――ザザザザザッ!!
無数の斬撃。
だが黒剣士も振り返る。
キィン!
キィン!
キィン!
全てを受け止める。
「へぇ……」
レティシアの目が輝く。
「やるじゃん!」
黒剣士が横薙ぎ。
「――!」
レティシアは紙一重で避ける。
「幻歩!」
残像が残る。
黒剣士の剣が残像を斬る。
「こっち!」
レティシアが斜め後ろへ回り込む。
「烈風双刃!!」
――ズバァァァン!!
二本の剣が風をまとって炸裂する。
「――!」
黒剣士が後退。
「まだまだ!」
レティシアは追う。
---
一方。
「…………」
ハンターはエリスへ弓を向けていた。
「――来ます!」
エリスが叫ぶ。
シュンッ!!
矢が飛ぶ。
「ウィンドステップ!」
エリスの身体が風のように横へ流れる。
ヒュンッ!
二本目。
三本目。
四本目。
「――っ!」
エリスは次々と避ける。
しかし――
矢が途中で曲がる。
「追尾……!」
エリスが弓を構える。
「なら!」
自分の矢を放つ。
「アルテミス・レイン!」
――ヒュヒュヒュヒュッ!!
無数の矢が空を埋め尽くす。
ハンターも弓を引く。
「…………」
――ドドドドドッ!!
無数の矢が衝突。
空中で次々と爆発する。
「くっ……!」
エリスが後退。
ハンターが一気に距離を詰める。
「――!」
弓を捨てた。
「近接も……!?」
ハンターが短剣を抜く。
エリスも即座に弓を消す。
「なら――」
両手を構える。
「私もです!」
ハンターの斬撃。
エリスは腕で受け流す。
そのまま肘。
「――っ!」
ハンターが避ける。
回し蹴り。
さらに掌底。
「はぁっ!」
ハンターが後退。
エリスは一瞬だけ距離を取った。
「――精弓魔武」
パァァ……!
エリスの周囲に光が集まる。
精霊弓王の力。
魔武の力。
二つが融合する。
「ここからは――」
手のひらに魔力の矢が生まれる。
「私の戦い方でいきます!」
――シュンッ!!
矢が至近距離から放たれた。
「――!」
ハンターが身体を捻る。
矢が肩を掠める。
エリスはそのまま踏み込み――
掌底。
蹴り。
肘。
そして――
「アルテミス・レイン!」
至近距離から無数の魔力矢。
ドドドドドドッ!!
ハンターが吹き飛ぶ。
「――まだ!」
エリスが追撃する。
「精弓魔武――連射!」
両手から次々と矢が生まれ、雨のように降り注いだ。
---
そして――
キラ。
「…………」
魔術師と向かい合っていた。
「一対一なら――」
キラが剣を構える。
「さっきとは違うぞ」
魔術師が杖を振る。
「ブラック・グラビティ」
ズンッ!!
重力が襲いかかる。
「――天使の羽衣!」
パァン!!
羽衣が光り、重力魔法を弾く。
「効かない……!」
キラが踏み込む。
「セレスティアル・レイ!」
――ズドォォォン!!
巨大な光線。
魔術師が黒い障壁を展開する。
ドォォォォン!!
光と闇が衝突する。
「まだだ!」
キラが横へ回る。
「フロスト・テンペスト!」
凍てつく風が吹き荒れる。
魔術師の身体が凍りつき始める。
「…………!」
魔術師が杖を振る。
「ブラック・フレア!」
黒い炎が爆発。
キラは天使の羽衣で受ける。
――パァァン!!
黒い炎が反射される。
「――返す!」
跳ね返った黒炎が魔術師へ向かう。
魔術師が横へ跳ぶ。
その瞬間。
キラは地面を蹴った。
「魔法剣術――!」
剣に雷が走る。
「ラグナ・ボルト!!」
雷撃をまとった斬撃。
――ズガァァァン!!
魔術師が吹き飛ぶ。
だが――
空中で体勢を立て直す。
「…………」
キラの目が細くなる。
「まだ立つか」
魔術師の周囲に巨大な魔法陣が浮かぶ。
一つ。
二つ。
三つ。
「…………!」
キラも魔力を集中。
炎。
水。
風。
大地。
雷。
光。
闇。
七属性が周囲を回る。
「来い……!」
魔術師の魔法陣が一斉に光る。
「――!」
キラも剣を握り直す。
その瞬間――
デダルク全体を揺らすほどの轟音が響いた。
ドォォォォォォォォォォン!!
三つの戦場で――
レティシア。
エリス。
キラ。
そして三人の謎の戦士。
六人の力がぶつかり合う。
誰も退かない。
誰も譲らない。
「「「――ここからだ!!」」」
デダルクの街が――
再び戦場へと変わっていった。
第239話 終




