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『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』50000pv突破  作者: 異世界文庫 きらっち
天空の塔〜第二次魔族国大戦編

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235話 死守



――第二次魔族国大戦。


魔人国南門。


戦場の左側では、すでに激しい戦闘が始まっていた。


「うおおおおおおおおおおっ!!」


「押し返せぇぇぇぇ!!」


「魔境軍を魔人国へ入れるな!!」


魔人族の兵士たちが叫びながら、魔境軍へと突撃していく。


対する魔境軍も、


「殺せぇぇぇ!!」


「進めぇぇぇ!!」


「魔人族を蹴散らせ!!」


無数の兵士が押し寄せていた。


剣と剣がぶつかる。


槍が振り抜かれる。


魔法が飛び交い、大地を削る。


ドォン!!


ズガァァン!!


地面が揺れる。


砂煙が舞う。


戦場には怒号と爆音が絶え間なく響いていた。


その最前線。


魔人族の兵士たちを率いている男がいた。


「…………」


魔人国王――ジオウ。


普段の穏やかな表情とは違い、その顔には戦士としての鋭い眼差しが浮かんでいた。


手には一本の槍。


そして――


「来るか」


目の前から数十人の魔境兵が一斉に襲いかかってくる。


「ジオウを討ち取れぇぇぇ!!」


「魔人国王を倒せ!!」


「行けぇぇぇ!!」


ジオウは槍を構えた。


「……氷よ」


ザァァァァッ!!


周囲の空気が一瞬で冷たくなる。


「――凍れ」


パキィィィィン!!


地面から巨大な氷柱が突き出した。


「なっ!?」


「うわぁぁぁ!!」


「避けろ!!」


遅かった。


地面から次々と伸びる氷が魔境兵たちの足元を包み込み、その動きを止める。


「今だ!!」


ジオウが槍を握り直す。


「はぁっ!!」


ドン!!


地面を蹴った。


一瞬で敵との距離を詰める。


槍を横薙ぎに振る。


ガッ!!


一人。


返す槍で二人。


「ぐぁっ!!」


さらに踏み込み――


「せいっ!!」


ドォン!!


槍の一撃で数人まとめて吹き飛ばした。


「王自ら前線に出ているぞ!!」


「ジオウ様に続けぇぇ!!」


魔人族の兵士たちが士気を上げる。


ジオウは槍を振るいながら、周囲を見渡した。


敵が多い。


あまりにも多い。


倒しても倒しても、その後ろから次の兵士が現れる。


「……数が多いな」


ジオウは小さく呟いた。


その瞬間。


「ジオウ様!!」


「右です!!」


「…………!」


ジオウが振り向く。


右側から魔境兵の大群が迫っていた。


「死ねぇぇぇぇ!!」


十数人が一斉に飛びかかってくる。


ジオウは槍を構えた。


しかし――


「ジオウ様」


「ここは――」


二つの声が重なった。


シュッ!!


二つの影がジオウの前へ飛び出した。


「我らにお任せください」


「ここは私たちが抑えます」


――ヤルル。


――ヨルル。


ジオウの側近を務める双子の魔人だった。


二人の手には、それぞれ一本の短剣。


見た目はよく似ている。


黒髪。


細身の身体。


鋭い目。


そして――


完全に同じ動き。


「ヤルル!」


「ヨルル!」


二人が同時に踏み込む。


シュンッ!!


魔境兵の剣が振り下ろされた。


しかし――


「遅い」


ヤルルが身体を横へ滑らせる。


剣が目の前を通り過ぎた。


その瞬間。


キンッ!!


短剣が敵の腕を弾く。


「なっ!?」


「そこ」


ズバッ!!


短剣が敵の武器を弾き飛ばす。


同時にヨルルが背後へ回り込んだ。


「失礼します」


ドン!!


蹴りが敵の背中へ入る。


「ぐぁっ!!」


敵が前へ吹き飛ぶ。


その先には――


ヤルル。


「終わり」


ドスッ!!


短剣の柄で敵を打ち倒す。


一人。


二人。


三人。


瞬く間だった。


「な、なんだこいつら!?」



「速すぎる!!」


魔境兵たちが怯む。


しかしヤルルとヨルルは止まらない。


「ヨルル」


「分かってる」


二人が背中合わせになる。


魔境兵が四方から迫る。


「囲めぇぇぇ!!」


「数で押せ!!」


「…………」


ヤルルが短剣を逆手に持つ。


ヨルルも同じ構えを取る。


「来るよ」


「うん」


次の瞬間。


二人の姿が消えた。


「――え?」


シュッ!!


左。


「ぐぁっ!!」


右。


「ぎゃっ!!」


背後。


「なっ!?」


目の前。


「うわぁぁぁ!!」


まるで鏡に映したように、二人が同じ動きを繰り返す。


一人が攻撃すれば、もう一人が死角を突く。


一人が敵の剣を弾けば、もう一人が足を払う。


そして――


「今」


「うん」


二人の短剣が同時に閃いた。


キィィン!!


敵の武器が宙を舞う。


「――そこだ!!」


ズドォッ!!


二人の蹴りが同時に叩き込まれ、魔境兵たちがまとめて吹き飛んだ。


「す、すげぇ……」


周囲の魔人兵が思わず呟く。


ヤルルとヨルルは振り返った。


「ジオウ様」


「この辺りは我らが抑えます」


ジオウは二人を見た。


「……頼む」


「はい」


「お任せください」


ジオウは一歩後ろへ下がる。


そして――


槍を地面に突き立てた。


「ならば……」


空気が変わる。


ジオウの周囲から、猛烈な冷気が広がっていく。


「私も遠慮はしない」


バキバキバキバキッ!!


地面が凍り始める。


魔境兵がその異変に気づいた。


「な、なんだ……?」


「足元が……!」


「氷だ!!」


ジオウが右手を前へ突き出す。


「――アイスランス」


ズガガガガガガガッ!!


地面から無数の氷の槍が飛び出した。


「うわぁぁぁ!!」


「避けろ!!」


「無理だ!!」


氷槍が次々と魔境兵を吹き飛ばしていく。


一列。


二列。


三列。


敵の集団が崩れていく。


ジオウは止まらない。


「アイスブレード」


ヒュンッ!!


空中に無数の氷の刃が生まれる。


「放て」


シュシュシュシュシュッ!!


氷の刃が雨のように降り注ぐ。


ドドドドドドド!!


大地に突き刺さる。


魔境兵たちは必死に逃げる。


しかし――


「逃がさん」


ジオウが槍を振る。


「フロスト・バインド」


パキィィィィン!!


足元から氷の鎖が伸びる。


「なっ!?」


「動けない!!」


「くそっ!!」


動きを封じられた敵へ――


「アイス・インパクト」


ドゴォォォォン!!


巨大な氷塊が正面から叩き込まれた。


大量の魔境兵が吹き飛んでいく。


「ジオウ様、すごい……」


魔人兵たちが息を呑む。


しかし。


倒れた敵の数は多い。


そのときだった。


「……おや?」


戦場の右側。


パオが敵陣を見つめていた。



すでに大量の死体が転がっている.


パオは小さく笑った。


「たくさん倒れたヨ」


そして両手を広げる。


「なら……」


「もう一度働いてもらうヨ」


「――死霊操作」


ドクン。


地面が揺れた。


「…………」


倒れていた魔境兵の指が動く。


ピクリ。


ピクリ。


そして――


「…………」


一人。


また一人。


ゆっくりと立ち上がる。


「な……」


魔人兵たちが目を見開く。


「死んだ魔境兵が……」


「立ち上がった!?」


パオは笑った。


「行くヨ」


「お前たちは――」


「魔境軍を押し返すヨ!!」


「――――!!」


死者たちが一斉に走り出す。


ドドドドドドド!!


先ほどまで魔人族へ襲いかかっていた魔境兵が――


今度は同じ魔境軍へ向かっていく。


「な、なんだこいつら!?」


「俺たちの仲間だぞ!?」


「死体が動いている!!」


「うわぁぁぁぁ!!」


混乱。


恐怖。


魔境軍の左側の隊列が大きく崩れる。


そこへ――


「今だ!!」


「押し返せぇぇぇ!!」


ジオウ軍が一斉に前へ出た。


「うおおおおおおお!!」


剣が振られる。


槍が突き出される。


魔法が飛ぶ。


左側の最前線では――


「はぁぁぁっ!!」


ヤルルが敵の攻撃をかわし、短剣を振る。


「そこ!」


ザッ!!


「ぐっ!」


ヨルルが別の敵を蹴り飛ばす。


「まだ来るよ!」


「なら、全部倒すだけ」


二人は再び背中合わせになる。


周囲には敵。


前にも敵。


後ろにも敵。


それでも――


二人は笑っていた。


「ヤルル」


「何?」


「まだいける?」


「当然」


「なら――」


ヨルルが短剣を構える。


「もう一回いこう」


「うん」


二人が同時に走った。


シュンッ!!


その姿が戦場を駆け抜ける。


敵の間をすり抜け。


剣をかわし。


短剣で武器を弾き。


蹴り飛ばし。


また次の敵へ。


その動きは、まるで二人で一人の戦士だった。


一方――


「氷よ……集え」


ジオウの周囲に巨大な魔法陣が展開される。


「これで……押し返す!」


「――アイス・カタストロフ!!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


地面が凍りつく。


巨大な氷の波が戦場を走った。


「うわぁぁぁ!!」


「退けぇぇぇ!!」


魔境兵たちが逃げる。


だが氷は止まらない。


一気に数百メートルを凍らせ――


魔境軍の進軍を大きく押し戻した。


「今だ!!」


ジオウが叫ぶ。


「前進せよ!!」


「おおおおおおおお!!」


魔人族が前へ進む。


反対ではパオの死霊たちがさらに戦っている。


倒れれば――


パオが立ち上がらせる。


そしてまた敵へ向かわせる。


まるで終わることのない軍勢。


しかし――


パオの額には汗が浮かんでいた。


「……ふぅ」


死霊操作は便利な力だ。


だが、動かしている数が多ければ多いほど、魔力の消費も激しくなる。


「まだ……大丈夫ヨ」


パオは自分に言い聞かせる。


遠くではジオウが氷魔法を連発している。


その周囲ではヤルルとヨルルが敵を食い止めている。


そして魔人兵たちも必死に戦っている。


「ここを……」


パオが拳を握る。


「絶対に突破させないヨ」


戦場左側。


魔境軍は圧倒的な数を誇っている。


それでも――


ジオウ軍は退かなかった。


氷が戦場を止める。


双子の短剣が敵を切り崩す。


死者たちが再び立ち上がる。


そして生きている魔人たちが、その背中を押す。


「押せぇぇぇぇぇ!!」


「負けるなぁぁぁ!!」


「魔人国を守れぇぇぇ!!」


怒号が響く。


大地が揺れる。


空には魔法が飛び交う。


戦場左側は――


ギリギリだった。


しかし。


確かに。


魔境軍を――


押し返していた。


そしてジオウは、迫り来る無数の敵を見据えながら槍を握り直す。


「……まだ終わらん」


冷気が再び集まる。


「ここは我々が守る」


「一歩たりとも――」


ジオウの目が鋭く光った。


「通すな!!」


「おおおおおおおおおおおお!!」


戦場左側。


魔人族は――


必死に耐え続けていた。


235話 終。

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