↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』50000pv突破  作者: 異世界文庫 きらっち
天空の塔〜第二次魔族国大戦編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
232/287

231話 神の化身



――魔境。


その中心にそびえ立つ、巨大な城。


外は不気味なほど静かだった。


空は厚い雲に覆われ、地上には黒い霧がゆっくりと流れている。


城の内部。


長い廊下を抜けた先にある、巨大な部屋。


そこには――


二つの巨大な白と黒い水晶が並べられていた。


一つの水晶の中には、


――リナ。


長い眠りについたまま、静かに目を閉じている。


そして、その隣。


もう一つの水晶の中には――


――ルナ。


こちらも眠ったまま、微動だにしない。


まるで二人とも、この世界から切り離されたようだった。


「…………」


その二つの水晶を見つめる、一人の男。


エリオス。


口元には、薄い笑みが浮かんでいた。


「これで……」


ゆっくりと水晶へ近づく。


「やっと一つに……」


その声には、長い年月を待ち続けた者だけが持つ、異様な執着が滲んでいた。


エリオスは水晶の表面に手を添える。


「長かったな」


「…………」


返事はない。


当然だ。


リナもルナも、眠ったままなのだから。


しかし――


部屋の奥には、エリオス以外にも三人の人影が立っていた。


三大天。


アンデルフォン。


ヤーミリオン。


そして――


アイセラ。


三人とも、黙ってエリオスを見ている。


しばらくして。


エリオスが振り返った。


「アイセラ」


「…………」


「もう傷は大丈夫なのか?」


アイセラは自分の身体を一度確認するように視線を落とす。


そして、静かに頷いた。


「ええ」


その声には以前の戦いの疲労がまだ僅かに残っていた。


「白の魔力のおかげで、時間はかかりましたがね」


「…………そうか」


エリオスはそれだけ答えた。


それ以上、傷について尋ねることはなかった。


ただ――


三人を一瞥する。


アンデルフォン。


ヤーミリオン。


アイセラ。


かつて世界を脅かした三大天。


その三人が、今ここに揃っている。


エリオスはゆっくりと立ち上がった。


「ならば……」


コツ。


靴音が静かな部屋に響く。


「始めよう」


エリオスは二つの水晶へ向き直った。


「世界を――」


右手を前へ伸ばす。


「我ら黒の一族で支配することを」


瞬間。


ズズズズズズズズッ――!!


部屋の空気が震えた。


エリオスの周囲から――


大量の黒魔力が噴き出す。


壁が軋む。


床に亀裂が走る。


「…………!」


アンデルフォンが目を細める。


ヤーミリオンも一歩だけ後ろへ下がった。


そしてエリオスは――


二つの水晶へ向けて、両手を広げた。


「さあ……」


黒い魔力が渦を巻く。


「お前たちに――」


「もう一度、力を与えてやろう」


ドォォォォォォォン!!


黒魔力が一気に水晶へ流れ込んだ。


「…………っ!」


水晶の内部が真っ黒に染まる。


リナの身体。


ルナの身体。


その周囲を、黒い魔力が蛇のように這い回っていく。


「…………」


眠ったままの二人。


しかし――


その身体に流れ込んだ黒魔力は、二人が持つ力そのものへ絡みついていく。


エリオスは口元を歪めた。


「そのままでは……」


さらに魔力を注ぎ込む。


「また邪魔をされるかもしれないからな」


黒い光が強くなる。


「上書きしておかないとな」


ニヤリ。


その瞬間――


「――――ッ!!」


ドゴォォォォォォォォン!!!


凄まじい黒い光が部屋を覆った。


視界が完全に消える。


黒。


黒。


黒。


何も見えない。


轟音が響き渡り、城全体が揺れた。


「な、なんだ……!?」


アンデルフォンが腕で顔を覆う。


ヤーミリオンも目を細める。


アイセラはただ黙って、その光の中心を見つめていた。


「…………」


黒い光は、さらに膨張していく。


天井まで届き――


壁を震わせ――


そして。


ピシッ。


小さな音がした。


「…………?」


ピシッ。


ピシピシピシッ――!!


水晶に無数の亀裂が走る。


そして――


「――――砕けろ」


エリオスが呟いた瞬間。


バァァァァァン!!


二つの水晶が同時に砕け散った。


大量の破片が宙を舞う。


キラキラと光を反射しながら落下していく。


やがて――


黒い光が少しずつ消えていった。


静寂。


「…………」


誰も言葉を発さない。


その中心に――


一人の女性が立っていた。


長い髪。


静かな表情。


目は閉じられている。


まるで――


まだ夢の中にいるように。


リナとルナ。


二つに分かれていた存在が――


今、一つの身体となっていた。


「…………」


女性は動かない。


ただ、静かに立っている。


エリオスはゆっくりと歩み寄る。


その顔には――


これまで以上の笑みが浮かんでいた。


「…………」


そして。


目の前に立つ女性を見上げ――


懐かしむように、静かに口を開く。


「久しぶりだな」


一歩、近づく。


「アルテミス」


女性は――


まだ目を覚まさない。


「…………」


エリオスの笑みだけが、深くなる。


――魔境の城。


その最深部で。


かつて世界を守った存在が――


今、黒の魔力に包まれて目覚めようとしていた。


第231話 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。