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『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』50000pv突破  作者: 異世界文庫 きらっち
天空の塔〜第二次魔族国大戦編

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230話 死霊操作


魔王城――。


会議室。


先ほどまでの緊張感が、まだ部屋の中に残っていた。


キラは、ジミーが持ってきた魔力石へ視線を向ける。


白く輝く石。


その中心には、キラが込めたルミナが淡く揺らめいている。


キラはふと思った。


「ジミー」


「は、はいっ!」


ジミーが背筋を伸ばす。


「この魔石……あといくつあるんだ?」


「魔石ですか?」


「うん」


ジミーは少し考える。


そして指を折りながら答えた。


「えっと……あと十個ほどです」


「十個か」


キラは少し考える。


「じゃあ、それ……全部欲しい」


「え?」


ジミーが目を丸くする。


「全部……ですか?」


「うん」


キラは魔石を受け取った。


そして――。


手のひらを開く。


「ルミナ」


パァァァ……!


純白の光が部屋を照らす。


一つ。


二つ。


三つ。


次々と魔石へ光が吸い込まれていく。


「…………」


ジミーは目を輝かせながら、その様子を見つめていた。


十個すべてにルミナが込められる。


「これでいい」


キラは魔石をジミーへ返す。


「はい!」


ジミーは大切そうに抱える。


しかしキラは、その中から二つだけ取り出した。


「これは俺が持っておく」


「え?」


「万が一、兵器の魔石が足りなくなったときの保険」


「…………!」


ジミーの顔が明るくなる。


「保険……!」


「そう」


「ありがとうございます!」


ジミーは二つの魔石を受け取ると――。


ギュッと胸に抱えた。


「これがあれば……!」


「ジミー?」


「絶対に完成させます!」


「もう完成してるんじゃないのか?」


レティシアが横から言う。


「そ、それは……!」


ジミーは少し困った顔をする。


「もっと完璧にするんです!」


「なるほど」


キラは笑った。


「頼んだよ」


「はいっ!」


ジミーは勢いよく頭を下げる。


そして――。


「研究室へ戻ります!」


「もう行くのか?」


ジュダが聞く。


「はい!」


ジミーは扉へ向かって走り出す。


「兵器を動かす準備をしないと!」


バタン!


扉が閉まる。


しばらくして――。


廊下から小さな声が聞こえた。


「超すごい半端ない砲……!」


「待っててくださいねぇぇぇ!」


その声が遠ざかっていく。


ジュダは苦笑した。


「……相変わらずじゃの」



---




ジオウもすぐに動いた。


「ジミーの護衛と作業のために――」


「魔族兵士を百人、預けます」


「百人も?」


キラが驚く。


「はい」


ジオウは頷く。


「兵器の移動、設置、周囲の警備には人手が必要です」


「それに……」


ジオウは窓の外を見る。


「魔境軍がいつ攻めてくるか分かりません」


「一刻も早く準備を整える必要があります」


「そうだな」


キラも頷いた。


「頼む」


ジオウは深く頭を下げる。


「お任せください」



---




その時だった。


パオが立ち上がった。


「……そろそろ」


全員がパオを見る。


パオはニヤッと笑う。


「第二段階といくヨ」


「第二段階?」


レティシアが聞き返す。


パオは答えず、そのまま部屋を出ていく。


「おい、パオ」


ジュダが呼び止める。


だがパオは振り返った。


「時間は無駄にできないヨ」


そして――。


「行ってくるヨ」


王城の外へ向かって歩き出した。


扉が閉まる。


「…………」


キラはパオが出ていった方向を見る。


そしてジュダへ尋ねた。


「パオは……また時間稼ぎに行くのか?」


「そうじゃ」


「たった一人で?」


ジュダは頷いた。


「うむ」


「…………」


キラが眉を寄せる。


するとジュダが口を開いた。


「パオには――」


「死霊踊曲の他に、もう一つスキルがある」


「もう一つ?」


「そうじゃ」


ジュダの目が鋭くなる。


「その名は――」


「死霊操作」


「死霊操作……」


ジュダはゆっくり説明する。


「死霊操作は――」


「死んで間もない生き物を操るスキルじゃ」


「…………!」


キラの表情が変わる。


「つまり……」


「そうじゃ」


ジュダが頷く。


「戦場で倒れた者が多ければ多いほど――」


「パオの戦力は増える」


「…………」


キラは言葉を失った。


ジュダは静かに笑う。


「さて……」


「どれだけ増えるかの」



---




魔族国から離れた荒野。


そこでは――。


未だに激しい戦いが続いていた。


「グオオオオオオオッ!!」


「ギャアアアアッ!!」


アンデットの群れと魔境軍。


両軍は激突を繰り返していた。


地面には無数の死体が転がっている。


倒れたアンデット。


そして――。


倒れた魔境兵。


魔境軍の兵士が剣を振り下ろす。


ザシュッ!!


アンデットの身体が吹き飛ぶ。


「グオッ……!」


アンデットが地面へ倒れる。


その横では魔境兵も別のアンデットに襲われていた。


「囲め!」


「押し返せ!」


「アンデットごときに――!」


魔境軍が次々とアンデットを倒していく。


しかし――。


「…………」


その戦場のさらに後方。


誰にも気づかれない場所に――。


パオが立っていた。


「…………」


彼女は戦場を見渡す。


倒れている数。


数百。


いや――。


それ以上。


パオの口元が――。


ニヤッと歪む。


「……ふふ」


そして、両手を広げた。


「さぁ……」


風が吹き抜ける。


髪が揺れる。


パオの瞳が鋭くなる。


「始めるヨ」


――その瞬間。


パオの身体から魔力が放たれた。


ズゥゥゥゥゥン……!


大地に広がる異様な魔力。


倒れていたアンデットの身体が――。


ピクッ。


「……?」


魔境兵の指が――。


ピクッ。


さらに別の死体が――。


ビクッ。


「…………」


パオは笑う。


「スキル――」


両手を前へ突き出す。


「死霊操作」


――ドンッ!!


魔力が一気に戦場へ広がった。


「…………!」


倒れていたアンデットが起き上がる。


ギギギギ……。


「グ……」


さらに一体。


さらに十体。


百体。


「グオオ……」


「…………」


そして――。


倒れていた魔境兵まで。


「う……」


「……?」


「ガ……」


ゆっくりと立ち上がる。


「な……」


近くにいた魔境軍の兵士が目を見開いた。


「死んだはずの仲間が……!」


「嘘だろ!?」


「立ち上がった!?」


「何が起きている!?」


一人。


二人。


十人。


百人。


戦場に倒れていた者たちが、次々と立ち上がっていく。


アンデットだけではない。


つい先ほどまで魔境軍として戦っていた兵士たちまでもが――死霊となって蘇った。


「グ……」


「ガァ……」


「ウオオオオオ……!」


死者の群れが一斉に顔を上げる。


その視線が――。


魔境軍へ向く。


「…………!」


魔境兵たちの顔から血の気が引く。


「ま、待て……」


「俺たちの仲間だぞ……?」


「違う……」


「もう……あいつらは……」


パオが手を前へ向ける。


「敵は――」


その声に反応するように、死霊たちが動き出す。


ザッ。


ザッ。


ザッ。


一歩。


また一歩。


そして――。


「魔境軍ヨ」


パオが指を振る。


「行くヨ」


「――――!!」


死霊たちが一斉に走り出した。


「来るぞォォォ!!」


「迎え撃て!!」


「仲間を止めろ!!」


「無理だ!! 数が多すぎる!!」


ドドドドドドドドド!!


大地が震える。


死霊となった魔境兵たち。


そしてアンデット。


二つの軍勢が一つとなり、魔境軍へ襲いかかる。


「グオオオオオオオオッ!!」


「うわあああああ!!」


ドォォォォォン!!


戦場の中央で再び大爆発が起こる。


魔境軍の陣形が崩れる。


右。


左。


中央。


あらゆる場所から死霊が押し寄せてくる。


「押し返せ!!」


「数が増えているぞ!!」


「死んだ奴まで敵になっている!!」


「どうなってるんだぁぁぁ!!」


混乱が広がる。


その光景を、遥か後方からパオが見つめていた。


「…………」


そして――。


またニヤッと笑う。


「これなら……」


「もう少しだけ――」


パオは魔族国の方向を見る。


「時間を作れるヨ」


戦場では、死者の軍勢がさらに膨れ上がっていた。


魔境軍は完全に混乱していた。



第230話 終

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