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『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』50000pv突破  作者: 異世界文庫 きらっち
天空の塔〜第二次魔族国大戦編

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228話 死の舞踏会



魔王城から少し離れた場所。


魔族国の巨大な門の前に、一人の女性が立っていた。


――パオ。


その背後には魔族国の兵士たち。


さらにその後ろには、キラたちがいた。


「…………」


キラは遠くを見つめる。


森の向こう。


地面が――揺れている。


ドドドドドドドド……!


「来るぞ」


ジュダが静かに言った。


「…………!」


レティシアが剣に手を添える。


エリスも弓を構える。


セリーナは息を呑む。


そして――。


森の木々が一斉に揺れた。


バキバキバキッ!!


木々をなぎ倒しながら、何かがこちらへ押し寄せてくる。


「……!」


最初に見えたのは、一体。


二体。


十体。


百体。


「嘘……」


レティシアの声が漏れる。


その数は、見る見るうちに増えていった。


腐敗した身体。


砕けた鎧。


白骨化した腕。


赤く光る眼。


そして、生きている者とは思えない不気味な動き。


「アンデット……!」


エリスが呟く。


しかも――。


一体や二体ではない。


数百。


千。


さらにその後ろからも、次々と押し寄せてくる。


「数千はいるな……」


キラが目を細める。


魔境軍によって生み出されたアンデットの群れ。


その数は、魔族国の門を埋め尽くすほどだった。


ズズズズズ……!


地面が揺れる。


アンデットたちは、まるで巨大な津波のように魔族国へ迫ってくる。


「パオ!」


ジュダが叫ぶ。


だが――。


パオは動かない。


ただ、門の前に立っている。


そして。


「…………」


突然――。


パオが腕を上げた。


「?」


キラが首を傾げる。


次の瞬間。


パオの身体が――動いた。


一歩。


クルリ。


さらに一歩。


そして、腕を大きく振る。


まるで踊っているようだった。


「……踊ってる?」


レティシアが呟く。


パオは答えない。


ただ静かに踊り続ける。


足を滑らせる。


身体を回転させる。


腕を左右へ振る。


その動きは奇妙だった。


優雅でありながら、不気味。


戦場には似つかわしくない。


しかし――。


ジュダは知っていた。


「パオは――」


ジュダがゆっくりと口を開く。


「ネクロマンサーじゃ」


「ネクロマンサー……?」


セリーナが聞き返す。


「うむ」


ジュダはパオを見つめる。


「死者を操る者」


「そして、あやつには特殊な力がある」


パオが踊る。


一歩。


二歩。


クルリ。


「スキル――死霊踊曲」


その瞬間。


パオの周囲に、赤黒い魔力が薄く漂い始めた。


「死霊踊曲?」


キラが聞く。


ジュダは頷く。


「アンデットを思いのままに操るスキルじゃ」


「…………!」


キラは迫り来るアンデットを見る。


その動きが――。


ほんの少し変わった。


「アンデットが……」


エリスが目を細める。


「パオの動きに合わせている?」


その通りだった。


パオが右へ動けば、アンデットの一部が右へ動く。


パオが左へ腕を振れば、群れも左へ揺れる。


まるで巨大な舞踏会。


ただし――。


踊っているのは、生きた人間ではない。


数千体の死者。


「すごい……」


セリーナが呟く。


だがジュダは、淡々と言った。


「パオにとって――」


「アンデットは……」


その先を言う前に。


「グオオオオオオオオッ!!」


アンデットの群れが一斉に走り出した。


ドドドドドドドドド!!


数千もの足音。


地面が激しく震える。


「来た!」


レティシアが叫ぶ。


アンデットの群れがパオへ殺到する。


前方のアンデットが跳ぶ。


その後ろからさらに何十体。


さらにその後ろから何百体。


空中にもアンデットが舞う。


「パオ!」


セリーナが叫ぶ。


だが――。


パオは踊りを続けている。


クルッ。


足を踏み出す。


そして――。


ジュダが静かに言った。


「……」


「え?」


「アンデットは――」


ジュダの目が鋭くなる。


「ただの駒じゃ」



---




「グオオオオオッ!!」


一体目がパオへ飛びかかる。


パオは避けない。


二体目。


三体目。


十体。


百体。


数千。


すべてがパオへ襲いかかる。


それでも――。


パオは踊っている。


その場で身体を回転させる。


スッ。


足を止める。


腕を上げる。


「…………」


そして――。


踊りをやめた。


ピタッ。


世界が止まったようだった。


パオの目の前。


今にも襲いかかろうとしていた数千のアンデットが――。


一斉に停止した。


「…………!」


キラが目を見開く。


空中へ飛び上がっていたアンデットさえ、その場で止まっている。


「え……?」


レティシアが呆然とする。


「全部……止まった?」


パオは静かに前を見る。


そして――。


「反転ヨ」


その一言。


アンデットたちの身体が――。


ギギギギギ……。


ゆっくりと回転する。


「…………!」


全員が一斉に振り返った。


パオが指を前へ向ける。


「進軍ヨ」


ドンッ!!


数千のアンデットが、一斉に走り出した。


「…………!?」


キラたちは言葉を失う。


先ほどまで魔族国へ向かっていた死者の軍勢が――。


今度は逆方向へ進んでいく。


向かう先は――。


魔境軍。


パオが叫ぶ。


「敵は――」


一瞬、風が吹き抜けた。


「魔境軍ヨ」


パオの声が響き渡る。


「殲滅せヨ!!」


「――――ッ!!」


数千のアンデットが一斉に雄叫びを上げた。


「グオオオオオオオオオオオオッ!!」


ドドドドドドドドドドドドドド!!


大地を揺らしながら、死者の軍勢が進んでいく。


魔族国へ迫っていたアンデットたちが――。


今度は魔境軍へ襲いかかる。


遠くから、魔境軍の姿が見えた。


そして――。


両軍が激突する。


ドォォォォォォン!!


アンデットが魔境軍へ飛び込む。


魔境軍の兵士が武器を振る。


アンデットが吹き飛ぶ。


しかし、その後ろからさらに別のアンデットが襲いかかる。


「グオオオッ!」


「ギャアアアッ!」


「ウオオオオッ!」


無数の死者と魔境軍がぶつかり合う。


その光景を、キラたちは呆然と見つめていた。


「……これが」


キラが呟く。


「ネクロマンサー……」


ジュダが笑う。


「そうじゃ」


そして――。


パオがゆっくりとこちらへ歩いてくる。


戦場の轟音を背に。


まるで何事もなかったかのように。


「…………」


キラの前まで歩いてくると、パオは立ち止まった。


そして――。


「これなら……」


パオは小さく笑う。


「かなりの時間稼ぎになるヨ」


そう言って――。


パオは指を二本立てた。


ピース。


「…………」


キラは思わず苦笑する。


レティシアは目を輝かせる。


「すご……!」


エリスも驚きを隠せない。


セリーナは、


「パオさん……すごいです……」


と呟いた。


ジュダは腕を組みながら、満足そうに笑った。


「言ったじゃろう」


「パオに任せておけば大丈夫じゃとな」


遠くでは今も、死者の軍勢と魔境軍の戦いが続いている。


轟音。


怒号。


大地を揺らす衝撃。


その全てを背に――。


パオはいつもの笑顔まま、ピースをしていた。


第228話 終

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