225話 小さな町でプレゼント
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マニル連合国での依頼を終えたキラたちは、次の目的地である魔人族の国へ向かっていた。
目的地は――魔人族の国。
そして、その先にあるのが、魔境国デダルク。
世界を脅かしている魔境軍を止めるため、キラたちは歩みを止めるわけにはいかなかった。
しかし、長い旅になる。
その途中――。
「ねえキラ」
レティシアが前方を指差した。
「あそこに町があるよ」
「本当だな」
マニルを出発してしばらく進んだ先。
街道沿いに、小さな町が見えてきた。
大きな城壁があるわけでもない。
立派な建物が並んでいるわけでもない。
それでも、旅人が立ち寄るにはちょうどいい規模の町だった。
「今日はここに寄っていこうか」
キラがそう言うと、
「賛成!」
レティシアが元気よく手を上げる。
「私もです」
エリスも頷く。
セリーナは、
「お、お宿……ご飯……」
すでに宿と食事のことを考えていた。
ジュダはそんなセリーナを見て、小さくため息をつく。
「相変わらずだな……」
こうして五人は、町へ入っていった。
---
町へ入ると、まず冒険者ギルドを探す。
「ここだな」
小さな建物だった。
キラたちは中へ入る。
すると受付嬢が笑顔で声をかけてきた。
「いらっしゃいませ! 冒険者の方ですね?」
「ああ。ちょっと宿を探していて――」
「かしこまりました。この町でしたら――」
受付嬢が宿をいくつか紹介しようとした、その時。
「そうだ。念のためギルド証を」
キラが冒険者ギルド証を差し出した。
受付嬢がそれを確認する。
そして――。
「…………え?」
動きが止まった。
「……S……ランク?」
「はい」
「Sランク……冒険者……?」
受付嬢はキラの顔を見る。
そして後ろにいるレティシア、エリス、セリーナ、ジュダを見る。
「ま、まさか……皆さん……?」
レティシアが笑う。
「そうだよ!」
四人もギルド証を見せる。
受付嬢の顔がさらに固まった。
「全員……Sランク……」
「まあ、そうなるね」
キラが苦笑する。
すると受付嬢は突然、
「お、お待ちください!」
奥へ走っていった。
「なんだ?」
「さあ?」
しばらくすると、受付嬢が戻ってきた。
「実は……ちょうど皆さんにお願いしたい依頼があるんです!」
---
受付嬢が依頼書を取り出した。
「町の近くに、最近グリーンオーガが出没しているんです」
「グリーンオーガ?」
エリスが依頼書を見る。
「はい。数日前から街道付近に現れるようになりまして……」
グリーンオーガ。
巨大な身体を持つ鬼型の魔物。
この町ではかなり危険な存在らしい。
「なつかしいな、何ランクだっけ?」
キラが尋ねる。
「Bランク相当です。ただ……」
受付嬢は困った顔をする。
「この町にはBランク以上の冒険者がほとんどいなくて……」
レティシアがニヤリと笑った。
「じゃあ、私たちがやろうよ」
エリスも頷く。
「私も行きたいです」
「ん?」
キラが二人を見る。
レティシアは腰の双剣に手を添えた。
「新しく覚えた力、もっと実戦で使ってみたいんだよね」
「私もです」
エリスも精霊弓王の力を思い浮かべる。
「新しい戦い方を試したいです」
キラは少し考えた。
「分かった。ただし無理はするなよ」
「任せて!」
「はい」
二人はそのままギルドを出ていった。
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残った三人。
するとセリーナがジュダの隣へ移動した。
「ジュダさん……」
「なんだ?」
二人は何やら小声で話し始めた。
「…………」
キラは首を傾げる。
「何話してるんだ?」
「な、なんでもない!」
ジュダが突然顔を赤くした。
「?」
セリーナも何かを決意したような表情をする。
そして――。
「私に任せてください!」
「なっ――!?」
ジュダが慌ててセリーナの口を塞いだ。
「~~~~っ!」
セリーナは口を塞がれたまま何かを訴えている。
キラはますます首を傾げた。
「……何してるんだ?」
「ゴホン!」
ジュダはセリーナから手を離す。
そして何事もなかったかのように胸を張った。
「……では、行ってくるとしよう」
「え?」
ジュダはセリーナの手を取った。
「ちょっと買い物だ」
「はい!」
セリーナは嬉しそうに敬礼する。
「行ってくる!」
「……お、おう」
二人は手をつないだまま、町へ出ていった。
「…………」
一人残されたキラ。
「……なんだったんだ?」
---
宿の部屋に入ったキラは、一人で椅子に座った。
「久しぶりだな……一人になるの」
普段なら、レティシアが騒いでいる。
エリスが静かに話している。
セリーナが何かを食べている。
そしてジュダがセリーナやレティシアに呆れている。
そんな光景が当たり前になっていた。
「さて……」
キラは手を開いた。
「少し確認するか」
頭の中に、これまで覚えてきた魔法が浮かび上がる。
炎。
水。
風。
土。
雷。
光。
闇。
そしてルミナ。
さらに重力、空間魔法。
「……かなり増えたな」
キラは苦笑する。
だが――。
「まだ作れる」
キラは新しい魔法の構築を始めた。
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まず、炎の魔法。
アポカリプス・フレイム。
そこへ風を重ねる。
インフェルノ・テンペスト。
さらに重力を加える。
「……圧縮」
炎と風が渦を巻きながら一点へ集まり、そこへ強烈な重力が加わる。
キラはそこへルミナを混ぜた。
「完成」
ルミナ・グラビティ・インフェルノ
巨大な炎の渦を重力で圧縮し、さらにルミナによって内部から浄化・破壊する複合魔法。
「これは強いな」
しかし、キラはまだ止めない。
次に水。
アブソリュート・ゼロ。
そこへ雷を加える。
ヴォルティック・アクア。
さらに風を重ねる。
「氷と雷……風で加速させる」
巨大な氷の渦の内部を雷が走り回る。
そして――ルミナ。
ルミナ・アブソリュート・ヴォルテックス
超低温の氷結領域と雷撃、竜巻を同時に発生させ、範囲内すべてを凍結させながら雷で破壊する魔法。
「これもかなり使える」
さらにキラは土と雷を組み合わせる。
テラ・ボルテックス。
そこへ重力を加える。
巨大な岩石が浮かび上がり、猛烈な速度で回転を始める。
「……もっと圧縮して」
岩石が一点に集まり、超高密度の巨大な球体へ変化。
そこへ雷が走る。
そして最後にルミナ。
ルミナ・テラ・グラビティ
超高密度の大地を重力で圧縮し、雷撃とルミナを纏わせて敵へ叩きつける破壊魔法。
「…………」
キラは少し考える。
「最後に一つ」
今度は光と闇。
エクリプス・レゾナンス。
そこへ無属性の空間魔法を組み合わせる。
「光と闇を……空間そのものに固定する」
空間に巨大な光輪と黒い輪が生まれる。
二つの力が互いを打ち消すことなく、むしろ激しく共鳴していく。
そこへルミナを加える。
ルミナ・エクリプス・オブリビオン
光と闇の共鳴によって空間そのものを歪ませ、対象を逃げ場のない領域へ閉じ込め、内部から強烈な浄化と破壊を同時に行う。
「……これならSランク相手でも試せそうだ」
キラは満足そうに笑った。
「よし」
その時だった。
「ただいまー!」
「戻りました!」
扉が開いた。
---
セリーナとジュダが戻ってきた。
二人の手には袋がたくさんある。
「おかえり」
「キラさん!」
セリーナが袋を持ち上げる。
「買ってきました!」
「何を?」
「これです!」
袋から出てきたのは――五人分の腕輪だった。
それぞれ少しずつデザインが違う。
「皆さんでお揃いです!」
「へえ……」
キラが腕輪を見る。
「いいな」
するとジュダが一つを取り出した。
「……これ」
「俺に?」
「勘違いするな!」
ジュダは顔を赤くする。
「別にお前のために選んだわけではない! 全員分買っただけだ!」
「そうか」
「そ、それに……」
ジュダは少し視線を逸らす。
「お前には……その……似合うと思っただけだ」
「ありがとう」
「…………っ!」
ジュダの顔がさらに赤くなる。
「礼などいらん!」
その横でセリーナが胸を張った。
「私が選びました!」
「セリーナが?」
「はい!」
「じゃあセリーナのおかげだな」
「ふふん!」
セリーナはものすごく得意げだった。
「私に任せてください!」
「何を?」
「…………」
セリーナは黙った。
ジュダが小声で、
「余計なことを言うな」
「はい!」
---
そこへ――。
「ただいまー!」
「戻りました」
レティシアとエリスも帰ってきた。
「おかえり。どうだった?」
キラが聞く。
「すごかったよ!」
レティシアが興奮気味に話し始めた。
「分身と瞬間機動を組み合わせるとさ、相手から見たら本当に何人もいるみたいになるんだよ!」
「グリーンオーガは?」
「もちろん倒した!」
エリスも続ける。
「私は精霊弓王で魔力の流れを変えながら戦ってみました」
「かなり上手くいったね!」
「はい!」
五人がそれぞれ今日の戦いについて話している。
その光景を見て、キラはふと思った。
――やっぱり、この仲間たちといると楽しい。
そして――。
「よし!」
キラが立ち上がった。
「新魔法、試してくる!」
「今から!?」
レティシアが驚く。
「ああ。ちょうどいい依頼がないか探してくる」
「気をつけてくださいね」
エリスが笑う。
「任せろ」
キラは一人、ギルドへ向かった。
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ギルドに到着したキラは、掲示板を見る。
「グリーンオーガ……」
さっきの依頼はすでに討伐済みになっていた。
さらに奥へ目を向ける。
すると――。
「ん?」
一枚の依頼書が目に入った。
【Aランク】ブルーオーガ討伐
「ブルーオーガ……珍しいな」
通常のオーガとは違い、青い皮膚を持つ特殊個体。
身体能力、耐久力、魔力。
すべてが通常のオーガを大きく上回る。
「ちょうどいい」
キラは依頼書を受付へ持っていく。
「これ、受ける」
受付嬢は驚いた。
「お一人でですか?」
「うん」
「Aランクですよ?」
「大丈夫」
キラは笑った。
「試したい魔法があるんだ」
---
町から少し離れた森。
「……いた」
木々の向こう。
巨大な青い魔物がいた。
身長は5メートルを超えている。
太い腕。
巨大な棍棒。
全身から青い魔力が漏れている。
ブルーオーガがキラに気づいた。
「グォォォォォォッ!!」
地面を蹴る。
ドンッ!!
一瞬で距離を詰めてきた。
「速いな」
キラは剣を抜く。
ブルーオーガが棍棒を振り下ろす。
ドォン!!
地面が砕ける。
キラは横へ跳んだ。
「まずはこれ」
右手に炎。
左手に風。
二つの魔力を重ねる。
「――インフェルノ・テンペスト」
巨大な炎の竜巻が発生する。
ゴォォォォォォッ!!
ブルーオーガが炎の中へ突っ込んだ。
しかし――。
「グォォォッ!」
炎を突破してくる。
「なるほど」
キラは笑った。
「普通の複合魔法じゃ足りないか」
ならば、新魔法。
「――ルミナ・グラビティ・インフェルノ」
瞬間。
ブルーオーガの足元の地面が揺れた。
「グ……?」
重力が増幅する。
ズンッ!!
巨体が地面へ引き寄せられた。
そこへ巨大な炎の渦が発生。
ゴォォォォォォォォ!!
炎がブルーオーガの身体を包む。
「グオオオオオッ!!」
必死に抜け出そうとする。
だが――。
重力によって身体が動かない。
さらに炎の中心へルミナの光が走った。
「これで終わりだ」
白い光が炎の渦を貫く。
ドォォォォォン!!
巨大な爆発。
森の木々が大きく揺れる。
しばらくして――。
炎が消えた。
ブルーオーガは、その場に倒れていた。
「……成功」
キラは次の魔法を試す。
「もう一つ」
今度は水と雷。
「――ルミナ・アブソリュート・ヴォルテックス」
ゴォォォォォッ!!
凍てつく竜巻が発生する。
内部では青白い雷が何本も走り回る。
ブルーオーガの身体が一瞬で凍りついた。
そして――。
バキィィィン!!
氷が砕ける。
同時に雷撃が炸裂。
ドォン!!
ブルーオーガは完全に動かなくなった。
「……こっちも問題ない」
キラは最後にもう一つ。
「これも試してみるか」
巨大な岩石が周囲から浮かび上がる。
「――ルミナ・テラ・グラビティ」
岩石が一点へ集まり、巨大な球体になる。
ズズズズズ……。
圧縮。
圧縮。
さらに圧縮。
そして――。
ドォォォォォォン!!
大地そのものが吹き飛ぶような衝撃。
ブルーオーガは完全に消滅した。
キラは剣を収める。
「……強すぎるな」
新魔法の威力を確認したキラは、そのまま町へ戻った。
---
◆ 翌朝
翌朝。
朝食を終えた五人は、町の門の前に集まっていた。
「じゃあ、行こう!」
レティシアが元気よく言う。
「次は魔人族の国ですね」
エリスが前を見る。
セリーナは腕輪を眺めながら、
「これ、かわいいです……」
ジュダは腕輪を見て、少しだけ笑う。
「……まあ、悪くないな」
キラも新しくもらった腕輪を見る。
「よし」
五人は歩き始めた。
目指すは――魔人族の国。
その先に待つのは、
魔境国デダルク。
そして、世界の運命を揺るがす戦い。
キラたちは再び歩き出す。
第225話 終




