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『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』30000pv突破  作者: きらっち
青年期

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197話 魔王ジュダの本気。



――王都アーク。


壊滅した街では、まだ復興作業が続いていた。


王城には、怪我をした人々が集まり、セリーナや回復魔法を使える者たちが治療を続けている。


食料も配られ、少しずつではあるが、人々の顔には落ち着きが戻り始めていた。


その中で、キラは一人、王城の廊下を歩いていた。


隣にはジュダ。


その後ろにはレティシア、エリス、セリーナがいる。


「キラ、どこへ行くの?」


レティシアが尋ねる。


「ギルド跡だ」


「ギルド?」


「ああ」


キラは真剣な表情で答える。


「ルナを探す」


「……そうだね」


エリスも表情を引き締める。


「アンデルフォンが狙っていたのがルナなら、ギルドにいた可能性は高い」


「うん」


キラは頷く。


そしてジュダを見る。


「ジュダ」


「なんだ?」


「ここを任せてもいいか?」


ジュダは腕を組む。


「もちろんだ」


「街の人たちもいる。何かあったら頼む」


「任せろ」


ジュダは堂々と言った。


「この国と同盟を結んだ以上、人間族の民とて我々の守るべき者だ」


「助かる」


キラは笑う。


「じゃあ、行ってくる」


「気をつけろ、キラ」


「ああ」


キラはレティシアたちと共に、ギルド跡へ向かった。



---


王都の大通りを進む。


そこかしこに、戦いの爪痕が残っている。


崩れた建物。


ひび割れた石畳。


焼け焦げた壁。


人々が瓦礫を片付けている。


キラはそれらを見ながら、黙々と歩いた。


やがて――。


「……ここだ」


かつて冒険者ギルドがあった場所へ到着する。


そこには、今も何もなかった。


大きな建物があったはずの場所。


受付カウンターがあった場所。


冒険者たちが酒を飲みながら話していた場所。


全てが消えている。


「…………」


キラが拳を握る。


その時だった。


「……キラさん?」


背後から声がした。


「!」


キラが振り返る。


そこには、一人の女性が立っていた。


冒険者ギルドの受付嬢だった。


服は汚れている。


腕には包帯が巻かれている。


顔にも小さな傷がある。


それでも――。


キラの顔を見ると、安心したような表情を浮かべた。


「キラさん……!」


「無事だったのか?」


キラが駆け寄る。


「はい……」


受付嬢は頷いた。


だが、その身体は震えている。


「何があった?」


キラは慎重に尋ねる。


「アンデルフォンが……ここを襲ったのか?」


「…………」


受付嬢はしばらく答えられなかった。


そして――。


震える声で話し始める。


「……いきなりでした」


「いきなり?」


「はい……」


「街の外から……突然、大きな爆音が聞こえて」


「ドォォォォォン!!」


「……という音がして」


受付嬢は目を閉じる。


「あまりにも大きな音だったので、ギルドにいた冒険者たちが一斉に外を見ました」


「すると……」


「一人の男が……」


「空から降りてきたんです」


キラの目が鋭くなる。


「男……」


「はい」


「黒い服を着ていて……」


「とても……楽しそうに笑っていました」


「…………」


受付嬢は震える手を握りしめる。


「男はそのままギルドの中へ入ってきました」


「そして……」


「突然、冒険者たちを……」


受付嬢の顔が青ざめる。


「次々と薙ぎ払っていったんです」


「!」


レティシアが眉をひそめる。


「どれくらい強かったの?」


「……全く歯が立ちませんでした」


「剣を持った冒険者も」


「魔法を使った冒険者も」


「誰一人……」


受付嬢は唇を噛む。


「まともに戦えていませんでした」


「そして、その男は……」


受付嬢は顔を上げる。


「こう言ったんです」


「――ルナを出せ、と」


キラの表情が変わった。


「……やっぱり」


「はい」


受付嬢は頷く。


「その時、ギルドマスターがやってきました」


「ギルドマスター……」


「ギルドマスターは冒険者たちに下がるよう言って、一人で男と戦いました」


「…………」


「でも……」


受付嬢は目を伏せる。


「一方的でした」


「ギルドマスターの攻撃は、ほとんど通りませんでした」


「男は……」


「まるで遊んでいるようでした」


キラの拳が強く握られる。


「その後、騎士団長も駆けつけました」


「街にいた高ランク冒険者たちも次々にギルドへ集まって……」


「みんなで戦いました」


「それでも……」


「全員……負けてしまいました」


「…………」


レティシアが俯く。


エリスも目を閉じる。


セリーナは胸元で手を握った。


「そして……」


受付嬢は震える声で続けた。


「私たちは、ギルドの裏口から逃げました」


「外へ出て……」


「その直後です」


「――ドォォォォォン!!」


「ギルドが……」


「爆発しました」


キラが目を見開く。


「…………」


「私たちは振り返りました」


「すると――」


受付嬢は空を指す。


「その男が……」


「空に浮かんでいました」


「そして……」


「腕の中に――」


受付嬢の声が震える。


「ルナさんを抱えていました」


「……!」


キラたち全員が息を呑んだ。


「ルナ……」


「はい」


「ルナは……どういう状態だった?」


「……意識がありませんでした」


キラの表情が険しくなる。


「男は……笑っていました」


「そして……」


「そのまま空へ飛んで……」


「どこかへ消えてしまいました」


「…………」


しばらく誰も口を開かなかった。


やがてキラが低い声で呟く。


「……アンデルフォン」


間違いない。


エリオスの指示を受けて、ルナを奪った。


「ルナ……」


キラは空を見上げる。


「絶対に取り戻す」



---


キラたちは受付嬢を連れて王城へ戻った。


王城の一室。


そこにはジュダ、レティシア、エリス、セリーナが集まっていた。


キラはギルドで聞いた全てを話した。


「アンデルフォンは、最初からルナを狙っていた」


「ギルドマスターも……」


レティシアが悔しそうに拳を握る。


「騎士団長も、高ランク冒険者も……」


エリスが目を伏せる。


「ルナは連れ去られた……」


セリーナも悲しそうに俯いた。


「…………」


ジュダは黙って話を聞いていた。


やがて――。


「……そうか」


ジュダは立ち上がる。


「つまり奴らの目的は、最初からルナだったのだな」


「ああ」


キラが答える。


「だから魔人族への襲撃が止まったんだ」


「我々から離れた隙に、アークを襲った」


ジュダは目を細める。


「なるほど」


「敵は戦力を分散させたかったわけか」


キラは頷く。


「そして俺たちがここへ戻ってきた」


「だが――」


ジュダが何か言おうとした、その時。


「キラ!!」


「!」


部屋の扉が勢いよく開いた。


「キラ!!」


飛び込んできたのは――。


トーマだった。


その後ろにはミナとカイル。


「どうした!?」


キラが立ち上がる。


トーマは息を切らしながら、外を指差した。


「奴らが……!」


「また来たぞ!!」


「何!?」


「北門だ!」


「北門に――!」


トーマが叫ぶ。


「魔境軍が来てる!!」


「…………」


キラの表情が変わる。


「数は?」


「分からない!」


トーマは首を振る。


「でも……」


「とんでもない数だ!」



「…………」


キラが立ち上がる。


その時――。


「キラよ」


声がした。


振り返ると、ジュダが立っている。


その顔には――。


先ほどまでの穏やかな表情はなかった。


魔王の顔。


「我に――」


ジュダはキラを見る。


「ルミナを付与するがよい」


「ジュダ?」


「私一人で十分だ」


「…………」


キラはジュダを見る。


「本当に大丈夫か?」


ジュダはニヤリと笑った。


「もちろんだ」


「何度も言わせるな」


「我は――」


ジュダの赤い瞳が鋭く輝く。


「魔王だぞ?」


「…………」


キラは少し笑った。


「分かった」


右手をジュダへ向ける。


「なら、これを使ってくれ」


白い光がキラの手から溢れ出す。


「――ルミナ」


光がジュダの身体へと入っていく。


「…………」


ジュダの身体が白い光に包まれる。


赤黒い魔力と、純白の光。


本来なら相反するはずの二つの力が、ジュダの身体の中で一つになる。


「……なるほど」


ジュダが拳を握る。


「これが……キラのルミナか」


「黒い力には効く」


「分かっている」


ジュダは笑った。


「ならば――」


窓の外を見る。


「行ってくる」


「ジュダ!」


キラが呼ぶ。


ジュダが振り返る。


「死ぬなよ」


「……ふっ」


ジュダは少しだけ頬を赤くする。


「誰に言っている?」


「魔王」


「そうだ」


ジュダは胸を張った。


「ならば皆は、そこで待っていろ」


「すぐに戻る」


そう言って――。


ジュダは窓から飛び出した。


「ええ!?」


レティシアが窓へ駆け寄る。


「ジュダ、普通に飛んでった!」


エリスも外を見る。


「……すごい速度」


セリーナは心配そうに手を握る。


「大丈夫でしょうか……」


キラは静かに頷いた。


「大丈夫だ」


「ジュダなら」



---


――北門。


ズズズズズ……。


大地が揺れていた。


遠くから地鳴りが聞こえる。


そして――。


地平線を埋め尽くすほどの軍勢が姿を現した。


「…………」


北門を守る兵士たちが息を呑む。


魔境軍。


その数は――。


かつて魔人族の国を襲った軍勢とほぼ同等。


いや。


それを上回っているようにも見えた。


「こんな数……」


「無理だ……」


「まだ戦えるのか……?」


兵士たちの顔に恐怖が浮かぶ。


その時。


――シュンッ!


一人の影が北門の前へ降り立った。


「…………」


赤黒い髪。


赤い瞳。


悪魔の角。


赤い爪。


そして――。


全身から放たれる圧倒的な魔力。


ジュダだった。


「魔王様……!」


魔人族兵士が驚く。


ジュダは振り返らず、魔境軍を見つめる。


「ふむ……」


「随分と集めたものだ」


魔境軍の先頭にいる魔物たちが、一斉にジュダへ向けて武器を構える。


「…………」


ジュダは笑った。


「数で我を倒すつもりか?」


赤い瞳が輝く。


そして――。


ジュダはゆっくりと首を鳴らした。


「さて……」


右手を握る。


「久しぶりだな――」


白い光。


そして赤黒い魔力。


二つの力がジュダの身体から噴き出す。


「本当に久しぶりだ」


ジュダの口元が大きく上がる。


「本気を出すかのぅ」


――ドンッ!!


瞬間。


ジュダの魔力が爆発的に膨れ上がった。


空気が震える。


大地が揺れる。


北門の兵士たちが思わず後ずさる。


「こ、これが……」


「魔王……」


ジュダはゆっくりと右手を前へ伸ばした。


「来い」


「我が国を――」


「そして我のキラを傷つけた罪」


「その身で償え」


魔境軍が一斉に走り出す。


地面を埋め尽くすほどの大軍。


その先頭がジュダへ迫る。


ジュダは動かない。


ただ――。


笑っている。


「……遅い」


次の瞬間。


ジュダの姿が消えた。


「――ッ!?」


一瞬。


魔境軍の中央へジュダが現れる。


「まずは――」


赤黒い魔力と白い光が、両手に集まる。


「これだ」


――ドゴォォォォォン!!


巨大な衝撃波が発生した。


先頭の魔境軍が一斉に吹き飛ぶ。


数十。


数百。


それでも軍勢は止まらない。


「まだ来るか!」


ジュダは笑う。


その瞳には、一切の恐怖がなかった。


むしろ――。


本気で戦えることを楽しんでいるようだった。


「ならば――」


ジュダの魔力がさらに膨れ上がる。


北門の上からその姿を見ていた兵士たちは、言葉を失う。


「魔王が……」


「一人で……」


「魔境軍を相手にしている……!」


戦場を覆うほどの魔力。


その中心で、ジュダは一人立っていた。


「さあ――」


「次は誰だ?」


魔王ジュダ。


その本気の戦いが――。


今、始まった。


第197話 終

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