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『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』30000pv突破  作者: きらっち
青年期

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190話 魔王参上



 魔人族の国。


 その国境付近では、いまだ激しい戦闘が続いていた。


 魔境軍は、まるで巨大な津波のように魔人族の領土へ押し寄せている。


 魔人族の兵士たちは必死に防衛線を築いていたが、敵の数はあまりにも多い。


「押し返せ!」


「絶対に国へ入れるな!」


「魔境軍を止めろ!!」


 怒号が飛び交う。


 剣と剣がぶつかり、魔法が飛び交い、大地が何度も揺れる。


 そんな戦場の中心で――


 キラは一体の魔境兵を斬り伏せた。


「……まだ来るか!」


 振り返った瞬間、別の敵が迫ってくる。


 キラは剣で攻撃を受け流し、そのまま敵の懐へ入り込んだ。


「そこだ!」


 斬撃。


 同時に左手を突き出す。


「ラグナ・ボルト!」


 ――バリィィィン!!


 雷撃が敵を貫く。


 さらに後方の敵まで巻き込んで吹き飛ばした。


「……数が多すぎるな」


 キラは周囲を見渡した。


 倒しても、倒しても、敵が現れる。


 これではきりがない。


 もっと一気に敵の数を減らせる魔法が必要だった。


「……グラビティ」


 キラはふと、自分が使える重力魔法を思い出した。


 重力によって敵の動きを封じる。


 それだけでも十分強力だ。


 だが――


「これを、他の魔法と融合させたら……」


 キラの頭の中で、魔法の構成が組み上がっていく。


 炎。


 重力。


 そして風。


「炎を重力で圧縮する……」


 キラの周囲に炎が生まれる。


「さらに風で回転させる」


 炎が渦を巻く。


 普通なら外へ広がるはずの炎が、重力によって中心へと引き寄せられていく。


 どんどん圧縮される。


「これなら……」


 キラは右手を前へ向けた。


「いける!」


 巨大な炎の球体が敵陣へ飛んでいく。


「新魔法――」


 キラは叫んだ。


「グラビティ・インフェルノ!!」


 ――ドォォォォォォン!!


 着弾。


 瞬間、炎が爆発する。


 だが、その炎は普通の爆発ではなかった。


 重力によって敵を中心へ引き寄せる。


「な、なんだ!?」


「身体が動かない!」


「引っ張られる……!」


 魔境兵たちが次々と地面へ引きずられる。


 そして中心へ集められた敵を――


 圧縮された炎が一気に飲み込んだ。


 ――ゴゴゴゴゴゴゴッ!!


 巨大な炎の渦が戦場を駆け抜ける。


 敵の一団がまとめて吹き飛んだ。


「すげえ……」


「一気に敵が減ったぞ!」


 魔人族兵士たちから驚きの声が上がる。


 キラは小さく息を吐いた。


「……よし」


 新しい魔法。


 成功だ。


 だが、まだ終わらない。


「キラ!」


 横から声が飛んできた。


 レティシアだった。


「私も行くよ!」


 双剣を握り締め、魔境軍へ突っ込んでいく。


 そして――


「分身!」


 レティシアの身体が光に包まれる。


 次の瞬間。


 彼女の隣に、もう一人のレティシアが現れた。


「よし!」


「行くよ!」


 二人が同時に走り出す。


「……本当に二人になったな」


 キラが呟く。


 二人のレティシアは、それぞれ別方向へ散っていった。


「こっちは任せて!」


「そっちはお願い!」


 一人が敵の攻撃をかわす。


 その背後から、もう一人が斬り込む。


「双月斬!」


「双牙連閃!」


 双剣が次々と閃く。


 魔境兵が反撃する。


 しかし――


「遅い!」


 レティシアが紙一重でかわす。


 もう一人のレティシアが背後から斬り込む。


「こっちだよ!」


 敵が振り返る。


 だが、すでに反対側のレティシアがいる。


「残念!」


 斬撃。


 魔境兵が倒れる。


「すごい……」


 近くで戦っていた魔人族兵士が目を見張る。


「同じ剣士が二人いるぞ!」


「しかも息がぴったりだ!」


 二人のレティシアは戦場を縦横無尽に駆け回る。


 片方が敵を引きつければ、もう片方が斬る。


 一人が攻撃を受ければ、もう一人が援護する。


「無影連斬!」


「烈風双刃!」


 二人の斬撃が交差する。


 魔境軍の前線が崩れていく。


「まだまだ!」


 レティシアは楽しそうに叫んだ。


「もっと来なよ!」



---


 そして少し離れた場所。


 エリスは精霊弓王を構えていた。


「……」


 戦場を見渡す。


 敵。


 味方。


 負傷者。


 進軍ルート。


 その全てを冷静に見極める。


 そして――


「ここです」


 弓を引き絞る。


「アルテミス・レイン」


 ――ヒュンッ!!


 一筋の矢が空へ飛ぶ。


 そして空中で無数に分裂した。


 ――ザザザザザザザッ!!


 無数の矢が降り注ぐ。


「ぐああああっ!」


「避けろ!」


 魔境軍の隊列が一気に崩れる。


 エリスは間髪入れずに次の矢を放つ。


「次」


 ――ヒュンッ!


 再び矢の雨。


 魔境軍の進軍速度が明らかに落ちていく。


「今だ!」


 魔人族兵士たちが一斉に前へ出る。


「押し返せ!!」


「行けえええええっ!!」


 魔人族軍が反撃を始めた。



---


 一方、後方。


「次の方!」


 セリーナは負傷した魔人族兵士の治療を続けていた。


「大丈夫ですよ」


 杖をかざす。


「ヒール」


 聖なる光が傷を包み込む。


「……傷が治っていく!」


「もう動けますか?」


「ああ!」


「では、無理のない範囲で前線へ!」


「ありがとう!」


 兵士が立ち上がる。


「次の方!」


「こっちです!」


「足を怪我しています!」


「わかりました!」


 セリーナは次々と治療していく。


 治った兵士は戦場へ戻る。


 そしてまた、新しい負傷者が運ばれてくる。


「大丈夫です!」


「まだ戦えます!」


「あなたも行ってください!」


 セリーナは懸命に兵士たちを送り出していった。


 前線を支える。


 それが今のセリーナの役割だった。


「……みんな、頑張ってください」


 セリーナは戦場を見る。


 キラが戦っている。


 レティシアが二人になって敵を斬っている。


 エリスが空から矢を降らせている。


「私も……頑張らないと」


 杖を握り直す。



---


 そして――


 戦況が少しずつ変わり始めた。


 魔境軍の数が減っている。


 魔人族軍が押し返し始めている。


「押してるぞ!」


「魔境軍が下がっている!」


「勝てるぞ!!」


 歓声が上がる。


 キラも一度、息を整えた。


「……かなり減ったな」


 レティシアが二人とも戻ってくる。


「キラ!」


「こっちは結構倒したよ!」


「そっちの私、敵を倒しすぎ!」


「そっちこそ!」


「……自分同士で喧嘩するなよ」


 キラが呆れる。


 エリスも合流する。


「敵の数はかなり減りました」


「なら、あと少しだな」


 その瞬間だった。


 ――ズン。


 地面が揺れた。


「……?」


 キラが顔を上げる。


 ――ズン。


 もう一度。


 今度ははっきりと地面が揺れた。


「何……?」


 エリスが戦場の奥を見る。


「……誰か来ます」


 魔境軍の兵士たちが、左右へと退いていく。


 その中央から――


 巨大な影が現れた。


 ドスン。


 ドスン。


 巨大な足音。


 現れたのは、巨大な魔人のような姿をした怪物だった。


 オーガのように巨大な身体。


 異常なほど発達した筋肉。


 その顔には、サイクロプスを思わせる巨大な一つ目。


 手には巨大な棍棒。


 全身から凄まじい魔力が漏れ出している。


「……魔境軍」


 キラが呟く。


 魔人族兵士の一人が震えた。


「魔境将軍……グングルだ……!」


 グングル。


 魔境軍の将軍。


 魔人族の国を侵略するため、魔境から送り込まれた強敵だった。


 グングルは巨大な一つ目でキラたちを見る。


「貴様らか……」


 低い声。


「我が軍をここまで削ったのは」


 キラが剣を構える。


「ああ」


「人間が……」


 グングルが棍棒を肩に担ぐ。


「魔人族を助けるとはな」


 キラは答える。


「俺たちは同盟を結びに来たんだ」


「同盟?」


「魔人族と人間族で――」


「くだらん」


 グングルが笑った。


「ならば、その前に貴様らを潰す」


 巨大な棍棒が振り上げられる。


 キラたちも構えた。


「来るぞ!」


 ――その瞬間。


「……待つのじゃ」


 女の声が響いた。


 戦場全体が静かになる。


 魔人族兵士たちが一斉に振り返った。


 そして――


 魔人族の城から、一人の女性が歩いてくる。


 赤黒い髪。


 赤い瞳。


 頭には二本の悪魔の角。


 そして、赤く鋭い爪。


 美しい女性だった。


 しかし、その姿から感じられる魔力は凄まじい。


「……あの人は?」


 レティシアが呟く。


 すると魔人族兵士たちが一斉に叫んだ。


「魔王様!」


「ジュダ様だ!」


「魔王ジュダ!!」


 キラは目を見開く。


「魔王……」


 魔王ジュダ。


 魔人族を統べる女王。


 魔人族の国を守る、絶対的な存在。


 ジュダはキラたちではなく、グングルを見た。


「魔境軍の将軍の分際が」


 静かな声。


「我が国を荒らしておいて、まだ戦いを続けるつもり?」


「魔王ジュダ……!」


 グングルが棍棒を構える。


「我ら魔境軍は、この国を手に入れる!」


「そう」


 ジュダの赤い瞳が細くなる。


「ならば――」


 赤い爪を構えた。


「私が相手をする」


「魔王様!」


 魔人族兵士たちが驚く。


 グングルも笑う。


「魔人族の王自ら出てくるか!」


「勘違いしないで」


 ジュダは冷たく言った。


「貴様ら魔境軍に、我が国を好き勝手にされるのが気に入らないだけじゃ」


「ならば――」


 グングルが突進する。


「死ねぇぇぇぇぇっ!!」


 ――ドゴォォォォン!!


 巨大な棍棒が振り下ろされた。


 ジュダは横へ跳ぶ。


 棍棒が地面を砕く。


 そのままジュダがグングルの懐へ入った。


「遅い」


 赤い爪が閃く。


 ――ザシュッ!!


「ぐっ!」


 グングルの身体に傷が走る。


「この程度か!」


 グングルが身体を回転させる。


 巨大な棍棒が横薙ぎに振られる。


 ジュダは身を低くしてかわす。


 そのままグングルの腕を踏み台にして跳躍。


「はあっ!」


 空中から蹴りを叩き込む。


 グングルの巨体がよろめく。


「ぬおおおおおっ!!」


 グングルが怒号を上げる。


 魔力が爆発する。


 身体がさらに巨大化したように見える。


「これでどうだ!!」


 棍棒が連続で振り下ろされる。


 ジュダは紙一重でかわし続ける。


 一撃。


 二撃。


 三撃。


 地面が次々と破壊される。


「速い……!」


 キラが目を見張る。


 グングルの力も凄まじい。


 だが――


 ジュダはそれ以上だった。


「終わりよ」


 ジュダの姿が消える。


「なっ!?」


 グングルが振り返る。


 しかし遅い。


 ジュダが背後にいた。


 赤い爪がグングルの背中を斬り裂く。


「ぐああああっ!」


 グングルが膝をつく。


 それでも立ち上がろうとする。


「まだ……だ……!」


 棍棒を杖代わりにして立ち上がる。


「俺は……魔境将軍……」


 ジュダは静かに近づく。


「もう十分でしょう」


「ぬおおおおおっ!!」


 グングルが最後の力を振り絞る。


 棍棒を振り上げる。


 しかし――


 ジュダの爪が閃いた。


 ――ズンッ!!


 グングルの巨体が地面へ倒れた。


「……ぐ……」


 動かない。


 完全な敗北だった。


 魔境軍の兵士たちがざわめく。


「グングル将軍が……」


「魔王ジュダに……」


 ジュダはグングルを見下ろしたあと、ゆっくりとキラへ視線を向けた。


「……さて」


 赤い瞳がキラを捉える。


「人間」


「……」


 キラは剣を下ろした。


「話をしたい」


「何を?」


「俺たちは、魔人族と争いに来たんじゃない」


 キラはまっすぐジュダを見る。


「同盟を結びに来た」


「……」


「人間族と魔人族」


 そして――


「一緒に魔境と戦いたい」


 ジュダの表情が変わった。


「……人間と?」


「ああ」


「同盟?」


「ああ」


 キラは頷く。


「これまで、人間と魔人族は何度も争ってきたんだろ?」


「……」


「でも、もうそんなことをしている場合じゃない」


 キラの脳裏に、アシュレインたちの姿が浮かぶ。


「魔境は強い」


 拳を握る。


「俺たちだけじゃ足りない」


 ジュダはしばらく黙っていた。


 そして――


「……ふざけるな」


 低い声。


「え?」


 ジュダの赤い瞳が鋭くなる。


「人間ごときと、我ら魔人族が同盟だと?」


 周囲の空気が一変する。


 魔人族兵士たちも息を呑む。


「そんなことを……」


 ジュダの爪が伸びる。


「簡単に受け入れられると思うな」


 キラは黙ってジュダを見る。


「人間と魔人族は、長い間争ってきた」


「……」


「その歴史を、たった一言の『同盟』で消せると思っているのか?」


 ジュダの怒りが戦場に響き渡る。


「ふざけるな!!」


 赤い魔力が一気に噴き上がった。


 キラたちも思わず身構える。


 魔境軍を退けた魔人族の王。


 魔王ジュダ。


 その怒りの矛先は――


 今度はキラたちへ向けられていた。


第188話 終

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