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『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』30000pv突破  作者: きらっち
青年期

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185/282

184話 セリーナ珍道中



聖教都市シルオット。


かつて大きな混乱に包まれ、魔境獣によって壊滅寸前まで追い込まれた都市。


しかし――。


セリーナの魔法。


クロノスリペア。


その力によって、道路も、建物も、教会も、時計塔も、橋も。


すべてが元の姿へと戻った。


そして今。


キラたちは、シルオットを後にしようとしていた。


「……本当に、これでいいんですか?」


城門の前。


エリスが振り返る。


そこには、以前と変わらないほどに復旧した街並みが広がっている。


「いいんじゃないか?」


キラは頷いた。


「アーゲンもいる。聖騎士や魔法星団も戻ってる。もう俺たちがここにいる必要はないだろ」


「そうですね」


エリスも頷く。


そして隣を見る。


「……セリーナ?」


「はい?」


セリーナは大量の荷物を抱えていた。


「……何ですか? これ」


「お土産です!」


「……」


キラが固まる。


「お土産?」


「はい!」


「誰に?」


「皆さんにです!」


「……」


エリスが荷物を見る。


パン。


焼き菓子。


果物。


保存食。


瓶詰め。


さらに謎の箱がいくつも。


「セリーナ……」


エリスが苦笑する。


「それ、どうやって持って帰るんですか?」


「大丈夫です!」


セリーナは自信満々に答えた。


「持てます!」


「いや、そういう問題じゃなくて……」


キラが頭を抱える。


「多すぎるだろ」


「でも、シルオットの皆さんがいっぱいくれたんですよ?」


「……」


確かに。


街の人々はセリーナに感謝していた。


自分たちの街を救った聖女。


そう呼ばれ、食料や贈り物を次々と渡されていたのだ。


セリーナとしては、それを断ることもできず――。


結果。


大量の荷物になった。


「まあ、いいんじゃないですか?」


エリスが笑う。


「食料なら旅にも使えますし」


「そうだな」


キラも頷いた。


「じゃあ行くか」


「はい!」


三人はアークへ向けて歩き始めた。



---


街道。


シルオットを離れてしばらくすると、景色は次第に自然へと変わっていった。


広い草原。


遠くに見える山々。


青い空。


穏やかな風。


エリスが歩きながら周囲を見回す。


「平和ですね」


「ああ」


キラも頷いた。


「しばらくは何も起きないといいけどな」


「そうですね」


そして――。


「……」


二人の後ろ。


セリーナが歩いている。


大量の荷物を抱えて。


「……」


「……」


キラが振り返る。


「セリーナ」


「はい?」


「大丈夫か?」


「大丈夫です!」


即答。


「本当に?」


「はい!」


「重くないか?」


「全然!」


セリーナは笑顔だった。


しかし――。


歩き方が明らかにおかしい。


荷物で前が見えていない。


「……」


キラは嫌な予感がした。


「セリーナ」


「はい?」


「前見えてるか?」


「……」


「?」


セリーナは少し考える。


「……見えてません!」


「だろうな!」


「でも大丈夫です!」


「何が大丈夫なんだよ!」


セリーナは胸を張った。


「道は前にあります!」


「そういうことじゃない!」


エリスが吹き出した。


「ふふっ……!」


「エリス、笑ってないで助けてやってくれ」


「すみません。でも……セリーナらしくて」


エリスが荷物の一部を受け取る。


「これ持ちます」


「あ、ありがとうございます!」


「これで少し前が見えるでしょう?」


「はい!」


セリーナの顔が見えるようになった。


「……」


キラは安心した。


ところが。


数秒後。


「きゃっ!」


ドンッ!


「……」


セリーナが何かにぶつかった。


「大丈夫か!?」


キラが振り返る。


「はい!」


セリーナは平然としている。


「何にぶつかったんだ?」


「木です」


「……」


道の真ん中でもない。


ちゃんと横にある木だった。


「なんで木にぶつかるんだよ……」


「木がそこにあったので」


「いや、そうだけど……」


エリスが肩を震わせている。


「キラ……」


「なんだ?」


「セリーナに道を歩かせるの、ちょっと危険かもしれません」


「……俺もそう思ってきた」



---


さらに進む。


昼を過ぎた頃。


三人は小さな川の近くで休憩することにした。


「少し休もう」


キラが言う。


「はい」


セリーナは嬉しそうに座る。


そして――。


「お腹すきました」


「早いな」


キラが苦笑する。


「昼飯食べたばかりだぞ」


「でも歩きましたから」


「まだ一時間くらいしか歩いてないぞ」


「一時間も歩きました」


「……」


エリスが笑う。


「まあ、セリーナですから」


「そうだな……」


キラは諦めた。


「じゃあ何か食べるか」


「はい!」


セリーナはすぐに荷物を開け始める。


パン。


果物。


焼き菓子。


肉。


「……」


キラが目を丸くする。


「ちょっと待て」


「はい?」


「なんでそんなに入ってるんだ?」


「全部お土産です」


「いや、これはもうお土産じゃなくて食料庫だろ」


「でも美味しそうですよ?」


「そうだけど……」


セリーナは嬉しそうにパンを取り出した。


「エリスさんもどうぞ」


「ありがとうございます」


「キラさんも」


「俺ももらう」


三人で昼食を取る。


穏やかな時間。


しばらくして――。


「……」


セリーナが立ち上がった。


「どうした?」


「ちょっと川へ行ってきます」


「水飲むのか?」


「はい!」


セリーナは川へ向かう。


そして――。


「あっ!」


バシャーン!


「!?」


キラとエリスが同時に振り返った。


「セリーナ!?」


川の中に――。


セリーナがいた。


「……」


「……」


「……」


セリーナは川の浅瀬で立っている。


びしょ濡れ。


「大丈夫か!?」


キラが駆け寄る。


「はい」


「何があった!?」


「足を滑らせました」


「見ればわかる!」


エリスも駆け寄ってくる。


「怪我は?」


「大丈夫です」


「よかった……」


エリスが胸を撫で下ろす。


すると――。


セリーナが笑顔になる。


「でも、お魚がいました!」


「……」


「魚?」


「はい!」


セリーナは川を指差す。


「すごく大きいです!」


キラが見る。


確かに。


川の中を泳ぐ魚。


それなりに大きい。


「……まさか」


「はい!」


セリーナが目を輝かせる。


「焼いて食べましょう!」


「やめろ」


「え?」


「今の状況で魚を捕まえようとするな」


「でも美味しそうですよ?」


「それより先に服を乾かせ!」


「あ……」


セリーナは自分の服を見る。


ずぶ濡れ。


「……本当ですね」


「気づくの遅い!」


エリスが笑いを堪える。


「セリーナ……」


「はい?」


「本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫です!」


「ならよかったです」


エリスは微笑んだ。


そして――。


「でも、少しだけ面白いです」


「エリスさんまで!」



---


キラは火を起こした。


「これで服を乾かせ」


「ありがとうございます」


セリーナは火の前に座る。


エリスも隣に座った。


キラは少し離れたところで見張りをする。


「……」


「……」


穏やかな時間。


しかし。


突然。


セリーナが立ち上がった。


「キラさん!」


「なんだ?」


「大変です!」


「どうした!?」


セリーナが指差す。


「パンがありません!」


「……」


キラは黙った。


「パン?」


「はい!」


「さっき食べただろ」


「もう一つありました!」


「……」


エリスが荷物を見る。


「あ」


「どうした?」


「セリーナ」


「はい?」


「パン、ここにあります」


「……」


セリーナが見る。


そこには――。


パンが山ほど入っていた。


「……」


「……」


「……ありました!」


「そうだな」


キラはため息をついた。


「自分で入れたんだろ」


「はい!」


「……」


「よかったです!」


「よかったな……」



---


夕方。


三人は再び歩き始めた。


すると遠くから――。


「止まれ!」


声がした。


キラたちが立ち止まる。


道の前方。


数人の男たちが立っていた。


武器を持っている。


「……盗賊か」


キラが剣に手をかける。


エリスも弓へ手を伸ばした。


「囲まれています」


「数は?」


「八人」


「なら――」


キラが前へ出ようとした。


その時。


セリーナが前に出た。


「待ってください!」


「セリーナ?」


「私に任せてください!」


「……?」


セリーナは盗賊たちを見る。


そして――。


「お腹すいてませんか?」


「…………」


キラが固まる。


エリスも固まる。


盗賊たちも固まった。


「……は?」


盗賊の一人が間の抜けた声を出す。


セリーナは笑顔。


「パンありますよ!」


「いや……」


「お肉もあります!」


「そういう問題じゃねえ!」


盗賊が怒鳴る。


「金と荷物を置いていけ!」


「あ、それなら――」


セリーナは荷物を開ける。


「どうぞ!」


パンを差し出した。


「……」


盗賊たちは呆然。


「……何してんだ?」


「パンです!」


「見りゃわかる!」


「美味しいですよ?」


「俺たちは盗賊だぞ!?」


「はい!」


「はいじゃねえ!」


キラは頭を抱えた。


「セリーナ……」


「はい?」


「俺たちは襲われてるんだぞ」


「そうなんですか?」


「そうだよ!」


「じゃあ……」


セリーナは少し考えた。


そして。


「パンでは駄目ですか?」


「駄目だろ!」


盗賊が叫ぶ。


しかし――。


一人の盗賊が小声で言った。


「……でも、うまそうだな」


「おい!」


「いや、だって……」


「……」


盗賊たちはパンを見る。


焼きたてではない。


だが、シルオットでもらった上質なパンだった。


一人がゴクリと唾を飲む。


セリーナはそれを見逃さなかった。


「どうぞ!」


「……いいのか?」


「はい!」


「……」


盗賊は恐る恐るパンを受け取った。


一口。


「……うまい」


「ですよね!」


「……」


他の盗賊たちもパンを見る。


「おい……」


「俺にもくれ」


「いや、俺が先だ!」


「喧嘩すんな!」


「まだあるぞ?」


セリーナが大量のパンを見せる。


「いっぱいあります!」


「……」


盗賊たちは完全に戦意を失った。


キラは呆然。


エリスは笑いをこらえている。


「……」


「……」


そして数分後。


道端に座り込む盗賊八人。


全員パンを食べている。


「……」


キラは腕を組んだ。


「どういう状況なんだ、これ」


エリスが笑う。


「セリーナが盗賊を餌付けしました」


「そんな言い方するな」


「でも事実です」


セリーナは満足そうに微笑んでいる。


「皆さん、お腹いっぱいになりましたか?」


「ああ……」


盗賊の一人が頷く。


「……こんなに腹いっぱいになったの、久しぶりだ」


「よかったです!」


「……」


盗賊は少し黙った。


「俺たち……」


「はい?」


「盗賊、やめようかな」


「それがいいと思います!」


即答。


「……」


キラが思わず笑ってしまった。


「お前、本当にすごいな……」


「何がですか?」


「いや……なんでもない」


エリスも笑っている。


「これまで色々な敵と戦ってきましたけど……」


「うん」


「食べ物で解決したのは初めてです」


「俺もだ」


セリーナは嬉しそうに笑った。


「平和ですね!」


「……まあな」


キラも笑う。



ただ今は。


シルオットからアークへ帰る。


その道のりを。


三人で歩いていく。


キラ。


エリス。


そして――。


どこまでも天然で、食欲旺盛な聖女。


「キラさん!」


「なんだ?」


「お腹すきました!」


「……またかよ!」


「はい!」


「さっきパン食べただろ!」


「でも歩きました!」


「まだ十分しか経ってないぞ!」


「十分も歩きました!」


「……」


エリスが吹き出す。


「ふふっ……」


「エリス、笑ってないで助けてくれ!」


「無理です……もう……」


エリスは笑いながら首を振った。


セリーナは不思議そうに二人を見る。


「どうしたんですか?」


「なんでもない」


キラは諦めたように笑った。


「アークに着いたら、好きなだけ食べろ」


「本当ですか!?」


「ああ」


「やったー!」


セリーナが両手を上げる。


そのまま――。


「きゃっ!」


ズテッ!


「……」


「……」


「……」


セリーナが転んだ。


キラとエリスが同時に駆け寄る。


「セリーナ!?」


「大丈夫です!」


「今度は何に転んだ!?」


「自分の足です!」


「……」


エリスがとうとう吹き出した。


「ふふふっ!」


キラも思わず笑う。


「……本当にお前は……」


セリーナは地面に座ったまま、笑顔を浮かべた。


「アークまで、まだ遠いですね!」


「ああ」


キラは手を差し出した。


「だから、ちゃんと歩けよ」


「はい!」


セリーナはその手を握った。


そして三人は再び歩き始めた。


夕焼けの街道を。


アークへ向かって――。


第184話 終

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