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『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』30000pv突破  作者: きらっち
青年期

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183話 英雄時代のおわり



聖教都市シルオットの復興が始まってから、数日。


街は以前の姿を取り戻し、人々も少しずつ日常を取り戻していた。


だが――。


世界の裏側では、別の戦いが始まろうとしていた。


場所は、アーク国王都。


王城の一室。


そこには五人の男女が集められていた。


円卓の上には、一枚の大きな地図。


その地図の北西。


黒く塗りつぶされた場所がある。


そこに記されている名前は――。


魔境国デダルク。


そして、その中心にある巨大な施設。


「ここが……アシュレインの捕まっている場所」


淡い水色の髪をした少女――大賢者リリーが指を置いた。


その隣には、オレンジ色の髪をした女性。


弓王リゼッタ。


そして、腕を組みながら地図を見ている男。


レオン。


アーク国から集められた三人だった。


「魔境国デダルク……か」


リゼッタが険しい表情をする。


「そこにあるのが、監獄要塞デダルク」


「そう」


リリーが頷く。


「魔境の中でも特に危険な場所。巨大な城壁と結界、それに黒い魔力を利用した防衛設備が大量にあるみたい」


「面倒だな」


レオンが呟いた。


そして。


もう二人。


円卓の反対側に座っている者たちがいた。


一人は、オギデストラから来たSランク冒険者。


アニー。


男。


肩には大きな魔導書。


腰には何本もの召喚用の杖。


召喚魔術師である。


そしてもう一人は――。


マニルから来たドワーフ。


ゴルドン。


巨大な体格に、巨大な盾。


防御力に関しては、マニルでも最高峰の男だった。


アニーは椅子に深く座りながら、眠そうな目で地図を眺めていた。


「……あー」


気の抜けた声。


「デダルクねぇ……」


「何か知っているのか?」


レオンが聞く。


アニーは面倒くさそうに頭を掻いた。


「まあ……多少は」


「教えてくれ」


「いやぁ……話すのもだるいんだけど」


「おい」


レオンが睨む。


アニーはため息をついた。


「はいはい。分かったって」


そして地図を指差す。


「デダルクは、魔境の中でもかなり危ない場所。あそこに入った奴が無事に帰ってくることは、まあ……ほとんどない」


「ほとんどない?」


リゼッタが聞き返す。


「そ」


アニーは背伸びをした。


「魔物も多いし、魔族の兵士もいる。しかも、最近は黒い魔力まで使ってるらしい」


その言葉に。


レオンの表情が変わった。


「黒い魔力……」


「うん」


アニーは目を細める。


「それが一番面倒」


ゴルドンが腕を組む。


「黒い魔力というものは、やはりそれほど危険なのか?」


「危険だよ」


アニーは淡々と答える。


「普通の魔法や武器じゃ、まともに対抗できないことがある」


リリーが黙り込む。


リゼッタも拳を握る。


「それでも行く」


彼女が言った。


「アシュレインを助ける」


その言葉に。


アニーはしばらくリゼッタを見る。


そして。


「……まあ」


小さく息を吐いた。


「俺も、そのつもりで来たんだけどね」


「ならいい」


リゼッタが答える。


アニーは再び地図を見る。


「ただ……」


「何だ?」


レオンが聞く。


「帰ってこられる保証はないよ」


部屋が静かになる。


誰も答えない。


しばらくして。


ゴルドンが立ち上がった。


「ならば、帰ってこられるように戦えばいいのぉ」


「……元気だねぇ」


アニーが苦笑した。


「俺、そういう熱いの苦手なんだけど」


「なら、置いていくぞ」


「それは困るなぁ」


アニーは立ち上がった。


「召喚魔術師が一人いるだけでも、結構便利だよ?」


リリーが小さく笑う。


「期待してる」


「はいはい」


アニーは肩をすくめた。


---


そして。


出発の日。


アーク国王都の外。


五人が並んでいた。


レオン。


リゼッタ。


リリー。


アニー。


ゴルドン。


「……行くぞ」


レオンが言った。


「アシュレインを連れ戻す」


五人は歩き始めた。



---


天空の塔 魔境門に入る。


魔境国へ向かう道


最初は普通だった。


しかし。


魔境へ近づくにつれて。


空気が変わっていく。


木々が減る。


草が枯れる。


大地が黒く染まる。


「……嫌な感じ」


リリーが呟く。


アニーも周囲を見る。


「そうだねぇ」


「何か感じる?」


「黒い魔力」


アニーは即答した。


「かなり濃い」


ゴルドンが盾を構える。


「敵が来るぞ」


「分かるのか?」


リゼッタが聞く。


ゴルドンが地面を見る。


「足音じゃ」


その瞬間。


ズドォォォン!!


地面が爆発した。


巨大な魔物が飛び出してくる。


「来た!」


リゼッタが弓を構える。


ヒュンッ!!


矢が飛ぶ。


魔物の頭部を貫通。


そのまま地面へ落ちる。


「……一匹」


リゼッタが呟く。


だが。


「まだいる!」


リリーが叫んだ。


周囲から次々と魔物が現れる。


十。


二十。


三十。


「多すぎるだろ」


レオンが剣を抜いた。


「アニー!」


「はいはい」


アニーが魔導書を開く。


「召喚魔術――」


地面に巨大な魔法陣が浮かぶ。


「出てきて」


魔法陣から巨大な獣が現れた。


四足歩行の魔獣。


鋭い牙。


巨大な爪。


「――グリフォン」


召喚された魔獣が空へ飛び上がる。


そして。


「グオオオオオオオオ!!」


急降下。


巨大な爪で魔物を吹き飛ばす。


「おお!」


ゴルドンが声を上げる。


アニーは眠そうな顔のまま。


「便利でしょ」


「すごいのぉ!」


「まあねぇ」


「もっと誇っていいぞ」


「疲れるからいいや」


「……」


レオンが呆れた顔をする。


その間にも。


リリーが魔法を放つ。


「アイスランス!」


無数の氷槍。


リゼッタが矢を連射。


ゴルドンが盾で敵を吹き飛ばす。


レオンが一閃。


五人は次々と魔物を倒していった。


だが。


魔境へ進むほど。


敵は強くなっていった。


---


そして。


ついに。


その姿が見えた。


「……あれか」


レオンが立ち止まる。


遠くに巨大な建造物が見える。


山を利用して作られた巨大要塞。


何十メートルもの城壁。


巨大な塔。


黒い魔力を帯びた結界。


そして。


中央にある巨大な門。


「監獄要塞デダルク」


リリーが呟いた。


リゼッタが弓を握る。


「アシュレインは、あそこにいる」


アニーは要塞を見上げる。


「……でかいなぁ」


「怖くないのか?」


ゴルドンが聞く。


「怖いよ」


「そうは見えんぞ」


「だるいだけ」


「……」


ゴルドンは何も言わなかった。


レオンが剣を抜く。


「行くぞ」


五人が走り出した。


---


「敵襲!!」


要塞の上から叫び声。


次の瞬間。


大量の魔法が飛んでくる。


炎。


雷。


氷。


風。


そして。


黒い槍。


「ゴルドン!」


「任せろ!」


ゴルドンが巨大な盾を構える。


ドゴォォォォン!!


全ての攻撃を受け止める。


「ぬおおおおお!!」


「リリー!」


「分かってる!」


リリーが杖を掲げる。


「テンペスト!」


巨大な竜巻が発生。


要塞の兵士たちを吹き飛ばす。


「リゼッタ!」


「任せて!」


「アルテミス・レイン!」


無数の矢が空から降り注ぐ。


兵士たちが次々と倒れる。


レオンが門へ走る。


「アニー!」


「はいはい」


アニーが魔導書を開く。


「召喚――」


巨大な魔獣が現れる。


「行って」


魔獣が門へ突進。


ドゴォォォォン!!


巨大な門が破壊された。


「行くぞ!」


五人が内部へ突入する。


---


監獄要塞の中。


長い廊下。


無数の牢獄。


囚人たちがいる。


だが。


アシュレインはいない。


「上だ」


リリーが言う。


「黒い魔力が上層部に集中してる」


レオンが頷く。


「行くぞ」


階段を駆け上がる。


しかし。


上へ行くほど敵が増える。


魔境兵。


魔物。


黒い魔力を纏った戦士。


「多いなぁ……」


アニーがため息をつく。


「召喚――!」


今度は巨大な狼。


さらに。


鳥型の魔獣。


そして。


鎧を纏った召喚獣。


「……三体」


アニーが呟く。


「好きに戦って」


召喚獣たちが敵へ突っ込んでいく。


「助かる!」


レオンが走る。


リゼッタも。


リリーも。


ゴルドンも。


そして。


アニーも。


上へ。


上へ。


進んでいく。


---


最上階。


巨大な扉。


その奥から。


かすかに気配を感じる。


リゼッタが立ち止まった。


「……いる」


レオンを見る。


「アシュレインがいる」


レオンが頷く。


「行くぞ」


ドゴォォン!!


扉が吹き飛ぶ。


部屋の中央。


そこに。


一人の男がいた。


金髪。


中央で分かれた髪。


身体中に傷。


両腕には黒い拘束具。


そして。


「……遅かったな」


剣聖アシュレイン。


リゼッタが駆け寄る。


「アシュレイン!」


「久しぶりだな」


「無事なの!?」


「見ての通りだ」


アシュレインは笑った。


だが。


その顔には疲労があった。


長期間の拘束。


黒い魔力による侵食。


それでも。


目の輝きだけは失っていなかった。


「外すね」


リリーが拘束具を見る。


「これは……」


黒い魔力が絡みついている。


「普通の魔法じゃ無理」


アニーも見る。


「……うわぁ」


「どうだ?」


レオンが聞く。


「俺の召喚魔術でも、これを壊すのは無理」


「そんな……」


リゼッタが顔を曇らせる。


アシュレインが言う。


「キラなら」


その名前。


全員が黙った。


「キラなら、この黒い魔力に対抗できる」


レオンが拳を握る。


「だが、キラはここにはいない」


「……そうだな」


アシュレインが答える。


その瞬間。


部屋の壁が。


爆発した。


ドゴォォォォン!!


「来たぞ!」


敵が大量に入ってくる。


そして。


その奥から。


黒いローブの男が歩いてきた。


「ようこそ」


黒い魔力が溢れる。


「剣聖を救いに来た英雄たちよ」


レオンが剣を構える。


「邪魔をするなら、斬る」


「やってみろ」


戦闘開始。


---


激しい戦いだった。


リゼッタの矢。


リリーの魔法。


レオンの剣。


ゴルドンの盾。


アニーの召喚魔術。


そして。


アシュレイン。


拘束されていたはずの剣聖も。


「俺も戦う」


拘束具を無理やり引きちぎる。


黒い魔力が身体へ食い込む。


それでも。


剣を握る。


「俺は剣聖だ」


一閃。


敵が吹き飛ぶ。


二閃。


さらに敵を斬る。


「アシュレイン!」


リゼッタが叫ぶ。


「行くぞ!」


アシュレインが答える。


六人が戦う。


しかし。


敵は多かった。


倒しても。


倒しても。


新しい敵が現れる。


そして。


黒い魔力が戦場を覆っていく。


「まずい……」


リリーが呟く。


「黒い魔力が強すぎる」


「俺の召喚獣も……」


アニーの召喚獣が黒い魔力に触れた瞬間。


動きが鈍る。


「……食われてる」


アニーの表情から笑みが消える。


「これは……きついなぁ」


召喚獣が一体。


消滅した。


「アニー!」


「まだいる」


アニーが新たな魔法陣を展開する。


「召喚!」


さらに巨大な魔獣。


だが。


黒い魔力に触れた瞬間。


苦しみ始める。


「……やっぱり」


アニーが呟く。


「普通の力じゃ、こいつには勝てない」


---


戦いはさらに激しくなる。


レオンが敵を斬る。


ゴルドンが盾で守る。


リゼッタが矢を放つ。


リリーが魔法を撃つ。


アニーが召喚獣を操る。


アシュレインが剣を振るう。


それでも。


黒い魔力は止まらない。


「ぐっ……!」


リリーが膝をつく。


「リリー!」


リゼッタが駆け寄る。


「大丈夫……」


「大丈夫じゃない!」


「……まだ戦える」


リリーが立ち上がる。


「私は……大賢者だから」


アシュレインも笑った。


「そうだな」


「アシュレイン……」


「最後まで戦おう」


「うん」


---


そして。


黒い魔法陣が展開された。


「全員、下がれ!!」


アシュレインが叫ぶ。


遅かった。


ドォォォォォォォォン!!


巨大な黒い爆発。


全員が吹き飛ばされる。


壁が崩れる。


床が割れる。


要塞全体が揺れる。


「ぐっ……!」


レオンが立ち上がる。


「みんな!」


アニーが倒れている。


ゴルドンも傷だらけ。


「わしは……まだ動ける」


リゼッタも立つ。


「リリー……?」


返事がない。


「リリー!」


リゼッタが駆け寄る。


リリーは倒れていた。


身体に黒い魔力が絡みついている。


「……リゼッタ」


「喋らないで!」


「大丈夫……」


「嘘!」


リリーが弱く笑う。


「……キラなら」


「……」


「キラなら……この黒い魔力を」


そこまで言って。


リリーは目を閉じた。


「リリー!!」


---


アシュレインも傷だらけだった。


それでも立っている。


「……行け」


レオンを見る。


「何を言ってる」


「俺が残る」


「馬鹿な!」


「お前たちは帰れ」


アシュレインが剣を握る。


「このまま全員が残ったら、誰も帰れない」


「俺は残る!」


レオンが叫ぶ。


「お前だけを置いていけるか!」


「レオン」


アシュレインが笑う。


「弟子に伝えてくれ」


「……」


「キラに」


アシュレインが言う。


「お前の師匠は最後まで戦った、と」


「……アシュレイン」


レオンの拳が震える。


「頼む」


「……分かった」


レオンは唇を噛む。


そして。


「行くぞ!」


リゼッタとリリーを連れて脱出しようとする。


しかし。


リゼッタが立ち止まる。


「私は残る」


「駄目だ」


アシュレインが言う。


「弓王まで残ったら意味がない」


「でも!」


「リゼッタ」


アシュレインは静かに笑った。


「生きろ」


「……!」


「そして」


「……」


「キラに伝えてくれ」


リゼッタの目から涙が落ちる。


「……何を?」


「世界にはまだ、守るべきものがあるってな」


リゼッタは泣きながら頷いた。


「……分かった」


そして。


走った。


---


だが。


出口へ向かう途中。


黒い魔力が再び襲いかかる。


リリーが足を止める。


「……もう無理」


「リリー!」


「リゼッタ」


リリーが微笑む。


「先に行って」


「嫌!」


「お願い」


リゼッタの目から涙が溢れる。


「私は……大賢者」


リリーが杖を握る。


「最後まで……役目を果たす」


「リリー……」


「あなたは弓王」


「……」


「だから、生きて」


リゼッタは泣きながら走った。


---


だが。


その先には。


巨大な黒い魔力が待っていた。


リゼッタは矢を放つ。


何本も。


何十本も。


何百本も。


「アルテミス・レイン!!」


無数の矢が降り注ぐ。


しかし。


黒い魔力が全てを飲み込んでいく。


「……嘘」


リゼッタの手が震える。


「私の矢が……」


効かない。


その背後から。


リリーが追いついてくる。


「リゼッタ」


「……リリー」


「一緒に戦おう」


「うん」


二人は並んだ。


弓王。


大賢者。


世界最高峰の二人。


最後まで。


戦った。


---


別の場所では。


アシュレインが一人で戦っていた。


「うおおおおおおおお!!」


剣を振る。


敵を斬る。


また斬る。


黒い魔力が身体を侵食する。


「まだだ……!」


それでも。


剣を振る。


「まだ……終わっていない!」


最後の一撃。


巨大な黒い魔力がアシュレインを包む。


「……キラ」


アシュレインは静かに呟いた。


「お前なら……」


そして。


その姿が。


黒い光の中へ消えた。


---


リリーとリゼッタも。


限界を迎えていた。


二人は背中合わせになっている。


「……リゼッタ」


「何?」


「私たち……ちゃんと戦えたかな」


「うん」


「そっか」


リリーが笑う。


「よかった」


リゼッタも笑った。


「アシュレインも……きっと待ってるよ」


「うん」


そして。


黒い魔力が二人を包む。


「……キラ」


リゼッタが呟く。


「ごめんね」


その声を最後に。


二人の姿も。


黒い光の中へ消えた。


---


「撤退するぞ!!」


レオンが叫んだ。


アニー。


ゴルドン。


レオン。


三人は。


ただ生き残るために走った。


魔境を抜ける。


何度も魔物に襲われる。


ゴルドンが盾で守る。


「先へ行けぇぇぇ!!」


アニーが召喚獣を呼び出す。


「……行って」


召喚獣が敵を食い止める。


だが。


一体。


また一体。


黒い魔力に飲み込まれて消えていく。


アニーは歯を食いしばる。


「……ほんと」


「やばいなぁ……」


それでも。


歩く。


「ここで死ぬわけには……いかないだろ」


レオンも傷だらけだった。


ゴルドンも満身創痍。


それでも。


三人は。


アーク国へ戻った。


---


王都。


三人が戻ってきた。


兵士たちが駆け寄る。


「救出隊の皆様!」


「アシュレイン様は!?」


「リゼッタ様は!?」


「リリー様は!?」


レオンは。


答えられなかった。


アニーは俯いている。


ゴルドンも。


しばらくして。


レオンが口を開いた。


「……死んだ」


その言葉だけが。


王都に響いた。


誰も。


何も言えない。


剣聖アシュレイン。


弓王リゼッタ。


大賢者リリー。


世界最高峰の三人が。


帰ってこなかった。


---


アーク国中に。


知らせが広がった。


王都の鐘が鳴る。


一度。


二度。


三度。


三人の英雄の死を悼む鐘。


街の人々は。


空を見上げた。


誰も。


勝利を口にしなかった。


誰も。


喜ばなかった。


ただ。


沈黙していた。


---


オギデストラにも。


知らせが届いた。


アニーが戻ってきた。


しかし。


一緒に出発した仲間は。


帰ってこなかった。


オギデストラの王は。


アニーを責めなかった。


アニーも。


何も言わなかった。


ただ。


「……助けられなかった」


それだけを呟いた。


そして。


オギデストラも。


沈黙した。


---


マニル。


ゴルドンが戻ってきた。


五種族の代表たちが集まる。


サーベン。


トライゴン。


ベンガル。


ハイドロ。


ガミオン。


ゴルドンは。


深く頭を下げた。


「……すまぬ」


誰も。


彼を責めなかった。


「わしらには……」


ゴルドンは拳を握る。


「黒い魔力に対抗する力がなかった」


その言葉。


誰も否定できなかった。


---


そして。


三つの国が。


同じ事実に気づく。


アーク国。


オギデストラ。


マニル。


彼らの中には。


強者がいる。


剣の達人も。


魔法の達人も。


弓の達人も。


召喚魔術師も。


強固な防御を持つ戦士もいる。


だが。


それでも。


黒い魔力には勝てなかった。


「足りなかったものは……」


レオンが呟く。


「黒い魔力に対抗する手段だ」


アニーが目を伏せる。


「俺の召喚魔術じゃ無理だった」


ゴルドンも俯く


「わしの盾でも防ぎきれんかった」


そして。


レオンが。


一人の男の名を口にする。


「キラ……」


誰もが知っている名前。


キラ・フォン・レイゼン。


黒い魔力に対抗できる。


ルミナを使い。


黒い力を浄化し。


破壊することができる。


今回。


その力がなかった。


その結果――。


三人の英雄を失った。


---


アーク国。


オギデストラ。


マニル。


それぞれの国は。


深い沈黙に包まれた。


誰もが。


失った三人を想う。


剣聖アシュレイン。


大賢者リリー。


弓王リゼッタ。


彼らは。


ただ強かっただけではない。


世界を守ってきた存在だった。


その三人が。


同時に失われた。


世界は。


大きな柱を三本失った。


そして。


まだ誰も知らない。


この死が。


これから始まる戦いの。


ほんの序章にすぎないことを。


キラはまだ。


何も知らない。


自分がいない場所で。


アシュレインたちが死んだこと。



そして。


世界が今。


自分を必要としていることも――。


183話 終

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