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『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』30000pv突破  作者: きらっち
青年期

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177話 魔境将軍ゲンブ



聖教都市シルオット。


崩壊した大聖堂から北へ進んだ先。


そこには、巨大な建物がそびえ立っていた。


――聖教堂。


キラとエリスは、その入口の前で立ち止まった。


「……」


キラは周囲を見回す。


人の姿はない。


聖騎士団もいない。


魔法星団の姿もない。


「誰もいないな」


「静かすぎますね……」


エリスも周囲を警戒する。


司祭が言っていた。


ここに聖教ボギーがいる。


そして、この場所には何かがある。


だが、入口には見張りすらいなかった。


「行くぞ」


「はい」


二人は大きな扉を開いた。


ギィィィ……。


重たい音が響く。


その先に広がっていたのは――。


巨大な大広間だった。


天井は遥か高く、数十メートルはある。


左右には長い柱が並び、その一本一本に細かな彫刻が刻まれている。


壁には聖教を象徴する巨大な紋章。


床には大理石が敷き詰められ、中央には長い赤い絨毯が伸びていた。


しかし――。


どこか異様だった。


以前のシルオットで感じた、穏やかな祈りの空気はない。


静かすぎる。


冷たすぎる。


まるで、この場所そのものが二人を観察しているようだった。


「……嫌な感じですね」


エリスが小声で言う。


「ああ」


キラも頷く。


その時――。


コツ……コツ……コツ……


靴音が聞こえてきた。


二人が振り返る。


大広間の奥。


柱の陰から、一人の神父が姿を現した。


白い法衣。


穏やかな笑顔。


手には聖書らしきものを持っている。


神父は二人を見ると、にこやかに微笑んだ。


「これはこれは。ようこそお越しくださいました」


そして――。


「ご要件は?」


キラが答えようとした、その瞬間。


「礼拝です!」


エリスが即答した。


「……」


キラが横を見る。


エリスは満面の笑顔だった。


神父も笑顔を崩さない。


「そうですか」


「はい!」


「どうぞご自由に」


神父はそれだけ言うと――。


くるりと背を向けた。


「……」


そのまま、奥へ歩いていく。


コツ……コツ……コツ……。


やがて姿が見えなくなった。


「……ふぅ」


キラが大きく息を吐いた。


「危なかった……」


するとエリスがクスクス笑う。


「キラさん」


「ん?」


「嘘は下手ですからね」


「……」


「私が言った方が自然です」


「……否定できない」


キラは苦笑した。


「それより、セリーナを探すぞ」


「はい」


二人は大聖堂の中を歩き始めた。



---


「こっちは……礼拝堂」


「誰もいませんね」


「こっちは?」


「倉庫……みたいです」


「……誰もいない」


廊下。


小部屋。


礼拝室。


書庫。


いくつもの場所を探した。


しかし――。


セリーナはいない。


「……いないですね」


エリスが眉を寄せる。


「どこにもいない」


キラも周囲を見渡した。


「隠し部屋でもあるのか?」


だが、怪しい場所は見当たらない。


結局、二人は最初の大広間へ戻ってきた。


「……」


キラは立ち止まった。


「どうしたんですか?」


「いや……」


キラの視線の先。


大広間の中央奥には――。


巨大な石像が立っていた。


高さは、五メートルほど。


人の姿を模した石像。


両手を胸の前で組み、祈りを捧げるような姿勢をしている。


だが、その顔はどこか不気味だった。


「……これ、ボギーの像でしょうか?」


「たぶんな」


キラは石像へ近づいた。


「随分と大きいな……」


その瞬間。


――ピカッ。


「……!」


石像の目が光った。


「キラさん!」


「下がれ!」


キラが剣を抜く。


次の瞬間――。


ゴゴゴゴゴゴ……!


石像が動いた。


巨大な腕が動く。


石の身体が軋み、床が震える。


「なっ……!」


石像が足を上げた。


そして――。


二人を踏み潰そうとする。


「逃げろ!」


ドォォォン!!


キラとエリスが左右へ飛ぶ。


巨大な足が床を踏み抜いた。


大理石が粉々に砕ける。


「ほっほっほ……!」


その時だった。


背後から笑い声。


キラとエリスが振り返る。


先ほどの神父が立っていた。


「邪悪な心あり」


神父は笑っている。


「あなた方には、ここにいる資格がありませんな」


「……お前!」


キラが剣を構える。


神父が手を掲げた。


「裁きを――」


だが。


「遅い」


キラが消えた。


一瞬。


次の瞬間――。


神父の目の前にキラがいた。


「なっ――」


――ドンッ!


キラの剣の柄が神父の腹へ叩き込まれる。


「ぐっ……!」


神父の身体が吹き飛ぶ。


「エリス!」


「はい!」


エリスの矢が飛ぶ。


――ヒュンッ!


石像の腕へ命中。


だが――。


「この程度で……!」


石像が腕を振り回す。


「なら――」


キラが跳躍。


剣に魔力を纏わせる。


一閃。


――ズバァン!!


巨大な石像の腕が斬り飛ばされた。


「なっ……!」


神父が目を見開く。


「これで終わりだ」


キラが地面を蹴る。


「――ッ!」


一瞬で石像の懐へ潜り込む。


そして――。


魔力を込めた斬撃。


――ドォォォォン!!


五メートルもの巨体が真っ二つに割れた。


「ば、馬鹿な……!」


神父も立ち上がろうとする。


だが――。


「遅い!」


エリスの矢が神父の手元を撃ち抜く。


神父は尻餅をついた。


「ぐっ……!」


キラが剣を突きつける。


「セリーナはどこだ?」


「……」


神父は答えない。


「もう一度聞く」


キラの声が低くなる。


「セリーナはどこだ!」


「……ほっ……ほっほ……」


神父が笑った。


だが――。


その笑い方が変わった。


「……ったく」


「……?」


「動きづらいで」


神父の口調が変わった。


「!」


キラが後ろへ跳ぶ。


エリスも距離を取る。


「何だ……?」


神父の身体から――。


黒い煙が噴き出した。


「ぐ……ぐぐ……」


黒煙が身体を包み込む。


骨が軋む。


身体が膨張する。


白い法衣が破れ――。


「アアアアアアアアアアアッ!!」


巨大な影が立ち上がった。


背中から黒い翼。


腕は異常なほど太くなり、爪が伸びる。


顔には悪魔を思わせる角。


そして――。


赤く光る瞳。


「ククク……」


先ほどまでの神父とは、完全に別人だった。


その存在は二人を見下ろす。


「我は――」


大広間を震わせる声。


「魔境将軍――ゲンブ!」


ドンッ!!


黒い魔力が爆発する。


「貴様らはここで死ね!」


「……魔境将軍」


キラが剣を握り直す。


エリスがキラの前へ出た。


「エリス?」


「キラさん」


エリスは弓を構える。


「キラさんはセリーナさんを探してください!」


「……!」


「ここは私がやります!」


「一人で大丈夫なのか!?」


「大丈夫です!」


エリスが振り返って笑う。


「私だって、強くなったんですよ?」


そして――。


「それに」


エリスの目が鋭くなる。


「キラさんには、セリーナさんを助けてもらわないと困ります」


キラは一瞬だけエリスを見る。


そして――。


「……分かった!」


剣を構え直す。


「ありがとう! 任せた!」


「はい!」


キラはそのまま走り出した。


「待てぇぇぇ!!」


ゲンブがキラへ向かおうとする。


だが――。


「あなたの相手は、私ですよ」


エリスが立ちはだかった。


ゲンブが振り返る。


「小娘が……!」


「小娘じゃありません」


エリスは弓を掲げる。


「エルフの弓使いです!」


そして――。


「――精霊弓王!」


ドンッ!!


眩い光がエリスを包み込んだ。


風が渦巻く。


大気が震える。


光の粒子がエリスの周囲へ集まり――。


一本の巨大な魔力弓が姿を現した。


同時に、魔力の矢が形成される。


「……!」


ゲンブが目を細める。


「その力……」


エリスは弓を引く。


「行きますよ!」


――ヒュンッ!!


矢が放たれた。


ゲンブは腕を交差させる。


――ドォォォン!!


衝撃。


黒い魔力が吹き飛ぶ。


「ぐおおおおっ!」


ゲンブが後退した。


「これが……精霊弓王……!」


エリスは止まらない。


「まだまだです!」


弓を引く。


一射。


二射。


三射。


連続して魔力矢が放たれる。


ゲンブは巨大な腕で防ぐ。


「舐めるなぁぁぁ!!」


ゲンブが地面を蹴った。


――ドンッ!!


一瞬で距離を詰める。


巨大な拳がエリスへ迫る。


「っ!」


エリスは横へ跳ぶ。


拳が床を砕く。


「危なっ……!」


そのままエリスは弓を消した。


「なら――」


拳を握る。


ゲンブが笑う。


「弓使いが接近戦だと?」


「弓だけが私の武器じゃありません!」


エリスが踏み込む。


「はっ!」


――ドンッ!


掌底。


ゲンブの胸へ叩き込む。


「ぐっ!」


巨体がわずかに揺れる。


「まだ!」


肘打ち。


「ぐおっ!」


続けて回し蹴り。


――ドゴッ!


ゲンブの顔が横へ弾かれる。


「この……!」


ゲンブが腕を振る。


エリスは身を低くする。


頭上を爪が通過。


そのまま懐へ入り込む。


「遅い!」


膝。


腹部へ叩き込む。


「ぐっ……!」


さらに足払い。


ゲンブの巨体が傾く。


「今です!」


エリスが地面を蹴って跳躍。


空中で身体を回転させ――。


「せやぁっ!」


踵落とし。


――ドォン!!


ゲンブの頭が床へ叩きつけられる。


「ぐ……!」


しかし。


ゲンブは倒れない。


「……小賢しい!」


黒い魔力が爆発する。


「――ッ!」


エリスが吹き飛ばされた。


「きゃっ!」


壁へ叩きつけられる。


「エリス!」


遠くからキラの声。


「大丈夫です!」


エリスはすぐに立ち上がった。


口元の血を拭う。


「この程度……!」


ゲンブが迫る。


「死ねぇぇぇ!!」


巨大な爪。


エリスは紙一重で避ける。


一歩。


二歩。


三歩。


攻撃をかわしながら、相手の懐へ潜り込む。


「そこっ!」


掌打。


「ぐっ!」


「まだ!」


肘。


「ぐおっ!」


「もう一つ!」


回し蹴り。


ゲンブの身体がよろめく。


エリスは再び弓を形成した。


「ここからは――」


弓を引く。


風が集まる。


光が集まる。


魔力が一本の矢へ凝縮されていく。


「弓で決めます!」


「させるかぁぁぁ!!」


ゲンブが突進。


エリスは動かない。


ギリギリまで引きつける。


「……今!」


横へ跳ぶ。


ゲンブの拳が空を切る。


その瞬間――。


「アルテミス・レイン!」


無数の矢が天井近くへ飛び上がった。


そして――。


「――ゼロ!」


無数の矢が一点へ集中する。


「なにぃ!?」


――ズドドドドドドドドッ!!


ゲンブの身体へ、怒涛の魔力矢が降り注ぐ。


黒い魔力と白い魔力が激しくぶつかり合う。


「ぐおおおおおおおおおっ!!」


大広間が揺れる。


柱が砕ける。


床に亀裂が走る。


それでもゲンブは立っていた。


「……まだ……終わらんぞ……!」


エリスも荒い息を吐く。


「……さすがに……強いですね」


だが、その目には恐怖はなかった。


むしろ――。


戦うことを楽しむような強い光が宿っている。


「でも……」


エリスは再び弓を構える。


「キラさんが戻ってくるまで、絶対に負けません!」


ゲンブが咆哮する。


「ならば貴様から殺してやる!!」


「やってみてください!」


二人は同時に地面を蹴った。


魔境将軍ゲンブ。


そして、精霊弓王の力を得たエリス。


聖教堂の大広間で――。


壮絶な戦いが始まった。


第175話 終

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