160話 遊戯のヤーミリオン
「はぁ……はぁ……」
キラは剣を杖のように地面へ突き立てていた。
「……まだ……いける」
そう呟くものの――
その身体は、今にも倒れそうだった。
亜空間魔法『無』。
あまりにも強大な魔法を使ったことで、キラの魔力はほとんど残っていない。
それでもキラは、仲間たちに悟られないように立っていた。
「キラさん、無理しないでください!」
セリーナが駆け寄る。
「大丈夫……」
「大丈夫じゃありません!」
セリーナが杖を掲げる。
「ヒール!」
淡い光がキラを包み込む。
「……助かる」
「私が回復しますから、絶対に無理しないでくださいね!」
「ああ……」
そう答えたものの、キラの膝はわずかに震えていた。
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その間にも――
「うおおおおおっ!」
ゴルーツがスベルへ突っ込む。
「はあっ!」
イグニットが大剣を振り下ろす。
ガイムは水を操り、ゴルドンは大地を隆起させる。
レティシアとエリスも二人でスベルを追い詰めていた。
「そこだ!」
レティシアの双剣が閃く。
「アルテミス・レイン!」
エリスの矢が降り注ぐ。
しかしスベルは、変化分身で次々と姿を変えていく。
「無駄だよ!」
「どれだけ攻撃したって、僕には当たらない!」
「当たるさ!」
レティシアが叫ぶ。
ルミナをまとった双剣がスベルの分身を切り裂く。
「ぐっ!」
「今だ!」
エリスの矢が飛ぶ。
「――命中!」
ズドドドドッ!!
スベルの身体が吹き飛ぶ。
「ぐあっ!」
だが、スベルはすぐに立ち上がる。
「まだだ……!」
変化分身。
再び大量の分身が現れる。
「くそっ……!」
ゴルーツが拳を振り抜く。
しかし――
「ぐっ……」
ゴルーツの動きが止まった。
「俺は……もう限界みてぇだ……」
膝をつく。
イグニットも大剣を支えにしている。
「私も……これ以上は……」
ガイムも肩で息をする。
「魔力が……尽きました……」
ゴルドンもその場に座り込む。
「ふぅ……年寄りには少々きついのう……」
助っ人
全員が限界だった。
「みんな……!」
レティシアが振り返る。
「ここは私たちがやる!」
エリスが隣に立つ。
「二人で決めよう」
「……ああ!」
二人の女性戦士が、同時に構える。
スベルが笑った。
「二人だけで僕を倒す?」
「やってみな!」
レティシアが駆ける。
「双月斬!!」
スベルが変化する。
その瞬間――
エリスの矢が進路を塞ぐ。
「逃がさない!」
「なっ!?」
スベルが回避した先へ、レティシアが回り込む。
「そこだ!」
ズバッ!!
スベルの身体に傷が走る。
「ぐっ!」
さらにエリスが弓を引く。
「アルテミス・レイン――ゼロ!」
一本の矢に、すべての力を集中させる。
レティシアも二本の剣を交差させた。
「これで終わりだ!」
「合わせるよ!」
二人が同時に踏み込む。
「「――二人技!!」」
レティシアの双剣がスベルを左右から切り裂く。
その直後――
エリスの光を纏った矢が、スベルの胸元を貫いた。
ドォォォォン!!
「ぐ……あ……!」
スベルの身体から黒い魔力が噴き出す。
「僕が……こんな……!」
変化分身が次々と消えていく。
そして――
ドサッ。
スベルは倒れた。
「…………」
静寂。
レティシアは荒い息を吐きながら剣を下ろす。
「……勝った」
エリスも息を整える。
「うん……」
他のみんなも、倒れたスベルを見つめる。
キラもセリーナに支えられながら、なんとか立っていた。
「終わった……のか」
その瞬間。
「パチ……」
「パチ……」
静かな拍手が大広間に響いた。
「パチパチパチパチ……」
全員が振り向く。
「……誰だ?」
キラが警戒する。
暗闇の中から、一人の男が歩いてくる。
長い髪。
整った顔。
そして、どこか人を馬鹿にするような笑み。
「いやぁ~、ほんっと使い物にならねぇオモチャだなぁ」
男は倒れたスベルを見下ろした。
「せっかく面白くなると思ったのにさぁ」
レティシアが剣を構える。
「お前……何者だ!」
男は肩をすくめる。
「そんな怖い顔すんなってぇ」
そして、軽薄な笑みを浮かべる。
「俺は――」
黒い魔力が、ゆっくりと男の周囲に集まっていく。
「魔境三大天の一人」
「遊戯のヤーリミオン」
「よろしくねぇ~?」
その瞬間。
キラたちの間に、再び緊張が走った。
第160話 終




