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『レベルリセットから始まる最強魔法剣士の英雄譚 ~五つの紋章と仲間たちと共に、滅びゆく世界を救います~』30000pv突破  作者: きらっち
青年期

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155話 最大の対抗策



獣人族の街を離れたキラたちは、急いでエルフ族の王――サーベンのもとへ向かっていた。


先頭を歩くキラの隣には、シエラがいる。


その後ろにはレティシア、エリス、セリーナ。


「……」


シエラは一言も話さず、黙々と歩いていた。


「シエラ」


キラが声をかける。


「大丈夫か?」


「……うん」


シエラは頷く。


「でも……まだ信じられない」


「獣人族の街のことか」


「うん」


シエラは拳を握る。


「私が知っている街は、もっと明るかった」


「……」


「皆が笑っていて……他の種族とも普通に話していた」


シエラは俯く。


「それが、どうして……」


キラは答えられなかった。


原因が分からない。


ただ、何者かが種族同士を争わせている。


その可能性だけが、少しずつ濃くなっていた。


そして――。


しばらく歩いた先。


エルフ族の居住区画が見えてきた。


「着いた」


エリスが言う。


「サーベン様のところへ急ごう」


一行はそのままサーベンのいる場所へ向かった。


――――――――――


「サーベン!」


キラが部屋へ入る。


「おお、キラか」


サーベンが振り向く。




そこでは、三人の人物が話し合いをしていた


竜人族の王――トライゴン。


ドワーフ族の王――ベンガル。


そして――。


人魚族の王――ハイドロ。


「キラ!」


トライゴンが声を上げる。


「戻ったか!」


「トライゴン」


ベンガルが豪快に笑った。


「無事だったようだな!」


「はい」


そしてハイドロも静かに頷く。


「獣人族の街へ向かったが何か分かったか?」


「あぁ。そこで……」


キラは一度、シエラを見る。


「彼女を見つけました」


「……獣人族か」


ハイドロが呟く。


シエラは少し警戒したが、キラの後ろから前へ出た。


「私はシエラです」


サーベンが優しく尋ねる。


「何があった?」


シエラはゆっくりと話し始めた。


獣人族の街が壊れていたこと。


獣人族たちが正気を失ったように歩いていたこと。


そして、自分たちも襲われたこと。


さらに――。


「ガミオン様がおかしくなり始めたのは、二年ほど前です」


「二年前……」


ベンガルが眉をひそめる。


「その前に、気になることがありました」


シエラは続けた。


「ガミオン様の弟……スベルが、黒い服を着た怪しい人族と話していたんです」


「……!」


部屋の空気が変わった。


トライゴンが腕を組む。


「黒い人族……か」


ハイドロも険しい表情になる。


「私が知る限り、最近この国で起きている事件には、黒い力の痕跡がある」


「やはり……」


キラが頷く。


「それだけじゃありません」


キラは全員を見る。


「スベルには、固有スキルがあるそうです」


「固有スキル?」


サーベンが尋ねる。


エリスが口を開いた。


「変化分身です」


「変化分身……」


「自分の分身を作り、その分身の姿を別の種族や人物に変化させることができるスキルです」


ベンガルの顔が険しくなる。


「……まさか」


トライゴンが呟いた。


「俺たちを襲った奴らも……」


キラが頷く。


「その可能性があります」


部屋が静まり返る。


キラは一つずつ整理する。


「竜人族はドワーフ族に襲われたと言った」


「だが、実際にはドワーフ族も襲われていた」


ベンガルが頷く。


「そうだ」


「そしてシエラは、エルフ、ドワーフ、竜人、人魚に襲われたと言っています」


ハイドロが腕を組む。


「つまり……」


キラは続ける。


「もしスベルが変化分身を使えるなら、各種族に化けることができます」


「そして――」


エリスが言葉を繋ぐ。


「別の種族に化けて、他の種族を襲わせる」


「そうすれば……」


セリーナが気づく。


「みんなが、お互いを敵だと思ってしまいます」


「その通りだ」


キラが頷く。


ベンガルが拳を握る。


「俺たちは、まんまと騙されていたということか……」


トライゴンも悔しそうに歯を食いしばる。


「俺もドワーフ族を疑ってしまった」


「俺も竜人族を疑った」


ベンガルが答える。


二人は顔を見合わせる。


「だが、今は違う」


「そうだな」


二人が頷いた。


「俺たちはもう敵じゃない」


「ああ」


サーベンが二人を見て微笑む。


「それこそが、今回の事件を起こした者にとって最も困ることなのだろう」


「……」


キラが考える。


確かに。


ドワーフと竜人はすでに和解した。


そして今、エルフ、人魚もここにいる。


もし本当に誰かが種族間の争いを起こしているのなら――。


この状況は、その計画を大きく狂わせる。


しかし。


「一つ問題がある」


ハイドロが口を開いた。


「スベルが実行犯だったとしても――」


「その裏に誰がいるのか、だな」


キラが答える。


ハイドロは頷いた。


「そうだ」


エリスが俯く。


「スベルだけで、こんな大きなことをするとは思えない」


「俺もそう思う」


キラが答える。


「黒い男と話していたという証言もある」


「つまり……」


レティシアが腕を組む。


「スベルは誰かに利用されてるかもしれないってこと?」


「その可能性が高い」


キラが頷く。


「スベルが各種族に化けて争いを起こす」


「そして、その裏に別の誰かがいる」


サーベンが静かに言った。


「では、その黒い男を探す必要があるな」


「はい」


キラが答える。


「そして、スベル本人にも会わないといけません」


「獣人族の街へ戻るのか?」


トライゴンが尋ねる。


キラは少し考える。


「……今の状態で正面から入るのは危険です」


シエラも頷く。


「あの状態の獣人族たちは……普通じゃない」


「ならば、まず情報を集める必要がある」


ベンガルが言う。


ハイドロも頷く。


「各種族から情報を集めよう」


「そして、スベルの行方を探す」


サーベンが立ち上がる。


「この国を分断させようとしている者がいるのなら――」


四人の王を見渡す。


「我々が種族の垣根を越えて手を組むことこそ、最大の対抗策になる」


トライゴンが笑う。


「異論はない」


ベンガルも拳を突き出す。


「俺もだ!」


ハイドロも静かに頷いた。


「私も協力しよう」


キラはその光景を見つめる。


敵だと思っていた種族同士が、今は同じ場所にいる。


そして――。


その輪の中心には、サーベンがいる。


「これで四種族が協力できますね」


キラが言う。


サーベンは頷いた。


「ああ」


しかし。


誰もまだ知らない。


この四種族の結束を見ている者がいることを。


そして――。


その者の目的が、単なる種族間の争いではないことを。


第155話 終

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