145話 激昂のアンデルフォン
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洞窟の最奥。
そこには、巨大な黒い魔力が渦巻いていた。
キラたちの前に立っているのは――
魔境三大天の一人。
激昂のアンデルフォン。
赤黒い魔力を全身から放ち、こちらを睨みつけている。
「……おれを囮にしやがって」
アンデルフォンは低い声で呟いた。
その言葉に、キラが反応する。
「囮……?」
「どういう意味だ?」
ガルディオが槍を構える。
その隣には、オギデストラのSランク冒険者たち。
獣を操る召喚士――アニー。
槍使い――フォン。
赤魔法使い――コニス。
そして、キラ、レティシア、エリス、セリーナ。
総勢八人。
アンデルフォン一人を取り囲む。
「どうやら、話し合いで済む相手じゃなさそうだな」
フォンが槍を肩に担ぐ。
「オラオラ! だったら全員でぶっ倒すだけだろ!」
「うん!」
コニスも杖を構える。
「私も本気でいくよ!」
アニーは少し面倒そうにため息をついた。
「……Sランクが三人に、騎士団長までいるのか」
そしてキラを見る。
「それに……あの三人もいる」
キラは剣を抜いた。
「行くぞ」
レティシアも二刀を構える。
「うん」
エリスは弓を引き絞る。
「いつでもいいよ」
セリーナは後方で杖を握る。
「皆さん……気をつけてください」
ガルディオが叫ぶ。
「全員、攻撃開始!」
一斉に動いた。
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最初に飛び出したのはフォンだった。
「オラァァァ!」
槍が一直線にアンデルフォンへ迫る。
しかし――
ガキィン!
アンデルフォンは片手で槍を受け止めた。
「なっ……!」
そのままフォンの身体を投げ飛ばす。
「ぐっ!」
フォンが地面を転がる。
「フォン!」
コニスが炎を放つ。
「フレイムバースト!」
巨大な炎がアンデルフォンを包み込む。
その炎の中から――
ズンッ!
アンデルフォンが歩いて出てきた。
「……弱い」
「うそ……!」
コニスの顔が引きつる。
そこへレティシアが接近する。
「双月斬!」
左右から二本の剣が同時に襲いかかる。
アンデルフォンは身体を僅かに傾けた。
一撃目を回避。
二撃目を腕で受け止める。
「くっ!」
レティシアは即座に距離を取る。
しかしアンデルフォンの拳が追ってきた。
「危ない!」
キラが割り込む。
ガキィィン!
剣で拳を受け止める。
だが――
「重い……!」
キラの身体が後ろへ吹き飛ぶ。
「キラ!」
エリスが矢を放つ。
「アルテミス・レイン!」
無数の矢が空から降り注ぐ。
アンデルフォンが黒い魔力を放った。
バシュッ!
矢が次々と弾かれる。
その隙にキラが立ち上がる。
「まだだ!」
剣を握り直す。
そして魔力を集中させた。
「風よ――!」
巨大な風の刃が生まれる。
「テンペスト・ゼロ!」
轟音と共に風圧が洞窟を駆け抜ける。
アンデルフォンの身体が僅かに揺れる。
しかし――
傷はない。
「……!」
キラが目を見開く。
「効いてない……?」
「なら、これだ!」
地面が大きく隆起する。
「グランド・エンド!」
大地そのものがアンデルフォンへ襲いかかる。
アンデルフォンは跳躍した。
そのまま空中からキラへ突っ込んでくる。
「キラ!」
ガルディオが割って入る。
「させるか!」
槍を突き出す。
しかしアンデルフォンは槍を掴み――
「邪魔だ」
ガルディオを吹き飛ばす。
「ぐあっ!」
壁に激突する。
「ガルディオ!」
セリーナがすぐに駆け寄る。
「大丈夫です!」
回復魔法がガルディオの傷を癒していく。
「助かる……!」
その間にも戦いは続いていた。
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アニーが召喚獣を呼び出す。
「……行け」
巨大な魔獣がアンデルフォンへ飛びかかる。
アンデルフォンは拳を振るった。
ドゴォン!
召喚獣が吹き飛ばされる。
「……やっぱり強いな」
アニーが呟く。
フォンが再び立ち上がる。
「まだ終わってねぇぞ!」
槍を握り直す。
コニスも立ち上がった。
「私も!」
三人が同時に攻撃する。
その隙にレティシアが背後へ回る。
「無影連斬!」
無数の斬撃。
だが――
アンデルフォンは全てを見切っていた。
「遅い」
ガキン!
レティシアの二本の剣が弾かれる。
「しまっ――」
アンデルフォンの拳が迫る。
その瞬間。
キラが剣を滑り込ませた。
「させるか!」
ガキィィン!
再び拳と剣がぶつかる。
キラは魔力を解放する。
「雷よ!」
「ラグナ・ボルト!」
巨大な雷撃がアンデルフォンを包む。
さらに――
「炎と風を合わせる!」
「インフェルノ・テンペスト!」
炎と暴風が渦を巻き、アンデルフォンを飲み込む。
爆発。
洞窟全体が揺れる。
「やったか!?」
フォンが叫ぶ。
しかし――
煙の中からアンデルフォンが歩いて出てきた。
「……まだまだだな」
キラは歯を食いしばる。
「これでも……!」
アンデルフォンは圧倒的だった。
キラたち全員で攻撃しても、決定的な一撃を与えられない。
レティシアの剣も。
エリスの矢も。
アニーの召喚獣も。
フォンの槍も。
コニスの魔法も。
ガルディオの攻撃も。
そしてキラの魔法も。
アンデルフォンには届かない。
「くそ……!」
キラが剣を握り締める。
セリーナは全員の傷を回復し続ける。
「皆さん……無理はしないでください!」
それでも全員、退かなかった。
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その時だった。
洞窟の入口から、一人の兵士が駆け込んできた。
「ガルディオ団長!」
「どうした!」
兵士は息を切らしながら叫ぶ。
「王都から……緊急の報告です!」
全員の動きが止まる。
「何があった!」
兵士は震える声で告げた。
「……剣聖アシュレインが……」
一瞬の沈黙。
「敗北しました」
「……!」
キラの目が見開かれる。
レティシアも。
エリスも。
ガルディオも。
その場にいた全員が言葉を失った。
剣聖アシュレイン。
伝説の冒険者。
その男が――
敗北した。
「……そうか」
アンデルフォンが呟く。
そして――
ニヤリと笑った。
「ははっ……!」
「何がおかしい!」
ガルディオが叫ぶ。
アンデルフォンは笑いながら背を向ける。
「今日はもういい」
「なに……?」
「まだ時間稼ぎが必要ならしてやるけどよ」
そう言い残し――
アンデルフォンは闇の奥へと消えていった。
キラは追おうとする。
だが、レティシアが止めた。
「キラ。今は追わない方がいい」
「……分かった」
アンデルフォンの気配が完全に消える。
戦いは終わった。
だが――
新たな戦いが始まったことを、全員が理解していた。
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数時間後。
キラたちはオギデストラ王国へ戻ってきた。
街にはまだ戦いの傷跡が残っている。
誰もが疲れ切っていた。
そんな中――
エリスが立ち止まった。
「……?」
一人のエルフが、こちらへ歩いてくる。
そしてエリスの前で立ち止まった。
「エリス」
エリスの表情が変わる。
「……あなたは……」
エルフは真剣な表情で告げた。
「戻ってこい」
そして――
「我が国の一大事だ。」
エリスは黙り込んだ。
キラたちも、何が起きているのか分からない。
ただ一つ。
エリスの故郷で――
何か重大な事件が起きている。
そのことだけは、はっきりしていた。
第145話 終




