141話 Sランクの魔物
オギデストラを襲った魔物の大群。
その戦いから数日が経った。
街には、少しずつ日常が戻り始めていた。
壊れた建物の修復。
負傷した騎士や冒険者の治療。
そして、戦いで失われたものを取り戻すための作業。
完全に元通りとはいかない。
それでも――
人々の表情には、ようやく安堵が浮かんでいた。
「……ようやく、落ち着いてきたな」
街を歩きながら、キラが呟く。
隣にはレティシア、エリス、セリーナ。
「ええ。あれだけの魔物が押し寄せたんだもの。街が残っただけでも奇跡に近いわ」
レティシアが周囲を見渡す。
「騎士団と冒険者たちも、ずっと復旧作業をしてる」
エリスも静かに言った。
「私たちも、治療所のお手伝いをしました」
セリーナが眼鏡を直す。
キラは少しだけ笑った。
「……俺たちだけじゃない。みんなで守った街だ」
そのとき――
後ろから声が聞こえた。
「キラ殿!」
振り返る。
そこには騎士団長ガルディオが立っていた。
「国王陛下がお呼びです」
「国王が?」
「はい。今回の件について、直接礼を述べたいとのことです」
キラたちは顔を見合わせた。
「……行くか」
「ええ」
四人はガルディオに案内され、オギデストラ王城へ向かった。
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◆オギデストラ王との謁見
大きな扉が開かれる。
その先には広大な謁見の間。
中央には玉座。
そこに座っていたのは、オギデストラ国王だった。
キラたちはその前まで進む。
「顔を上げよ」
国王の声が響く。
「この度、我が国を襲った魔物の群れから、多くの民を救ってくれたこと……心より感謝する」
キラが一歩前に出る。
「俺たちだけの力じゃありません。騎士団や冒険者、それに街の人たちも戦いました」
「謙虚だな」
国王は微笑んだ。
「だが、そなたたち四人がいなければ被害はさらに大きくなっていた。それは事実だ」
「……ありがとうございます」
「そして――」
国王の表情が少し真剣になる。
「今回の襲撃は、単なる魔物の暴走ではないと考えている」
キラの目が鋭くなる。
「……黒い魔力」
「そうだ」
謁見の間に緊張が走る。
キラたちはこれまでの出来事を思い出していた。
エリオス。
黒い魔力の一団。
魔境。
そして、ルナとリナ。
今回のオギデストラへの襲撃も、その延長線上にある可能性がある。
国王が続ける。
「我が国だけで、この問題に対処するのは難しい」
「……」
「そこで私は、アークの国との正式な協力関係を結ぶことを考えている」
キラが顔を上げる。
「アークの国と……?」
「そうだ」
オギデストラとアーク。
二つの国が協力すれば、魔物の調査、騎士団の派遣、情報共有など、多くの面で対応できる。
国王は静かに言った。
「これは我が国だけの問題ではない。世界全体に関わる可能性がある」
キラは黙って考える。
そして――
「……俺も、その方がいいと思います」
「ほう?」
「黒い魔力のことを追っているなら、国同士で情報を共有した方がいい。俺たちも、そのために協力します」
レティシアが頷く。
「私も賛成です」
「私も」
エリスも続く。
セリーナも小さく頷いた。
「私も……協力します」
国王は満足そうに笑った。
「分かった。では、アークの国へ正式な使者を送ろう」
こうして――
オギデストラとアーク。
二つの国の間で、新たな協力関係を結ぶための話し合いが始まった。
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それから数日。
オギデストラ王とアークの国の王。
両国の代表による話し合いが行われた。
今回の魔物襲撃。
黒い魔力。
今後の情報共有。
そして、緊急時の騎士団・冒険者の協力体制。
長時間にわたる協議の末――
正式に協力関係を結ぶことが決定した。
「これで少なくとも、以前よりは動きやすくなるな」
ギルドへ向かう道中、キラが言った。
「国同士が手を組むのは大きいわね」
レティシアが答える。
「でも、まだ終わってない」
エリスが前を見る。
「……黒い魔力の問題が残っている」
「そうだな」
キラも頷いた。
その直後だった。
「キラ!」
ガルディオが走ってくる。
「調査団が戻った!」
「!」
四人はすぐにギルドへ向かった。
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ギルドには、騎士団と冒険者たちが集まっていた。
調査から戻ってきた者たちは、疲労した表情を浮かべている。
ガルディオが前に出る。
「報告を聞く」
調査団の一人が地図を広げた。
「魔物の発生地点を追跡した結果、オギデストラから北東に進んだ山岳地帯で、異常な黒い魔力反応を確認しました」
キラの表情が変わる。
「黒い魔力……」
「はい」
地図上の一点を指す。
「ここです」
そこは深い山の奥。
人がほとんど入らない場所だった。
「さらに奥へ進んだところ――」
調査員が息を飲む。
「巨大な爪痕と、黒い魔力によって汚染された大地を発見しました」
「……」
ギルド内が静まり返る。
そして調査員が最後の言葉を告げた。
「その場所にいる魔物の正体も判明しています」
キラが聞く。
「何だ?」
調査員は答えた。
「――ブラッティフェンリル」
ざわっ――!
ギルド内に動揺が広がる。
ガルディオが続けた。
「Sランクの魔物だ」
「Sランク……」
レティシアが双剣に手を添える。
エリスも弓を背負い直した。
セリーナは不安そうにキラを見る。
「キラさん……」
「……ああ」
キラは立ち上がった。
「行こう」
「キラ」
「黒い魔力の根源がそこにあるなら、放っておけない」
ガルディオも頷く。
「騎士団も同行する」
「分かりました」
キラは剣を腰に戻す。
そして仲間たちを見る。
レティシアはすでに戦う覚悟を決めていた。
エリスも静かに頷く。
セリーナは少し震えながらも、強く頷いた。
「……みんなで行きましょう」
こうして――
オギデストラ騎士団。
そしてキラ、レティシア、エリス、セリーナ。
一行は、黒い魔力の根源とされる存在――
Sランク魔物、ブラッティフェンリル。
その討伐へ向かうことになった。
しかし。
その魔物がただのSランクではないことを――
このときのキラたちは、まだ知らなかった。
第141話 終




