140話 第二波 大型魔物の襲来
オギデストラ西門。
第一波の魔物を退けたキラたちは、城壁の前で息を整えていた。
倒れた魔物の数は、数百を超えている。
「これだけの数を……」
騎士たちは呆然としていた。
しかし――
「……待って」
エリスが遠くを見つめる。
「何か来る」
キラも顔を上げた。
「……地面が揺れてる」
ズン。
ズン。
ズン。
地面が一定の間隔で揺れ始める。
「第二波か……?」
レティシアが二本の剣を構える。
やがて地平線の向こうから、巨大な影が姿を現した。
「なっ……!」
騎士たちが声を失う。
先ほどの魔物とは明らかに違う。
巨大なオーガ。
全身を岩のような外殻で覆った魔獣。
さらに、その後ろには巨大な四足獣や、翼を持つ魔物までいる。
「……さっきより大きい」
エリスが呟く。
「しかも数も多い」
ガルディオ騎士団長が叫ぶ。
「全員、戦闘態勢!」
騎士たちが一斉に武器を構える。
しかしキラは前へ出た。
「ここは俺たちが止めます」
「だが、あの数は――」
「大丈夫です」
キラが剣を抜く。
「今度は、さっきとは違う魔法を使います」
レティシアが笑う。
「キラ、派手にやっていいよ」
「分かってる」
キラは右手を掲げた。
「まずは――風」
魔力が集まる。
「テンペスト・ゼロ!」
ゴォォォォォッ!!
巨大な竜巻が地面を削りながら突き進む。
魔物の群れが巻き上げられ、進行方向が大きく乱れる。
「今!」
エリスが叫ぶ。
「アルテミス・レイン!」
無数の矢が空から降り注ぐ。
大型魔物の足や翼を正確に射抜き、動きを止める。
だが――
「まだ来る!」
巨大なオーガが竜巻を突き破った。
「グォォォォォ!!」
巨大な拳が振り下ろされる。
「任せて!」
レティシアが飛び出す。
ガキィン!!
二本の剣で拳を受け流す。
「重い……!」
さらに二撃目。
三撃目。
レティシアは紙一重でかわしながら、懐へ入り込む。
「幻影双閃!」
二本の剣が高速で閃く。
しかし外殻が硬い。
「硬すぎる!」
「なら――」
キラが手を向ける。
「地面を使う」
地面が大きく隆起する。
「グランド・エンド!」
大地が爆発するように盛り上がり、巨大な岩塊がオーガの足元を包み込む。
「今だ、レティシア!」
「分かった!」
「天狼双牙!!」
二本の剣が同時に走る。
外殻の亀裂へ刃が入り、巨大なオーガが膝をついた。
「まだ終わらない!」
後方から、さらに大型魔物が迫る。
キラは属性を切り替えた。
「水――」
空気中の水分が一瞬で凍りつく。
「アブソリュート・ゼロ!」
ドォォォン!!
巨大な氷の壁が出現し、魔物の群れを一気に凍結させる。
「すごい……」
騎士たちが息を呑む。
だが空から巨大な翼竜が急降下してきた。
「上!」
エリスが叫ぶ。
キラは空を見上げる。
「雷なら――」
右手に青白い閃光が集まる。
「ラグナ・ボルト!」
ズガァァァン!!
雷撃が一直線に空を貫く。
翼竜に直撃し、その巨体が地面へ落下した。
「まだいるよ!」
エリスが叫ぶ。
「分かってる!」
キラは両手を広げた。
炎と風。
二つの属性が絡み合う。
「インフェルノ・テンペスト!」
巨大な炎の竜巻が発生する。
ゴォォォォォォ!!
大型魔物たちを包み込み、群れの中央を一気に吹き飛ばす。
それでも――
黒い魔力を纏った大型魔物が一体、炎を抜けてくる。
キラの目が鋭くなる。
「……黒い魔力か」
魔物が突進する。
キラは剣を構えた。
「なら、これで終わりだ」
光が剣に集まる。
「セレスティアル・レイ!」
光線が魔物を貫く。
黒い魔力が一気に消滅する。
「グォォォ……!」
巨体が崩れ落ちた。
しかし、その直後――
「キラ!」
エリスの声。
さらに巨大な魔物が現れた。
先ほどのオーガよりも二回りは大きい。
全身から黒い魔力を噴き出している。
「……あれは私たちが止める」
レティシアが前に出る。
「エリス!」
「分かってる!」
エリスが弓を引き絞る。
「ウィンドステップ!」
風を纏い、一瞬で位置を変える。
その間にレティシアが魔物の正面へ。
「双月斬!」
斬撃を叩き込む。
魔物が怯んだ瞬間。
「アルテミス・レイン――ゼロ!」
エリスの一矢が、魔物の胸部へ突き刺さる。
「今だ、キラ!」
「――ああ!」
キラは魔力を集中させた。
炎。
水。
風。
大地。
雷。
光。
そして――闇。
七つの属性が重なっていく。
「これで……!」
そこへルミナを重ねる。
「ルミナ・エクリプス!」
光と闇が渦を巻き、巨大な魔力となって魔物を包み込む。
ドォォォォォン!!
閃光。
轟音。
そして――
大型魔物がゆっくりと倒れた。
周囲にいた魔物たちも、次々と動きを止めていく。
「……」
静寂が訪れる。
第二波。
第一波を遥かに上回る大型魔物の群れ。
それを――
たった四人で退けた。
ガルディオは言葉を失っていた。
「これが……Aランク冒険者……」
キラは剣を収める。
「……まだ終わってないかもしれません」
「え?」
キラは遠くを見る。
「第二波まで来た」
「つまり……」
「次がある可能性もある」
レティシアが剣を握り直す。
「なら、何度来ても止めるだけだね」
エリスも頷く。
「この国を守ればいい」
セリーナは負傷した騎士たちへ回復魔法をかけながら微笑んだ。
「私もいますから」
キラは三人を見る。
「……ああ」
そして、再びオギデストラの外へ視線を向けた。
この魔物の群れ。
黒い魔力。
そして魔境。
エリオスたちは、確実に動いている。
「次に来るものも……全部止める」
キラたちは、オギデストラを守るために戦い続ける。
第140話 終




