138話 崩壊寸前の隣国
翌日。
キラたちは、昨日の洞窟で分かったことをギルドへ報告していた。
ガルドだけではない。
レオンやエルディアの関係者も集まり、キラの話を聞いていた。
「……魔境」
ガルドが難しい顔をする。
「ああ」
キラは頷いた。
「エリオスは、自分たちを魔境の人間だと言っていた」
「そして、こちらの世界へ進出しようとしている……」
レオンが呟く。
「そういうことだ」
キラは続ける。
「それと、もう一つ気になることがある」
「ルナとリナか」
レオンが言った。
キラは頷いた。
「エリオスは、黒の力を持つルナと、光の力を持つリナを再び一人にしようとしている」
「その理由はまだ分からない」
「ああ」
キラは答える。
「だから……リナを確認したい」
――――――――――
キラたちは、かつてルナがいた地下へ向かった。
レティシア、エリス、セリーナ。
そしてレオンも同行する。
「ここだ」
キラが足を止める。
以前、リナが水晶の中で眠っていた場所。
キラはゆっくりと奥へ進んだ。
「……」
だが。
そこにあるはずのものが――
なかった。
「……え?」
キラが立ち止まる。
巨大な水晶も。
リナの姿も。
そして、周囲にあった封印の痕跡さえも。
「ない……」
レティシアが周囲を見回す。
「どういうこと?」
「分からない」
キラは水晶があった場所へ近づく。
「ここに……確かにリナがいた」
「封印も?」
レオンが尋ねる。
「……ああ」
キラは答えた。
「封印もあった」
だが今は、何もない。
ただ静かな地下空間が広がっている。
セリーナが魔力を探る。
「……魔力反応がありません」
「黒い魔力は?」
「ほとんど感じません」
エリスも周囲を見渡す。
「誰かが連れ去った?」
「可能性はある」
キラは拳を握る。
「でも……いつ?」
誰も答えられない。
そしてキラには、一つの嫌な予感があった。
――エリオス。
「……急ごう」
キラが言った。
「次はルナだ」
レオンも頷く。
「王都だな」
「ああ」
リナがいる場所。
そして、エリオスが狙っている可能性がある場所。
「王都へ向かう」
――――――――――
数日後。
キラたちは王都へ到着した。
久しぶりの王都。
だが――
「……何か、おかしくない?」
エリスが周囲を見る。
王都の冒険者ギルドへ入る。
すると。
「大変だ!」
「オギデストラが襲われた!」
「魔物の数が多すぎる!」
「このままじゃ国が……!」
ギルド内は騒然としていた。
「何があったんですか?」
レティシアが受付へ駆け寄る。
受付の職員は慌てた様子で答えた。
「隣国のオギデストラが……大量の魔物に襲われています!」
「魔物?」
「はい!」
職員は一枚の報告書を取り出した。
「突然、大量の魔物が国境付近に現れたんです。そして、そのままオギデストラ国内へ侵入しました」
「被害は?」
キラが尋ねる。
「非常に大きいです」
職員の顔が青ざめる。
「都市の一部がすでに壊滅。周辺の村も襲われています」
「……!」
「現在、オギデストラは壊滅寸前だと言われています」
ギルド内が静まり返った。
キラは報告書を受け取る。
そこに記された被害状況。
大量の魔物。
突然の襲撃。
そして――
「……黒い魔力」
キラが呟いた。
「え?」
レティシアが振り返る。
「報告に書いてある」
キラは指を示す。
「魔物の一部から、黒い魔力が確認されている」
「まさか……」
エリスが表情を変える。
キラはレオンを見る。
「エリオスたちと関係している可能性があります」
「ああ」
レオンも頷いた。
「そして、オギデストラは魔境に近い地域でもある」
「……」
キラは考える。
リナが消えた。
封印も消えた。
リナは王都にいる。
そして今――
隣国オギデストラが大量の魔物に襲われている。
「偶然とは思えない」
キラが言った。
「私もそう思う」
レティシアが頷く。
エリスも弓を背負い直す。
「行くんでしょ?」
「ああ」
キラは迷わなかった。
「オギデストラへ行く」
セリーナが驚く。
「でも、かなり危険なのでは……」
「だから行く」
キラは答えた。
「もしエリオスたちが関わっているなら、そこで何か分かるかもしれない」
そして何より――
リナをみつけるためにも。
エリオスの目的を止めるためにも。
このまま見過ごすわけにはいかなかった。
「準備しよう」
レティシアが頷く。
「うん」
エリスも続く。
「急いだ方がいい」
セリーナも決意を固めた。
「私も行きます」
キラは王都の外を見る。
その先にある隣国。
オギデストラ。
そこでは今も、大量の魔物が人々を襲っている。
そして、その魔物たちを率いている者がいるのかもしれない。
「……待ってろ、オギデストラ」
キラは静かに呟いた。
「俺たちが行く」
こうしてキラたちは――
壊滅寸前となった隣国オギデストラへ向かうことになった。
第138話 終




