131話 勝てない
王都へ戻り、ルナを冒険者ギルドに預けたキラたちは、それからしばらく王都を拠点に活動していた。
Cランクになった三人は、以前よりも難しい任務を受けられるようになっていた。
魔物討伐。
護衛。
街道の調査。
迷宮周辺の調査。
一つ一つの依頼をこなし、三人は確実に経験を積んでいった。
そして――
数週間後。
宿の部屋で、キラは一人ステータスを開いていた。
「……そろそろ確認してみるか」
これまで戦い続けてきた。
自分たちが、どれだけ成長したのか。
キラはステータスを表示する。
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【キラ】
種族:人族
年齢:少年
冒険者ランク:Cランク
レベル:67
HP:180
MP:115
筋力:127
敏捷:103
防御:140
魔力:140
魔力操作:205
スキル
レベルリセット
新魔法創造
剣術
魔力操作
魔法剣
気配察知
魔物察知
魔力感知
魔力制御
無詠唱
精密操作
属性適性
火
風
使用可能魔法
ファイアボール
ファイアランス
ウインドカッター
ウィンドバレット
魔力障壁
フレイムスパイラル
ルミナ
ルミナ・フレア
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「……レベル67」
キラはしばらく画面を見つめていた。
以前とは、明らかに違う。
「HPもMPも……かなり増えてる」
だが、一番気になったのは魔力だけではない。
筋力。
敏捷。
防御。
全てが大きく伸びている。
「剣でも戦えるようになってる」
以前のキラなら、魔法を使って距離を取る戦い方が多かった。
だが今は違う。
剣で斬り込み、魔法で相手の動きを崩し、また剣で仕留める。
それが自分の戦い方になっていた。
「……次は二人だな」
キラはレティシアとエリスのステータスも確認する。
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【レティシア】
種族:人族
冒険者ランク:Cランク
レベル:64
HP:225
MP:10
筋力:169
敏捷:255
防御:172
魔力:10
精神:199
器用:200
スキル
剣術
剣気
身体強化
気配察知
回避
反撃
魔物察知
持久力強化
精密剣技
レティシアは三人の中でも、純粋な近接戦闘能力が特に高い。
以前なら受けるしかなかった攻撃を、今では見切ってかわし、その隙に斬り込める。
そして――
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【エリス】
種族:人族
冒険者ランク:Cランク
レベル:71
HP:232
MP:311
筋力:100
敏捷:122
防御:200
魔力:350
魔力操作:200
スキル
強化魔法
弓術
精密射撃
気配察知
遠視
魔物察知
隠密
気配遮断
弱点看破
速射
曲射
使用可能魔法
ウィンドステップ
エリスの強みは、圧倒的な命中精度だった。
「……三人とも、強くなったな」
「エリスは最初当てるの大変だったのにね!」
「もぉ、それは言わないでください」
エリスは恥ずかしそうた。
キラはステータスを閉じた。
「でも……」
これだけ強くなっても。
まだ、自分たちがどこまで通用するのかは分からない。
その答えを知ることになるのは、もう少し先だった。
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それからさらに任務を重ねた。
「討伐完了!」
「次の依頼、受けてきたよ!」
「街道の魔物も片付いたわ」
三人は王都周辺の任務を次々とこなしていった。
そして――
「キラ、ギルドから話があるそうよ」
ある日、ギルドマスターに呼ばれた。
「お前たち三人の実績を確認した」
ギルドマスターは三人を見る。
「十分だ」
そして――
「本日付で、Bランクへの昇格を認める」
「……!」
キラは驚いた。
レティシアも目を見開く。
「Bランク……」
エリスは冒険者証を握った。
「私たちが……?」
「ああ」
ギルドマスターは頷いた。
「もうCランクの依頼では、お前たちには物足りないだろう」
キラは新しい冒険者証を見る。
そこには――
Bランク
と刻まれていた。
「……ついに」
レティシアが笑う。
「ここまで来たのね」
「うん」
キラも頷いた。
だが。
Bランクになったことで、当然ながら任務の危険度も上がった。
そして最初の高難度任務。
森の奥へ進んだ三人は――
そこで、見覚えのある巨大な魔物と遭遇した。
「……あれ」
エリスの顔が固まる。
レティシアも剣を握る。
「嘘でしょ……」
キラは目を見開いた。
巨大な鎧のような甲殻。
鋭い牙。
大きな角。
全身を覆う硬い装甲。
「アーマードボア……」
以前。
三人では勝てなかった魔物。
キラは剣を握り直す。
「……今度は違う」
アーマードボアが突進してくる。
「来る!」
ドォォォン!!
地面が砕ける。
キラは横へ飛んだ。
「レティシア!」
「分かってる!」
レティシアが正面へ回り込む。
剣を構え――
「はああっ!」
ギィン!!
硬い装甲に斬撃が叩き込まれる。
「浅い!」
アーマードボアが頭を振る。
その瞬間――
「そこ!」
エリスの矢が目元へ飛ぶ。
「グォォォッ!」
アーマードボアが怯んだ。
キラは一気に距離を詰める。
「今だ!」
剣に魔力を纏わせる。
斬撃。
さらに炎の魔力を重ねる。
「フレイムスパイラル!」
炎の渦が剣の軌道に沿って巻き付いた。
ズバァァン!!
アーマードボアの装甲が大きく裂ける。
「っしゃぁ!」
キラが叫ぶ。
レティシアが横から斬り込む。
「これで終わり!」
ズガァッ!!
そしてエリスの矢が弱点を正確に射抜いた。
アーマードボアが巨体を揺らす。
「グ……ォ……」
ドォン――!
地面へ倒れた。
静寂。
三人は動かなかった。
やがてキラが呟く。
「……勝った」
レティシアが息を吐く。
「以前は……まるで歯が立たなかったのに」
エリスも倒れたアーマードボアを見る。
「私たち、本当に強くなったんだね」
キラは拳を握った。
「ああ」
自分たちの成長を、初めてはっきりと実感した。
だが――
その直後。
森の奥から、凄まじい咆哮が響いた。
「――グォォォォォッ!!」
「……何?」
エリスが振り返る。
木々の向こうから現れたのは――
巨大なオークだった。
普通のオークとは明らかに違う。
巨大な斧。
分厚い筋肉。
全身に古い戦傷。
そして――
頭には王冠のような角飾り。
「オーク……ジェネラル……」
レティシアが呟く。
キラは息を呑んだ。
「……この圧」
かつて戦った――
グレー卜オーガ。
あの怪物を思い出す。
「こいつ……」
オークジェネラルが斧を振り上げた。
「グォォォッ!!」
ドゴォン!!
地面が大きく砕ける。
「散れ!」
三人が同時に動いた。
エリスが距離を取り、矢を連射する。
レティシアが正面から斧を受け流す。
「くっ……重い!」
キラは横から斬り込む。
「はあっ!」
だが――
ガキィン!
「硬い!」
オークジェネラルが振り返る。
「キラ!」
レティシアが叫ぶ。
巨大な斧が迫る。
キラは剣で受けず、身体を捻ってかわした。
「危なかった……!」
その瞬間。
エリスの矢がオークジェネラルの肩へ突き刺さった。
「今!」
「分かった!」
キラは魔力を一気に高める。
剣に炎が集まる。
「――いくぞ!」
レティシアも踏み込む。
「合わせる!」
二人の斬撃が同時に走る。
そして――
エリスの矢が最後の隙を作った。
「そこ!」
キラの剣が胸元へ突き刺さる。
「うおおおおっ!」
ズガァァァン!!
オークジェネラルが膝をついた。
「グ……ォ……」
そして倒れる。
三人は荒い息を吐いた。
キラは倒れたオークジェネラルを見る。
「……勝った」
レティシアが剣を下ろす。
「グリーンオーガに匹敵する強さだったね」
エリスが笑う。
「それを……私たちが倒した」
キラは自分の手を見る。
「……俺たち、ここまで来たんだ」
かつて勝てなかったアーマードボア。
そして、グリーンオーガに匹敵するオークジェネラル。
どちらにも勝った。
自分たちは確実に強くなっている。
そう実感した。
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三人は王都へ戻った。
ギルドへ報告すると、受付嬢も驚いた。
「アーマードボアに……オークジェネラルまで?」
「はい」
キラが頷く。
「三人で倒しました」
「すごい……」
翌日、新しい依頼を受けることになった。
Bランクになった三人に提示された、高難度の討伐任務。
「これにしましょう」
レティシアが依頼書を見る。
「未踏区域の調査?」
「そうみたい」
エリスが地図を確認する。
「魔物の異常発生も報告されてる」
キラは頷いた。
「行ってみよう」
三人は依頼を受けた。
そして翌日。
指定された場所へ向かう。
森の奥。
異様なほど静かだった。
「……静かすぎない?」
エリスが呟く。
キラも周囲を見回す。
「確かに」
レティシアが剣を抜いた。
「気をつけて」
一歩。
また一歩。
森の奥へ進む。
そのとき――
ドン。
地面が揺れた。
「……?」
ドン……。
また揺れる。
そして。
森の奥から――
何かがこちらへ歩いてくる音がした。
ズシン。
ズシン。
ズシン。
エリスの顔から血の気が引く。
「……来る」
木々が倒れる。
巨大な影が現れた。
「なに……あれ……」
キラは剣を構える。
だが。
身体が、本能的に警告していた。
――勝てない。
さっきまで感じていた自信が、一瞬で消える。
「キラ……」
レティシアの声が震える。
「……あれは、まずい」
魔物がこちらを向く。
そして――
咆哮。
「――――グォォォォォォォッ!!」
大気そのものが震えた。
三人は同時に構える。
だが、その魔物の一撃は――
想像を遥かに超えていた。
「逃げろ!!」
キラが叫ぶ。
遅かった。
ドォォォォォン!!
三人の身体が吹き飛ばされる。
「ぐあっ!」
「きゃあっ!」
「エリス!」
地面を何度も転がる。
立ち上がろうとする。
だが――
足に力が入らない。
キラは震える手で剣を握った。
「……嘘だろ」
目の前に立つ巨大な魔物。
アーマードボアも。
オークジェネラルも。
今までの強敵が、まるで別次元に感じる。
「俺たち……」
キラは息を呑む。
「まだ、全然足りない……」
魔物が再び腕を振り上げる。
レティシアが立ち上がろうとする。
エリスが弓を探す。
三人とも満身創痍。
逃げることさえ難しい。
そして――
魔物の影が三人を覆った。
第131話 終




