130話 Cランク
中央の封印を巡る戦いから数日。
キラ、レティシア、エリスの三人は王都の冒険者ギルドへ戻ってきていた。
その後ろには、ルナもいる。
「……ここが冒険者ギルド」
ルナが静かに呟く。
キラは振り返った。
「うん。でも、ルナは冒険者じゃないからな」
「……分かってる」
レティシアも頷く。
「あなたには、あなたの事情があるもの」
エリスも優しく笑った。
「それに、今はギルドに守ってもらったほうが安全だよ」
ルナは少し寂しそうに三人を見る。
「……三人は?」
「俺たちは冒険者として活動する」
キラが答えた。
「でも、ルナを置いていくって意味じゃない」
「……うん」
そのとき――
「戻ったか!」
ギルドマスターが奥から出てきた。
「お前たちを待っていたぞ」
「ギルドマスター」
三人が前へ出る。
ギルドマスターはルナを見ると、表情を真剣にした。
「ルナについては、こちらで保護する」
「……!」
キラが少し驚く。
「ギルドが?」
「ああ」
ギルドマスターは頷いた。
「黒紋章の連中が狙っている以上、一般の宿に置いておくわけにはいかん」
「それなら……安心ですね」
エリスがほっとしたように言う。
「ギルドの保護下に置き、身の安全を確保する。もちろん、本人の意思も尊重する」
ルナは三人を見る。
「……大丈夫」
そして小さく笑った。
「キラたちが安心して冒険できるなら」
「ルナ……」
キラが頷く。
「必ず迎えに来る」
「うん」
三人がルナをギルドに託したところで――
ギルドマスターが一枚の書類を取り出した。
「そして、お前たち三人には別の話がある」
「別の話?」
レティシアが首を傾げる。
ギルドマスターは書類を机の上に置いた。
「お前たち三人を、Cランクへ昇格させる」
「……え?」
キラが目を見開く。
「俺たちが?」
「ああ」
「でも、俺たちまだ試験うけてないですよ?」
「特例だ」
ギルドマスターは三人を見る。
「今回の中央の封印での働き。そして、これまでの依頼での実績」
「それらを合わせて判断した」
そして――
「さらに、お前たちには強力な推薦がある」
書類に記された名前。
剣聖アシュレイン
大賢者リリー
弓王リゼッタ
「……!」
三人が驚く。
「三人が……?」
「ああ」
ギルドマスターは頷いた。
「伝説のパーティからの正式な推薦だ」
レティシアが拳を握る。
「……認めてもらえたんだ」
エリスも嬉しそうに笑う。
「やった……!」
キラは冒険者証を受け取る。
そこには――
Cランク
の文字が刻まれていた。
「……Cランク」
キラはその文字をじっと見つめた。
Dランクから、Cランクへ。
大きな一歩だった。
そのとき――
「おめでとう」
聞き覚えのある声がした。
三人が振り返る。
そこには、
剣聖アシュレイン。
大賢者リリー。
弓王リゼッタ。
三人が立っていた。
「アシュレイン!」
キラが駆け寄る。
「無事だったんだな!」
「ああ」
アシュレインが笑う。
リゼッタも手を振った。
「天上塔のほうは全部終わったよ!」
「本当に?」
エリスが尋ねる。
「うん」
リリーが頷く。
「最後の封印も確認しました。残っていた異常も、すべて処理しています」
アシュレインが続ける。
「黒紋章の動きも今は止まっている」
そして三人は、ルナを見る。
「……ルナ」
ルナも三人を見る。
「ありがとう」
リリーが優しく微笑んだ。
「これからはギルドがあなたを守ってくれます」
「……はい」
ルナは頷いた。
アシュレインはキラたちへ視線を戻す。
「そして、お前たちはCランクか」
「はい!」
キラが答える。
「まだまだこれからです」
「その意気だ」
リゼッタが笑う。
「もう私たちがずっと付き添う必要はないね」
「……」
キラの表情が少し寂しくなる。
リリーがそれに気づいて微笑んだ。
「別れではありませんよ」
「え?」
「ただ、それぞれの道へ進む時が来たということです」
アシュレインが頷く。
「俺たちは俺たちの役目を終えた」
「そして、お前たちはお前たちの冒険を続けろ」
レティシアが深く頭を下げる。
「ありがとうございました」
エリスも続く。
「また会えるよね?」
リゼッタが笑った。
「もちろん!」
最後にキラが三人を見る。
「……俺たち、もっと強くなります」
アシュレインは笑った。
「期待している」
三人はギルドを出ていく。
扉が閉まる。
キラは手元の冒険者証を見る。
Cランク。
その隣にはレティシアとエリス。
そして少し離れた場所には、ギルドに保護されたルナがいる。
三人の冒険者としての旅。
そしてルナの運命。
それぞれの道は、ここから少しずつ分かれていく。
だが――
また交わる日が来ることを、まだ誰も知らなかった。
第130話 終




