103話 森の奥にある遺跡
巨大な魔物を倒したキラたちは、しばらくその場から動けずにいた。
黒い紋章が消えたことで、森を覆っていた不気味な気配も少しずつ薄れている。
「……終わった、のか?」
キラが剣を下ろす。
レティシアは周囲を警戒しながら、ゆっくりと剣を鞘に収めた。
「たぶん。でも……」
「まだ何かいる」
エリスが木々の奥へ視線を向ける。
「私も感じています」
ルナが胸元を押さえた。
その表情は、明らかに怯えている。
「黒き核じゃない……」
「でも、もっと大きな魔力があるんだったな」
キラが確認する。
ルナは小さく頷いた。
「はい」
キラは倒した魔物を見る。
「こいつも、あの魔力に関係してるのか?」
「分かりません。ただ……」
ルナは魔物の亡骸へ近づいた。
「この魔物から、黒き核の力はもう感じません」
「つまり?」
レティシアが尋ねる。
「誰かに操られていた可能性があります」
「……黒い紋章の連中か」
キラの目が鋭くなる。
黒き紋章。
ルナを器にしようとしている謎の組織。
そして、森に現れた異常な魔物。
すべてが繋がっているように思えた。
「行ってみるか」
キラが言った。
「奥へ?」
エリスが驚く。
「危険よ」
「ああ」
キラは頷いた。
「だからこそ、少しだけ確認したい」
レティシアがキラを見る。
「無茶はしない?」
「しない」
「本当に?」
「……たぶん」
「キラ」
「はい。無茶しません」
レティシアの圧に負け、キラは素直に答えた。
「ふふっ」
エリスが笑う。
「じゃあ、少しだけね」
四人は森の奥へ進み始めた。
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しばらく歩くと、魔物の気配が完全に消えた。
静かすぎる。
鳥の声もない。
風で木の葉が揺れる音すら、ほとんど聞こえない。
「……妙だな」
キラが呟く。
「魔物がいない」
レティシアも剣の柄に手を添えた。
「普通なら、この辺りにも何体かいるはず」
「近づいています」
ルナが立ち止まった。
「魔力が……」
その瞬間。
――ズン。
地面が僅かに揺れた。
「っ!」
エリスが弓を構える。
キラもすぐに剣を抜いた。
「来るか?」
「違います」
ルナが首を横に振る。
「下です」
「下?」
キラが地面を見る。
すると――
地面の隙間から、淡い青白い光が漏れ始めた。
「これは……」
レティシアが目を細める。
キラがしゃがみ込み、土を少し払う。
そこには古びた石板が埋まっていた。
石板には、見覚えのある紋様が刻まれている。
「この紋章……」
キラは息を呑んだ。
黒き核の近くで見た、古代の封印紋。
だが、今回は違った。
黒ではない。
青白い光を放っている。
ルナが石板に手を伸ばす。
「待って!」
キラが止めようとした。
しかし――
ルナの指が石板に触れた。
その瞬間。
――ゴォォォン!!
森全体が震えた。
「きゃっ!」
エリスがよろめく。
「ルナ!」
キラが駆け寄る。
だが、ルナはその場に立ったまま動かない。
瞳だけが、青白く光っていた。
「……思い出した」
「何を?」
キラが尋ねる。
ルナの口から、震える声が漏れる。
「ここ……」
「ここは……」
そして――
「黒き核を封じるための場所じゃない」
キラたちは息を止めた。
「じゃあ、何なんだ?」
ルナはゆっくりと森のさらに奥を見る。
「封じていたのは……」
一拍。
「黒き核を利用しようとした者たちです」
「……!」
その言葉と同時に。
森の奥から、低い音が響いた。
――ドン。
――ドン。
まるで、巨大な何かが歩いているような音。
レティシアが剣を抜く。
「話はあとね」
エリスが矢をつがえる。
「ええ」
キラも剣を構えた。
森の奥。
木々の間から、巨大な石造りの建物が姿を現した。
古代遺跡。
その入口には――
黒い紋章が刻まれていた。
キラは剣を握り直す。
「……あいつら、ここにいるのか」
ルナが静かに答える。
「たぶん……」
そして。
遺跡の奥から、声が響いた。
「――やっと来たか」
キラたちの表情が変わる。
誰かが、待っていた。
第103話 終




