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新人たれ~転生者はヒキニートを目指す~  作者: 笛伊豆
第一章 0歳児

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7.人間の身体は頭が重い

 二本足で立ち上がれるようになってからは早かった。

 最初はすぐに尻餅をついたり四つん這いになったりしていたけど、そのうちに何かに掴まれば立っていることが出来るようになった。

 でもそこからが大変だった。

 歩く、という感覚は前世の経験から覚えているんだけど、それをやろうとするとコケる。

 足がもつれたり躓いたり。

 運動神経や手足の筋肉が頭ほど発達していないためだろうか。

 それよりはむしろ姿勢制御のシステムが不完全だからか。

 前世の記憶にあるんだけど、人間型ロボットの製造が難しいのは直立歩行するための制御システムと姿勢制御用の関節や筋肉? の連携が困難を極めるからなのだそうだ。

 そもそも人間ってバランス的に言えばひどく危なっかしい生物だ。

 何せ重力に逆らって直立している上に、足は細くて地面に接している部分の面積が小さすぎる。

 人間と同じ背格好の人形を立てたらすぐに倒れてしまうのはそのせいだ。

 つまり、人間ってただ立っているだけでも複雑な姿勢制御を常に行っているんだよ。

 それだけでも難しいのに歩いたり走ったりジャンプしたりするってどれだけ大変か。

 しかもだ。

 人間の身体は頭が重い。

 重心が上の方にある物体って倒れやすいというレベルじゃ無い。

 成人でもそうなんだから、赤ん坊なんか三頭身くらいで相対的に頭が大きくて重いんだからどうしようもない。

 というわけで、僕はなかなかちゃんと歩けるようにならなかった。

 最初は立っては転んでばかりいたけど、そのうちに何かに掴まれば移動出来ることに気がついた。

 なので、そこら辺にあるよく判らない物にしがみついて移動している。

 ちなみにまだ目がよく見えない。

 ひょっとしたら僕の身体は先天的な欠陥があるのかとも思ったけど、現時点では不明だ。

 もっともよく見えないなりに周囲に居る人たちを認識出来るようにはなってきた。

 定期的に抱き上げて乳首だか哺乳瓶だかを咥えさせてくれる人は多分母親だろう。

 時々つついてくるのは数人居て、一番でかそうなのがおそらく父親。

 後は兄弟か姉妹?

 その他にも時々モフモフがくっついてくることがあって、室内だからまず猫か。

 凄くでかく感じる。

 前世の感覚で言うと虎とかライオンくらい?

 もちろん僕が赤ん坊だからだろう。

 今の身長が50~60センチくらいだとしたら、普通の猫でも自分に近い大きさに思えるはずだ。

 ふと目が覚めると隣に巨大なモフモフが横たわっていることがあって暑い。

 前世で猫は赤ちゃんに寄り添ったりする動画を観たことがあるけど本当だったのか。

 でも実際に自分が体験するとモフモフよりは体温がダイレクトに伝わって来て暑いというよりはもう熱いんだよ。

 何とか押しのけようとしても重くて動かないし。

 しょうがなくてペシペシ叩いていたら、そのうちに面倒くさそうにどこかに行ってくれるからいいんだけど。

 前世の記憶で赤ちゃんが寄り添う猫を手で叩いている動画を観たような記憶があるが、自分でやってみてよく判った。

 熱いし圧迫感があって重くて嫌だ。

 それでもしがみつける物があるのは悪くないので、時々はモフモフに埋もれて寝ている。

 でもそういう時に限ってすぐに起き上がってどこかに行ってしまうんだよ。

 勝手なものだ。

 まあ猫だし。


 目が見えないと言っても完全に盲目というわけではなくて、ぼんやりとした視界はある。

 何か形がある物が動いたり遠ざかったり近づいて来たりしているのも判る。

 背中と尻に手が回されて抱き上げられたりもする。

 赤ん坊としては正常な扱いなんだろうけど、いきなり空中に持ち上げられるってかなり恐怖だ。

 前世の記憶にあるアブダクションという奴ってこんな感じかも。

 そうこうしているうちに、持ち上げられてハンモックのようなものに入れられるようになった。

 どうやら母親に運ばれているらしい。

 手足をばたつかせても脱出など絶対無理なことが判るので大人しくしている。

 女性が赤ちゃんを身体の前に固定する用具があったっけ。

 抱っこ紐とか。

 自分が抱かれていて言うのも何だけど、よくそんな重い物を抱えて平気だな。

 母親って凄い。

 そういえば赤ちゃんって乳母車とかに乗るんじゃ無かったっけ。

 家によるのかもしれない。

 僕も……私も結婚して子供もいたはずなんだが、もはや記憶が朧気どころかほぼ皆無だ。

 仕事の事は割と思い出せるんだが、なぜか家族については丸ごと忘却してしまっている。

 そもそも男というか私の世代の父親はあまり子育てに関わらなかったと思う。

 ていうか私が高齢化する頃には男も子育てに加わって当然というのが常識になっていたけど、私は何せ老衰で死んだくらいで古い世代だったからなあ。

 今がどんな時代なのか判らないけど。

 日本なのはまず間違いないが、前世の記憶によれば同じ日本でも並行世界(パラレルワールド)という可能性もある。

 そういうことはこれからはっきりしてくるだろう。

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