52.姉妹なんだからしょうがない
結局、あのスイミングクラブには入会しないことになった。
会員にならなくても当日券を使えば利用は出来るそうだ。
でも自己責任なので幼児はお断りだとか。
ということは幼児じゃなくなればいいのか。
小学生くらいになれば市営プールとかも利用出来るよね。
ということで僕の水泳計画はおじゃんになった。
別にいいんだよ。
よく考えたらヒキニートに泳ぎはそぐわないし。
それからも平穏な日々が続いた。
毎日ノルマ分の通信教育を片付けてシンセ弾いて自転車で走り回る。
雨の日は部屋の中でストレッチや体操をした。
えみちゃんに相談したところ、僕の足腰はかなりしっかりしてきているのでそろそろジョギングしてもいいんじゃないと言われた。
やっとか。
身体を鍛えるのには走るのが一番なんだよね。
全身運動だし有酸素運動だし。
それでも足を痛めると拙いということで、えみちゃんご推薦のジョギングシューズを買って貰った。
スポンジが効き過ぎて走ると撥ねるみたいになった。
別にいいんだよ。
最初は町内一周だったけど、そのうちに距離を測ってだんだん遠くまで行くようになった。
僕が住んでいる辺りは都会じゃないけど郊外でもないという中途半端な場所で、家が建ち並んでいる所から少し逸れると田畑が広がっていたりする。
結構大きな河もあって土手の上に道も通っている。
昔の青春ドラマだと高校生のアベックが自転車で走っていたりしたけど、そういう人はいなかった。
よく考えたら昼間だよ。
平日の高校生は授業中だし、休日にわざわざ制服着て自転車では走らないだろうし。
同じ理由でジョギングしている人もほとんどいない。
僕の晩年と違ってまだ社会が健康志向じゃないのかな。
おかげで人目を気にしないで済む。
やっぱり4歳児が一人で走っていたら何だかんだ言われそうだもんね。
そうこうしているうちに妹の誕生日が来て、自由に歩けるようになった妹は何かと僕を構ってくるようになった。
姉妹なんだからしょうがない。
僕は妹の手を引いて近くの公園に行って一緒に遊んだりした。
前世で孫にしてやった記憶があるようなないような。
公園にはママ友の集団と一緒に子供達がいたけど、みんな僕より年長組だった。
小学生はいなかったから保育園や幼稚園が終わった後に遊びに来ているらしい。
絡まれると面倒なので、そいつらが園に行っている午前中の時間帯だけ公園で遊ぶことにする。
午後は妹が昼寝している間に自転車に乗ったりジョギングしたり。
今ではかなりの距離を走れるようになった。
身体も成長した。
5歳の誕生日が来る頃には小学生と間違えられるくらい身長が伸びた。
幼い頃は女の子の方が早く大きくなるんだよね。
母親の希望で髪を伸ばしているので男の子には見えないみたい。
でもスカートをはかずにいつも長ズボンだ。
ここは譲れない。
前世で観たアニメではスカートが嫌いで男子用制服で通す女の子がいたけど、その気持ちがよく判る。
スカートって面倒くさいんだよ。
歩くと足に絡まるし寒いし暑いし。
最初から女の子だったらスカート履くことを疑問にも思わないかもだけど、僕の心は完全に男だ。
ていうか男として老衰して寿命で死ぬまで生きた記憶がある。
その経験からズボンに比べてスカートがいかに理不尽なものなのかを身体で思い知っている。
真冬の雪の中でもスカートな女子高生とか冗談じゃない。
でも学校に行くようになったらズボンは駄目だろうな。
この時代、女子の制服はスカートに決まっていたし。
前世の世界では僕の晩年になるとジェンダーレスとかで男女の制服を自由に選んで良いことになっていたような。
オヤジだったからよく知らないけど。
とりあえず小学校に入るまではズボンで行くぞ。
ていうか小学校、やっぱり行かなくちゃならないみたい。
えみちゃんにも相談してみたけど、今の時代の不登校児童は病気でない限りはわがままや単なる不良化と捉えられているそうだ。
集団行動に反発しているとか。
担任の教師とかが訪問してきて説得してくるらしい。
面倒くさいなあ。
僕の部屋で話す。
「小学校に通わなくても良い、という話はないみたいね」
「そう」
「離島とか凄い山奥とかでも学校に通うのが法律で義務化されていてね。
例えば子供が一人しかいない孤島とかでも学校があって先生がいる」
何と。
知らなかった。
前世でも過疎化した田舎で生徒数が十人くらいの学校があるのは知っていたけど。




