47.僕って美少女なの?
寒くなってくる頃には僕は一人で町内を歩き回れるようになっていた。
幸いにしてこの時代、幼児が一人で歩いていても問題視はされない。
でも迷子だと誤解されるかもしれないので小さなリュックサックに色々入れて持ち歩いている。
これなら何か目的地があって歩いているように見える。
まだ児童虐待とか子供連れ去りってポピュラーじゃないのかなあ。
むしろ、そういう事件が起こっても周囲が隠蔽してしまっているのかもしれない。
いじめっ子問題も根が深そうだけど、なるべく人が多い所を通ったり子供の群れを避けたりしていたら絡まれる事はなかった。
でもある時えみちゃんに言われてしまった。
「まだ大丈夫だとは思うけど、世の中には変態さんとかいるからね。
もう少し大きくなったら用心した方がいい」
「そうなの?」
変態さんか。
そういえば僕の前世でも知られていたっけ。
都市伝説みたいなものだったけど。
小学校児童の前にコートを着て現れて突然全開するとか。
コートの下には何も着てなかったりして。
そんなのは嫌だな。
「スーちゃん美少女だから狙われそう」
「まさか」
笑い飛ばしたら真剣に説教された。
抵抗出来ない弱い立場の子供は狙われるそうだ。
でも僕は他のことが気になっていた。
僕って美少女なの?
そんなことはすっぱり頭から抜けていた。
鏡は洗面所にしかないし、大抵は寝起きで歯を磨いたりするのに気を取られていてろくに見てない。
お風呂にも鏡があったっけ。
早速、お風呂場に行って自分の姿を映してみた。
おおっ!
美幼女がいる!
と言っても髪はボサボサで服はダサい。
それでも顔立ちが整っているのが判る。
僕、美少女だったのか!
TS物の小説では定番だけど、まさか自分で体験することになろうとは。
まさに「なろう」だ。
なりたくもなかったけど(泣)。
でもどうせTSするのならやっぱり美少女の方がいいよね。
そこで気がついて思わず頭を抱えた。
これって○世界美少女転生おじさん、いやむしろじいさんではないか。
心の中の一人称がいつの間にか「僕」になっているけど精神的には僕、後期高齢者なんだよね。
普段は意識しないので忘れていた。
後期高齢者が美少女やるのはきつい。
やっぱりヒキニートを目指そう。
季節が巡って僕の誕生パーティが開催されて、僕は4歳児になった。
両親とえみちゃんに加えて妹も参加して賑やかというかちょっと規模が大きくなった。
ホールケーキの上に立っている4本のろうそくを吹き消すと拍手された。
妹が五月蠅かった。
羨ましいらしい。
面倒くさいなあ。
両親からの誕生日プレゼントは何と自転車だった。
補助輪付きの幼児用だったけど嬉しい。
いよいよ僕にも機動力が加わった。
「パパ、ママ。
ありがとう」
この際、偽善だのあざといだのは忘れる。
「おおっ!
娘が可愛い」
「写真!」
撮られた。
別にいいけど。
えみちゃんの誕生日プレゼントはヨガマットだった。
ライトヨガの教本付きだ。
それにバランスボール。
今は折りたたまれているけどでかそう。
空気入れがついている。
「えみちゃんありがとう」
「喜んでくれて私もうれしい」
さすがは理解者、僕の望みをよく判っている。
両親は微妙な顔をしていた。
少し理解出来たと思った娘がまたどっか遠くに行ってしまった事を悟ったらしい。
すみませんね不肖の娘で。
何となく微妙な雰囲気になったのでパーティはそこで解散。
自転車は玄関に置くことにして、僕はヨガマットやバランスボールのストレッチキットを持って部屋に戻った。
正直マットはどうでもいいんだけどバランスボールは嬉しい。
前々から欲しかったんだよね。




