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新人たれ~転生者はヒキニートを目指す~  作者: 笛伊豆
第四章 3歳児

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45.やっぱり異世界じゃん!

「聞き覚えがない。

 スーちゃん、作曲の才能あるよ」

 ないです。

 そうか。

 前世で読んだ小説(ラノベ)に出てきた知識チートという奴だ。

 同じ日本だから出来ないと思っていたけど、日本は日本でもどこか違う。

 やっぱり異世界じゃん!

 大まかな環境は同じでも音楽とか小説とかは違っているのは当然だ。

 特に音楽は差が顕著だし。

 一人の天才が生まれるか生まれないかで全然違ってきてしまう。

 それは逆も言えるんだけど。

 例えば僕の前世ではビートルズとかいうバンドはいなかった。

 でもこっちのロックはそのたったひとつのバンドの影響をもの凄く受けているみたいなんだよ。

 おかげで僕が何となく覚えている前世の曲の流行というか風潮と結構違っていたりして。

 しかも僕の場合、死んだのは後期高齢者になってからだから、この時代からみたらかなり先の未来だ。

 なので擬似的にだけど、未来の知識や情報を持っていることになる。

 もちろん、こっちの日本が僕の前世と同じ発展をするとは限らないけど、それでも未来に属する知識はとてつもないアドバンテージを持つはず。

 余裕のあるヒキニートの夢が近づいた気がする。

 でも働くのは嫌だ。

 というわけで音楽は趣味にしておこう。

 ノルマにしている通信教育を終えると僕は部屋の真ん中でストレッチを始めた。

 もう3歳児ということで、そろそろ運動を始めてもいいかと思ったんだよ。

 図書館で幼児用の健康体操の本とか借りて参考にしている。

 スケートとか水泳は4歳頃から始める人もいる、というか将来プロになったりオリンピックに出ようと思ったら、そこら辺から入って行かないと間に合わないらしい。

 音楽も似たようなもので、どこの業界でもトップになるのは大変だ。

 水泳はともかくアイススケートを4歳からって無理すぎじゃない?

 普通に氷の上に立つことすら難しいのにスケート靴履いてって。

 僕には出来ない。

 でも、そういうことをする人がいるんだから3、4歳から身体を鍛え始めても不思議ではないということだ。

 もちろんアイススケートなんかやる気はないけど、そういう実例があるのなら僕が運動しても不自然じゃないはず。

 えみちゃんに相談したら呆れられた。

「オリンビックでも目指すの?」

「違う。

 健康な肉体を作る」

「目標がそれだと今から始める理由にはならないと思うけど」

 それはそうかもしれない。

 そもそも3歳児とか身体が出来上がってないどころの騒ぎじゃないだろう。

 高校生でもまだ未完成と言われているのに無茶ぶりが過ぎる。

 しかし僕には必殺技がある。

 えみちゃんにアイススケート選手のことを話す。

 この歳から運動始める人もいるはずだと。

「やっぱりスケートでオリンピック目指すの?」

 違うって(泣)。

 懇々と訴えて、やっと判って貰えた。

 僕は健康な肉体を作りたいだけなのだと。

 いったん納得したらえみちゃんは早かった。

 すぐに色々調べてくれた。

「何かのスポーツを極めると、そのスポーツに適した身体になってしまうみたい。

 例えば水泳と重量挙げでは身体が違うでしょう」

 極端な例をあげなくても判るよ。

「つまり?」

「特定のスポーツ向けじゃないとすると基礎ね。

 まずは体幹をしっかり作る。

 同時に体力を伸ばす。

 というわけでまずはウォーキングやりましょう」

 なるほど。

 つまり歩けと。

 散歩すればいいのかな。

「調べたんだけど歩くにしても競歩とかマラソンとか色々あるみたい。

 でもその前に靴が重要と書いてあった」

「靴」

「まだ身体が出来てないうちから無理に走ったりすると膝や足の裏を痛めやすい。

 だからウォーキング用の靴は必須だって」

 そうか。

 納得出来る。

 僕は早速えみちゃんに依頼して両親を説得して貰った。

 運動したいので足を痛めない靴が欲しいと。

 いつもながら3歳児が言うことじゃないよね。

 幸いにして両親は物わかりが良かった。

 というよりはもう思考を放棄したのかもしれない。

 あまりお金がかからないんだったら上の娘には好きにやらせようと。

「天才児で天才音楽家で天才アスリートか」

「私達は応援するわよ」

 いえ、僕の将来の夢はヒキニートですが。

 快適に引きこもるためには健全な肉体が必須でしょう。

 まあいい。

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