42.歳はどうしようもないからなあ
とはいえ、両親は半信半疑ながら納得はしてくれたそうだ。
これまでの僕の実績(違)がアレだったもんね。
そもそも2歳児が楽器演奏したり図書館の絵本や図鑑や歴史漫画を読み尽くしてしまうこと自体、常識なんか蹴飛ばしすぎている。
母親は僕が字を読めることを知っていた。
それはそうだろう。
あれだけ本を借りさせられたんだし。
歴史漫画自体、絵だけじゃなくてかなり詳しい解説が載っていて、本来は小学校高学年向けだ。
それを2歳児がどうみても文章を読みながら全巻読破している姿を見られているんだよ。
父親は半信半疑だったみたいだけど、えみちゃんの説得で頷いてくれた。
無駄だったとしても大した出費じゃないし、万一本当だったらやらない方がリスクがある。
「というわけでスーちゃんの要望は通りました」
「ありがとう」
本当にうれしい。
というか助かった。
歳はどうしようもないからなあ。
前世で読んだ小説では主人公が幼児のうちから活躍しているけど、現実には環境が整わなければ無理だ。
貴族だから、というのは通じないと思う。
むしろ貴族だったとしたら子供の頃からやることが決められていて、とてもチートを発揮したりする余裕なんか(時間的に)ない。
ていうか保守的な貴族の御曹司が何か言っても我が儘と受け取られて否定されて終わりだろう。
伝統が第一だからね。
むしろ僕みたいに家庭にある程度の余裕があって両親が柔軟で、しかもえみちゃんみたいな理解者がそばにいたのはとてつもなく幸運だった。
それこそ主人公並?
たかが勉強しようとするだけで、これだけの手間がかかる。
大変だよ。
まあいい。
具体的な検討に移る。
えみちゃんと議論したんだけど、さすがに小学校用の教科書は無理だということだった。
手に入らないことも無いけど、多分今の僕が読んでも簡単過ぎて意味が無い。
でも両親にはそんなこと判らないからね。
「段階的にやっていこうと思う」
えみちゃんが当事者みたいな顔で言った。
いやアンタがやるんじゃないんだけど。
「というと?」
「世の中には年相応より進んだ勉強をさせたいという親がいてね」
えみちゃんが言うには、僕ほどじゃないけど利発な子供には幼い内から英才教育を施して将来はエリートに、と思う親は多いのだそうだ。
そういえば聞いたことがある。
この時代ではまだ一般的じゃないけど僕の前世では私立小学校のお受験というものがあって、その入試には小学校で習うはずの知識や解法が出るそうだ。
つまり、その私立校に行こうとするのなら、入学前に小学生並の勉強をしておかなければならないことになる。
僕が死ぬ前には小学生向け「お受験」用の塾が産業として成り立つくらい発展していたっけ。
「早期教育を受けさせたい人達のための教育機関もあるけど、通うのが難しい人もいる。
そういう人のために通信教育というものがあって」
なるほど。
学校や塾と違って通信教育なら場所や時間は問わないし、もっと言えば「○○歳向け」を守る必要もない。
だから僕が小学校用の通信教育を受けても問題ない?
「いいの?」
「そういう会社はいちいちお客の年齢とか調べないからね。
スーちゃんが回答しても向こうは判らないから」
そういうものですか。
僕、前世ではそんなものに全然触れてこなかったからなあ。
まあ、とにかくやってみようか。
駄目だったら止めればいいし。
えみちゃんが両親を説得してくれて、翌月から僕は通信教育を受けることになった。
それでもいきなりでは両親が心配するので、とりあえずは幼稚園用と小学校低学年用のテキストを取り寄せてやらされた。
一瞬で全問正答。
当たり前だ(泣)。
「これは」
「本当だったのね!
スーちゃん天才!」
両親は単純に感激しているけど、ちょっとは疑えよ。
天才どころかバケモノだろう。
「では」




