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新人たれ~転生者はヒキニートを目指す~  作者: 笛伊豆
第四章 3歳児

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幕間2 皇桜

 新しく買った自転車の子供席に娘を乗せて駅まで走る。

 駅前の雑居ビルの2階にある「あさま駅前託児所」は乳児から保育園入園前までの幼児を預かってくれる私立の施設だ。

 一応調べてみたけれど評判は良い。

 正規の児童教育施設ではないが自治体から補助金が出ていて利用料も抑えられている。

 シングルマザーや共働きで子供の世話が難しい夫婦をターゲットにしているらしい。

 残業で帰宅が遅くなる人や、夜のお仕事をしている保護者向けに朝から夜間まで開いているという素晴らしい施設だった。

 しかも駅前にあるので、私が出勤の途中で預けて働きに行けるという。

 ちなみに入所出来るのは保育園入学前までだそうだ。

 教育機関ではないので子供を預かって遊ばせたり食事を摂らせたりするだけだ。

 娘を預けると、職員の人は娘の名前を書いたワッペンを胸に貼り付けてから大部屋に入れた。

 ちなみに「ひすい」と書いてある。

 さすがに漢字は無理だろう。

 娘は平然と進んで壁に並んでいる本棚から絵本を何冊か抜き出し、窓際の明るい場所に座り込んで読み始めた。


「あの……ひすいちゃんってまだ1歳ですよね?」

 帰ろうとしたら職員の人が話しかけてきた。

 不安げな表情だ。

 判る。

「はい、そうですよ」

「それにしてはちょっと、あれは」

「まあ、子供は千差万別ですから」


 夫と打ち合わせて「だから?」で押し通すことに決めている。

 世の中には色々な人がいるし、成長速度もまちまちだ。

 だったら1歳で絵本を読みこなす子がいても不思議ではなかろう。


「……何か注意することはありますか?」

「特にないですね。他の子と同じように扱って下さい」


 判るよ。

 不安なんだよね。

 それは私も同じだけど気にしたら負けだ。

 うちの娘はちょっと早熟(・・)なだけの普通の子だから。


「それでは」


 これ以上何か言われないうちに撤退する。

 初日なので気になって会社を定時に引き上げて託児所に行くと、職員の人がほっとしたような顔で迎えてくれた。


「何かありましたか?」

 一応聞いてみる。

「いえ。ずっと絵本を読んでいました。お昼の後、普通……いえ大抵のお子さんはお昼寝するんですが、そのまま絵本を」

「そうですか」


 やっぱりか。

 いやいや、別に不思議じゃないよね?

 世の中には好きな事をしている間は他の事を全部放り出す人もいるし。

 うちの娘は大丈夫、普通だ。

 娘に声を掛けると素直にトコトコ歩いてきた。

 着替えさせて貰ったらしくて服が違う。

 この施設は乳幼児のお世話に特化していて、お着替えの他にオムツの交換などもしてくれるのだ。

 その分、利用料も高いのだが補助金が出ているということで高すぎるということもない。

 まあ、うちにとってはあまり関係ないけど。

 ホームヘルパーやベビーシッターを雇うよりは安いし。


 着替え用の服などを詰め込んだリュックサックを担ぎ、娘を抱いて託児所を出る。

 施設の地下駐輪場に停めてある自転車に娘を乗せて帰宅する。

 娘は夕食の後、夫が買い込んできた絵本を読み始めた。

 何を考えているんだろう。

 ほとんど口を利かないから知恵遅れかと思ったのだが絵本をきちんと読んでいるどころか理解しているようにしか見えない。

 母親の私ですら不気味に思うのだから託児所の人達の恐怖はいかほどか。

 手が掛からないことは確かなので、何とか我慢してくれるといいのだが。


 駄目だった(泣)。

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