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新人たれ~転生者はヒキニートを目指す~  作者: 笛伊豆
第三章 2歳児

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39.ピアノは鍵盤を叩けば音が出る

 もちろん僕は前世ではそんなことはやっていなかった。

 でも興味はあったしやりたいとは思っていたんだよね。

 だけどギターとかピアノとか、地道な練習が必要で時間も手間もかかるから、そんな趣味に邁進する気にはなれなかっただけで。

 でも今なら暇は有り余っているし、2歳から楽器練習ってモーツァルトでもそこまではない気がする。

 僕の心はおじさんだから飽きることはなさそう。

 よし。

 趣味は音楽でいこう。

 部屋の中を探してみたら色々見つかった。

 オモチャがあちこちに転がっているんだけど、いつの間に買って貰ったのか全然覚えが無い笛やらピアノやらが出てきた。

 もちろんオモチャだけど吹いたり弾いたりしたら音は出る。

 とりあえずはこれでいい。

 ていうか今の僕に本物のバイオリンやらトランペットやらを渡されても持つ事も出来ないもんね。

 笛はどっちかというとオカリナ的ないい加減なもので、丸い本体にいくつか穴が空いている。

 指で押さえて息を吹き込むと音が出る。

 楽譜も何もないので指で適当に穴を塞いで吹いていると、だんだん音程とかが判ってきた。

 小学校で習うリコーダーとかと同じだ。

 ピーピー吹いていると母親が来た。

「スーちゃん、上手(じょうず)ね」

「まだまだ」

 適当に返す。

「あまり騒音は出さないでね」

 2歳児にそんなこと言って判ると思っているのか。

 判るけど(泣)。

「わかった」

 天才幼女音楽家の音色に誘われたんじゃ無くて、単なる騒音防止のための訪問だったようだ。

 笛を放り出してオモチャのピアノを弾いてみる。

 大人から見たら何だこれと思うようなチャチなものだろうけど、今の僕には立派な楽器だ。

 鍵が僕の指でも楽に押せて、しかも僕の小さな手でもちゃんと弾けるくらい鍵盤がちょうどいい大きさだったりして。

 試しに弾いてみたらちゃんと音が出た。

 これはなかなか大したものではないか。

 ピアノは鍵盤を叩けば音が出る。

 もちろん曲にはなるはずがないけど、とりあえず音を出すだけでもいい。

 そのうちに教本みたいなものも買って貰えるかもしれないし。

 いや無理か。

 音楽以前にこれは指の動きの練習にもなりそうだ。

 前世でも認知症のリハビリに身体を動かしたり細かい手仕事をするというものがあった気がする。

 つまり指や手を動かすことで身体全体の発達を促せる。

 全身運動が出来ない現在では効果的な鍛錬かもしれない。

 それから僕は暇さえあれば笛を吹いたりピアノを弾いたりした。

 弦楽器はまだ無理だ。

 猫は無関心だった。

 音出しすると最初こそ警戒していたけど、ただ五月蠅いだけで何も無い事が判ると無視するようになった。

 僕の手の届くところで丸くなっている。

 演奏? に飽きると撫でたりして。

 親は何も言わなかったけど、しばらくして遊びに来たえみちゃんに気づかれた。

「スーちゃん!

 音楽に目覚めたの?」

「ちがう」

 説明するのも面倒だし下手に納得されても困る。

「へー。

 ちゃんと曲になっているじゃない。

 何て言う曲?」

 しまった。

 思わず前世で覚えた曲を弾いてしまった。

「しらない」

 どこかで聞きかじったことにする。

「うーん。

 聞き覚えがあるんだかないんだか。

 楽譜があればいいのかな」

 いや、2歳児にそんなもん渡されてもね。

 読めないし、むしろ読めたら神童(ギフテッド)が丸見えだ。

 あ、そうだ。

「曲が聴きたい」

 言ってみた。

「聴くって……ああ、なるほど」

 この時代でもテープレコーダーはもうあったはずだ。

 いやむしろレコードプレーヤーか。

 結構高価なはずだけど、うちの経済状況なら何とかなるのでは。

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