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新人たれ~転生者はヒキニートを目指す~  作者: 笛伊豆
第三章 2歳児

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35.母親、仕事してたよね?

 エレベーターに乗って降りてから手を引かれて歩く。

 ドアの前で幼児用のマスクと手袋をつけて貰って入るとそこは病室だった。

 ベッドがたくさんある。

 その全部にお腹が大きい女の人が寝ていた。

 おお、これだけいると迫力だな。

 母親のベッドは窓際だった。

 ベッドの上に板があって机になっている。

 書類が積んであった。

 こんな所でも仕事しているのか!

 我が母親ながら仕事中毒(ワーカホリック)というか。

「ママ」

 何か言わないといけない気がして呼んでみた。

 おじさん、じゃなくて爺さんが言うには痛い台詞だけど、なぜかすんなりと出た。

 いやお腹が大きい女性だし。

 母親は微笑んでしばらく相手をしてくれた。

 といっても5分くらいで看護師さんに連れられて退出させられたけど。

 妊婦に無理させちゃイカンということらしい。

 母親、仕事してたよね?

 僕が黙っていると看護師さんは拍子抜けしたみたいな表情で託児室に連れて行ってくれた。

 普通は泣くんだろうな。

 何されても平然としている2歳児って怖いよね。

 かといってわざとらしくダダこねたり暴れたりするのも面倒くさい。

 ということで僕は託児室で静かに読書するのだった。

 お昼になったらしくて小さな机が並べられて、お子様ランチの幼児版みたいなプレートが出てきた。

 そういえばここは病棟だった。

 入院患者の食事を作っているんだから幼児向けもついでに用意しているのか。

 子供の中にはまだ一人では上手く食べられない子もいて、作業服? を着た人たちが手伝っていた。

 こんな仕事に看護師さんをあてるほど人手は余ってないのか。

 僕が平然とスプーンを使って完食してみせても誰も何も言わなかった。

 みんな忙しいんだろうな。

 この分なら多少変な事をしてもほっといて貰えそうだ。

 食事が終わると子供達はそれぞれ好きな事を始めたけど、なぜかお互いに無関心というよりは無視しあっていた。

 一体感なんかなさそう。

 それはそうかもしれない。

 ここにいる子供達はあくまで出産する母親の付属品みたいなもので、自分たちが病気というわけじゃない。

 母親が退院したらいなくなるんだから友好を深めても無意味だ。

 どうせ長くても1週間くらいしかいないだろうし。

 そもそも小学校入学前の子供ばかりだからみんな仲良くといった発想がないのかも。

 ならば。

 僕は隅の方に行ってバッグからノートと鉛筆を取りだして床に広げた。

 カムフラージュ用に色えんぴつで適当な絵を描く。

 数ページ描いたところで看護師? の人が観に来たけど、ノートをちらっと見て去った。

 よし。

 でたらめに絵を描きながら考える。

 この託児所にいるのは小学校就学前で、なのに幼稚園や保育園に行ってない子供ばかりだ。

 身体の大きさは色々だけど、僕の見たところ、年齢より費用や空きの問題で施設に通えない子かな?

 前世で調べたことがあって、保育園は0歳から入れる。

 年齢の上限は小学校入学前までだけど、自治体によって決まっているらしい。

 あと、保育園には認可とそうじゃない所がある。

 認可されていない施設って怖いけど、別に非合法というわけじゃない。

 確か認可保育園に入れる子供は親が就労していないと駄目なんだよ。

 共働きとか。

 この時代はまだ専業主婦が当たり前だったから、普段は家で母親に世話されている子供が多かったんだろうな。

 父親はほぼノータッチで。

 だから母親が出産するために入院してしまったら子供の世話をする人がいなくなる。

 近くに祖父母とか親戚がいて、しかも子供を預かってくれるようなケースはあんまりなさそう。

 あと、保育園も幼稚園も大抵は定員いっぱいで、入りたくても入れない子が多かったはず。

 入園が抽選なくらいで。

 僕は親が働いているから認可保育園に入れるはずなんだけど、駅前託児所では不気味な行動のせいで出禁くらったからなあ。

 だからここにいると。

 それはいい。

 問題はこれからだ。

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