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新人たれ~転生者はヒキニートを目指す~  作者: 笛伊豆
第三章 2歳児

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幕間1 皇桜

 私の娘は生まれたときから少し変わった子だった。

 まず、泣かない。

 子育て本によれば乳幼児は何かというと泣くとされていて、それは別に悪い事ではないということだった。

 まだ言葉を話すどころか声を出すことすら難しいし、身体や手足も動かせないのだから意志を示す手段は泣くことしかない。

 だが私の一歳にもならない娘はずっと押し黙ったままだった。

 乳児がかかる病気の時ですら平然としていた。

 いや、何度かは泣きわめいていたから痛いとか苦しいとかは感じるのだろう。

 だが普段は何やら哲学的なことでも考えていそうな表情でじっとしていた。

 夫に相談してみたが、男親って駄目だ。

 「もう少し様子をみよう」とか言われるだけだった。

 そんな娘だが生まれて半年もするとゴロゴロ転がったり起き上がって座り込んだり猫を構うようになった。

 ひょっとしたら発達障害か何かかと心配していたが、考え過ぎだったようだ。

 そのうちにはいはいするようになり、四つん這いで進むようになり、猛烈な速度で壁や箪笥に頭から突っ込むに至った。

 慌てて子供部屋から角のある物を撤去したりした。

 移動能力からして家中が範囲(ターゲット)に入りそうなので、可哀想だが子供部屋のドアの前に柵を設置した。

 退屈しないように色々とオモチャを買ってきて置いておくとそれで遊び始めたのでほっとする。

 夫が買ってくるオモチャは露骨に男の子向けだったが、娘は特に疑問も持たずに遊んでいた。

 まあ、この段階では男も女もないが。

 ところがこの頃から少しずつ娘の奇行が始まった。

 まだ早いというのに夫が買ってきて子供部屋に置いておいた絵本。

 「3~6歳向け」とあるのだが、娘が熱心に読んでいるところを見てしまった。

 ぺたんと坐って両手で絵本を正しく持ち、おぼつかなげながらしっかりとページをめくる。

 ちゃんと読んでるの?

 しかも早い。

 唖然として見ていると娘は最後まで読んでからきちんと閉じて脇に置く。

 そして次の絵本にとりかかる。

 まだ生まれて1年たってないのに!

 もちろん字など教えていない。

 それどころか普通なら絵本の意味すら不明だろう。

 本の上下すら判らないはずなのに。

 だがあの態度はどうみても絵本をきちんと読んでいる。

 その夜、夫に相談したら目を輝かせた。

「何だよそれ!

 うちの娘は天才かよ」

「天才というよりは異常だけど」

「いいじゃんか。

 俺たちの娘なんだからまともなはずが無いし」

 そんなこと言う?

 まあ、確かに私も夫も「まとも」な子供ではなかったけど。

 普通の親とも言い難い。

「よし判った。

 任せておけ」

 夫が自信満々に言うので不安ながら見守ることにしたのだが、次の日から夫は毎日のように絵本を買い込んでくるようになった。

 夜遅く帰ってくると娘が寝ている部屋にこっそり絵本を置いておく。

 大量すぎて壁に沿って絵本が積み上げられる。

 娘は特に疑問にも思わずに次から次へと増えていく絵本を読みふけっていた。

 やっぱり異常なのでは。

 もっとも何が異常なのか判らないし、娘が極端に早熟なだけなのかもしれないので手を拱(こまね)いているうちに1年が過ぎていた。

 子育てのために休職していた私だが、そろそろ良いだろうということで復職に向けて準備を始めた。

 娘についてはホームヘルパーやベビーシッターを雇おうかと思って検討したけど、夫が言うには他人を家に入れたくないそうで、だったら託児所に預けてもいいかなと。

 調べて見たらもよりの駅前に乳児から保育園入学前までの子供を預かってくれる施設があった。

 駅前託児所というものらしい。

 一度尋ねてみたら、乳児が並んで寝ている小さなベッドや色々なオモチャが置いてある絨毯敷きのやや広い部屋があった。

 これはいいかも。

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