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新人たれ~転生者はヒキニートを目指す~  作者: 笛伊豆
第一章 0歳児

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1.私は転生したらしい

 うん、強烈に覚えている。

 働きたくない。

 でもこれ、仕事したくないという意味じゃ無いような。

 要するに人付き合いというか、人との接触が嫌だと。

 上司や同僚や部下とあれこれするのが嫌いだ、という感覚が強い。

 逆に言えばそれがないのなら仕事すること自体は別に嫌じゃ無かった気がする。


 システム設計とか開発はむしろ楽しかったような。

 何をやっていたのか全部忘れたけど。

 でも専門は確か電気通信と情報通信だった。

 何かカッコイイけどそれって何?

 名前しか想い出せない。

 ラベルだけで中身は空っぽだ。


 そういえばしばらく前から何か見えているような気がする。

 でもそれは「見る」というよりは感じ取れるといった方がいい状態で。

 いつの間にか手足らしきものの感覚も戻ってきている。

 あちこち痛いけど、それらはすべて透明な壁の向こう側の物事を眺めているようにしか感じられない。


 痛かったり痒かったり気持ちが悪かったりして、その度に大声で泣いているような。

 あるとき、自分が大声で叫んでいるのに気がついたりして。

 いや自分が泣いたり叫んだりしていることをやっと認識したという。


 拙い。

 看護師さんに迷惑かけてないだろうか。

 大の男が泣きわめいて暴れるって。

 何せ目が見えないんだから何がどうなっているのか判らない。

 そもそも私に暴れられるような身体があるのか?

 倒れるかなり前から足下がおぼつかなくて、真っ直ぐ歩くことも難しかったと思う。

 ヨイヨイという奴だ。

 まだ杖を突くところまではいってなかったというよりは、むしろ杖なんか持っていたらバランスを崩して倒れそうだった。

 世間のお年寄りはよくあんな軽業みたいなことが出来るものだと感心していた。


 今の状態はそれに比べても酷い。

 何せ立ち上がれない。

 それどころか起き上がることも無理だ。

 かろうじて身体を横にしたり寝返りを打ったりは出来るが、それ以外は前に進むことすら難しい。

 手足はある。

 やっとそれが判ってきて、どうやって動かすのかを色々試している最中だ。

 マジックハンド、それも何重にも関節があるような複雑なものを何とか操ろうとしているみたいできつい。

 すぐに疲れてしまう。


 どうしてこんな状態に。

 ようやく「考える」ことが出来るようになってきたのだが、しばしばそれどころではなくなってしまう。

 酷い痛みや吐き気、暑くてたまらなくなったり身体中が痒かったり、とにかくありとあらゆる事が起きているような。


 そして私は泣きわめくことしか出来ない。

 泣いたからと言って痛みがなくなるわけでもなく、ただひたすら辛い。

 私は拷問にかけられているのだろうか。

 何の罪で。


 そんな状態がどれくらい続いたか。

 ふと気がつくと私は坐っていた。

 視点が低い。

 やはりそうか。


 私は転生したらしい。

 あるいは輪廻を回ったというべきか。

 そう、今の私は赤ん坊だった。

 転生って本当にあったんだ。

 それ自体は珍しい考え方ではないし、確かチベットのダライ・ラマは輪廻転生した人だと聞いたことがある。

 あれは本当だったのか。


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