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新人たれ~転生者はヒキニートを目指す~  作者: 笛伊豆
第二章 1歳児

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18.そういうシステムなんだろうな

 その日はお昼前に家に戻ってご飯を食べた。

 お試しだったらしい。

 どうやら僕が預けられても上手くやっていけることが判ったようで、次の日から保育園だか託児所だかに通うことになった。

 幼稚園ならスクールバスが迎えに来てくれるけど、駅前託児所は基本親が連れて来て預けるみたい。

 あの自転車はそのために買ったらしい。

 雨の日はどうするのかと思ったら、僕も母親も雨合羽をつけた上で全体を透明なビニールか何かで覆って普通に通学になった。

 凄いなあ。

 というわけで僕の託児所ライフが始まった。

 最初はお昼ご飯の後、預けられて夕方に母親が迎えに来てくれていたんだけど、そのうちに朝食後にすぐ託児所行きになった。

 お昼ご飯はどうするのかと思ったら、小さなパックお弁当みたいな物が出てきた。

 保育士さんたちが作るわけはないか。

 母親が迎えに来るのは夕方だ。

 たまに日が暮れてもなかなか来ないこともある。

 他の子供達がみんないなくなってしまって、ベッドの乳幼児が数人と僕だけになると保育士の人も一人だけが残っている。

 そういうシステムなんだろうな。

 あの赤ちゃん達は親が夜の仕事をしているのかもしれない。

 こんなこと考えている乳幼児っていないよね。

 もちろん顔には出さないけど。

 母親がどんなに遅くなっても文句も言わず泣きもしないで黙々と絵本を読んでいる僕が不気味らしくて、保育士の人もあまり話しかけて来なかった。

 一歳児の行動じゃ無いよな。

 でもいいのだ。

 これだけ大量の絵本を逃す手はない。


 心は成人の僕が何で今更絵本なんか熱心に読んでいるのかというと、前世の記憶と比較照会しているのだ。

 前にも言ったけど、どうもこの世界の日本、僕の前世とちょっと違っているみたいで。

 何がどう違うのかはまだよく判らないけど、まず言葉が少し変だ。

 かな漢字はほぼ同じなんだけど、どうみても僕の前世ではあり得ないような字が混ざっている。

 アルファベットで言うと、英語とキリル文字みたいな?

 完全に違うところまではいかないし、文章になれば何とか意味はとれるんだけど。

 でも前世の記憶がむしろ邪魔になりそうだ。

 まだ難しい本は読ませて貰えないので歴史的に差があるのかどうかは判らない。

 年長さんが読むための「にほんのれきし」みたいな絵本があったので読んでみたんだけど、そもそも僕って別に歴史に詳しいわけでもないしね。

 それでも大きな流れは前世と同じだと言う事は判った。

 僕の前世でいう箭馬台国というか「やまたいこく」もあったらしい。

 漢字が違う気がするけど。

 それから朝廷が出来て武士の世の中になって、戦国時代を経て明路維新で文明開化して、という歴史は前世と同じ。

 第二次世界大戦もあった。

 日本が負けてアメリカの属国になって、それから色々あって経済発展したんだけど。

 ところどころ僕の記憶と食い違っているんだよ。

 年号なんかも明路じゃなくて明治だし。

 それから大生になって庄和になって、という流れは一緒なんだけど。

 年号の字が違うような。

 大正とか昭和とか違和感がある。


 でも判ったこともあった。

 今の僕がいるこの時代、僕が前世で成人して老衰で死んだ頃よりかなり昔だ。

 年号がまだ庄和、いや昭和だもんね。

 その後、僕の前世では平聖があって零和があって、と続くんだけど、まだそこまで行ってない。

 つまり僕は過去の時代に転生したことになる。

 僕の世界の過去じゃ無いけど。

 今が僕の前世における庄和だとしたらまだ個人用のコンピュータもインターネットもないはず。

 携帯電話はあるけど音声とメッセージくらいしかやりとり出来ないと思う。

 まだスピードフォンは開発されていない。

 あれが出てきたのは確か平聖になってからだったっけ。

 今が西暦何年なのかよく判らない。

 絵本にはそんなこと書いてないから。


 とりあえず慌てる事はない。

 どうせ一歳児には何も出来ないし。

 でも、どうも保育士の人の視線が痛いんだよ。

 僕がまったく泣いたりぐずったりせずに黙々と絵本を読んでいるから、どうしていいのか判らないんだろうな。

 そもそも今の僕くらいの乳幼児って長時間の集中なんか出来ないんじゃなかったっけ?

 よく知らないけど。


 そういえば僕、連続して絵本を読み続けてもあまり疲れないみたい。

 幼児ってまだ脳や身体が完成していないから、使いすぎると発熱したり脱力したりはずでは。

 まさか僕の身体(ボディ)、チートなんだろうか。

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