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新人たれ~転生者はヒキニートを目指す~  作者: 笛伊豆
第二章 1歳児

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16.本当かどうかは知らない

 そういえば前世の僕は頭痛持ちだった。

 週に一度は堪らない頭痛に襲われた。

 医者に行っても原因が判らなかった。

 脳神経外科にまで行った覚えがある。

 まさか、引き継いでないよね?

 ちょっと無理すると寝込むようでは筋トレとか無理なのでは。

 でも生まれて、というか意識がはっきりしてから今まで頭痛を感じたことなかったような。

 今世の身体は頭痛持ちじやないのかも。

 そういえば前世の会社の同僚に生まれてから一度も頭痛を感じたことが無い、という奴がいたっけ。

 何て羨ましいんだと憎んだ記憶があるような。

 一度だけ頭痛がすると言っていたことがあったけど、後で風邪を引いていただけだということが判った。

 つまり頭痛を感じる能力がないんじゃなくて、単に頭痛を感じない性質だったというだけだ。

 今世の僕もそうだといいんだけど。


 そういう諸々の面倒そうな事はいずれはっきりしてくるだろう。

 何せまだ1歳児だ。

 何も判らん。

 そもそも僕の親がどういう人で何の仕事をしているのかすら知らない。

 母親は内職しているみたいだけど、やってるところを見た事は無い。

 僕はまだ自分ではこの部屋を出られないんだよ。

 出たくもないけど。

 本当言えばこのまま一生引きこもっていたいくらいで。

 確か前世では「子供部屋おじさん」とかいう存在がいたっけ。


 それは冗談としても、僕が家の中やせめて庭くらいは自由に歩けるようになるまでにはもうちょっとかかりそうだ。

 そんなに遠くないとは思っているんだけど。

 確か、成長が早い赤ん坊は1歳になる前から歩き出すどころか駆け回ると聞いたような気がする。

 本当かどうかは知らない。

 僕自身について言うと、誕生日を祝ってもらったから生まれて1年はたってるはずだ。

 なのにまた足下がおぼつかない。

 女の子だから?

 あるいは成長が遅いのかも。

 こういうのって個人差があるらしいからあまり心配はしていない。

 親の方針かもしれないし。


 そういえば親だけど、こないだ父親の名前がやっと判った。

 ていうか名前らしき物が。

 ひょっとしたら渾名とかニックネームかもしれないけど「ロク」というらしい。

 母親は「サクラ」で、これはほぼ間違いないだろう。

 生まれて1年以上、親の名前を知らなかったって?

 だって両親は赤ん坊の前でお互いのフルネームなんか呼ばないでしょう。

 ていうか固有名詞すら言わない。

 お互いに「オトウサン」「オカアサン」だ。

 これは僕も前世で親になったことがあるから判るけど、子供が生まれると基準がその子供になってしまうんだよ。

 家族の他のメンバーはその子との関係で認識される。

 父親や母親は子供から見てオトウサンやオカアサンだ。

 なので本人達もそう呼び合う。

 これが祖父母だったらじいさんやばあさんになるんだろうか。

 そんなの滅多に来ないからよく知らないが。

 兄弟姉妹がいたらオニイチャンやオネエチャンになるんだろうな。


 ちなみにそうなるのは人間だけでペットなんかはそのまま呼ばれる。

 うちの猫の名前は「チー」だ。

 変な名前だけど何となくそう命名された理由が判る気がする。

 歩く姿がふてぶてしいというか細身なのに威風堂々と進むんだよ。

 いかにも強そうというか、むしろ速そうな。

 猫の態度じゃない。

 だったら虎かと思ったけど、そういう雰囲気でもない。

 全体的に細身というかスマートだ。

 ヒョウでもないしもちろんライオンでもないと思って何気なく絵本を見たらぴったりの獣が載っていた。

 チーターだ。

 流線型の身体とか、何より雰囲気がそれだった。

 スプリンター?

 多分、最初はチーターという名前だったに違いない。

 でもだんたん面倒くさくなってきたのかどうかは知らないけど、いつの間にか省略してチーになったんだろうな。

 今では本人というか本猫も自分の名前はチーだと思っているみたいだし。

 親が猫を「チー」と呼んでいるのをみたことがある。

 猫はもちろん返事なんかしないんだけど、母親が呼ぶと近よっていた。

 ご飯が貰えることを知っているんだろう。

 そういえば僕が赤ちゃんの頃はよく寄り添ってきたんだけど今となっては近寄っても来ない。

 不機嫌そうな顔でこっちを見ているだけだ。

 でもあの顔って基本らしいから、別に僕の事を嫌っているわけでもなさそうだけど。

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