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新人たれ~転生者はヒキニートを目指す~  作者: 笛伊豆
第二章 1歳児

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14.つまりこの部屋から出るなと

 ということで、僕はこの人生では正社員として就職する気は無い。

 というよりはどこかに雇われるのは真っ平だ。

 バイトくらいは仕方がないけど、嫌になったらすぐに辞められる所じゃないと。

 なので年金は酷い事になるはずだから何とかしてお金を貯めないといけない。

 どうすればいいのか判らないけど。

 何せ僕、どうもチートないみたいだし。

 転生物の定番にこれから起こる事を覚えていて株とかで大儲けしたりする知識チートがあるけど、そんなの全然ないし。

 そもそも僕の前世の日本とは違うみたいだから。


 それでも、例えばこれからコンピュータやネットが発達したり持ち歩ける手の平サイズの電話機というか万能端末が誰にでも買えるくらい普及することは判っているから、そういう業界の会社の株を買っておけばいいような気がする。

 まだデジタル時代になってないみたいだし。

 でもそのためにはまず先立つものが必要だ。

 お金を増やすためにはまずお金を持ってないと駄目なんだよ。

 苦労無しでお金を貰えないものか。


 一歳児がそんなことを考えているとは知らない親は僕が成長していくのが嬉しいみたいで可愛がってくれている。

 具体的には色々オモチャを買ってくれたりして。

 こっちはまだしゃべれないし、身振り手振りも通じないのでされるがままだ。

 もうトテトテというかんじで歩けるようになったので、今のところは子供部屋らしいお部屋にいる。

 親はあんまり近寄って来なくなった。

 ていうか父親はもちろん仕事で朝から夜遅くまで戻って来ないし母親は内職か何かしているみたい。

 部屋のドアは開いているけど、いつの間にか僕の身長より高い柵が設置されている。

 つまりこの部屋から出るなと。


 前世では僕も結婚して女房子供がいたはずなんだけど、あんまり思い出せない。

 そもそも女房や子供とあまり会わなかった。

 いや別に別居とか浮気とかじゃ無くて、平日は通勤のために朝早く家を出て残業を終えて帰ってくると子供は寝ていた。

 大半は女房も寝ていたような。

 休日は疲れてこっちが寝ていたっけ。

 子供と話すようになったのは小学校にあがってからだったような。

 だから子供が赤ん坊の頃がどうなっていたのかまったく知らない。

 僕の晩年には男女平等とか何とかハラとかで男親も育児に参加するのが当たり前になっていたけど、僕が若い頃はまだ専業主婦がたくさんいたからね。


 そういえば前世の僕の妻も一応は専業主婦だった、ような気がする。

 子供が小さい頃は自宅ワークというか内職していて、学校に行くようになったらパートに出ていたような。

 それでいて家事もやっていたんだから大変だっただろうな。

 今更だけど。

 でもあの頃はそれが当たり前だったんだよね。

 今の僕が生きているのがどんな時代か判らないけど、多分まだコンピュータはない。

 ということは僕の若い頃と同じような社会かもしれない。

 それもおいおい判ってくると思う。


 それにしても暇だ。

 何もやることがない。

 転生物の小説(ラノベ)でこの辺りのストーリーがすっとばされるのも判る。

 だって何もないんだよ。

 一日中家でぼやっとしているだけだ。

 僕が普通の幼児だったらそれもいいかもしれないけど、何せ人格は大人というか高齢者だからなあ。

 今更積み木とか絵本をいつまでも続けるというのも。


 とはいえ、精神は肉体に引っ張られるから今の僕の心は完全に大人というわけでもない。

 はっと気づくと夢中になって積み木のお城を建てていたりする。

 割と面白かった。

 そういう様子を見て親は安心するみたい。

 僕が目指す平凡な人生のためには大事な事だ。

 でも「平凡」が一番難しいんだよね。

 「普通」もそう。

 確か何とかの国のアリスだったかで「同じ場所に留まるためには全力で走り続けなければならない」とかいう台詞があったと思うけど、これは本当だ。

 だって前世でサラリーマンだった頃は、本当に必死で頑張り続けないとあっという間に落ちこぼれそうだったし。

 世の中厳しい。


 それを予め判っているのは大きなアドバンテージだ。

 もはやチートと言ってもいい。

 でも、だからといって何がどうなるわけでもないんだよね。

 一歳児だし。

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