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新人たれ~転生者はヒキニートを目指す~  作者: 笛伊豆
第二章 1歳児

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13.思い出せないというよりは忘れたい過去だ

 ところで僕も生まれて1年以上たっているはずなんだけど、部屋の外というか家から出たのは数えるほどだ。

 しかもその全部で誰かに抱っこされたり乳母車に乗せられたりしていて足が地につかなかった。

 家を出たら自動車で運ばれて病院に行って予防接種とか?

 まだ入院するほどの病気にはかかってない。

 とはいえ、本当に病気になったら多分意識を失うだろうから、ひょっとしたら既に経験済みかもしれない。


 ちなみに僕が住んでいるのは一軒家だ。

 玄関から直接道に出られるからマンションやアパートみたいな集合住宅じゃない。

 前世の僕が成人した頃は既に一軒家といえばお金持ちの象徴みたいになっていたから、僕の親って富裕層なのかも。

 あるいはまだ土地や家が安かった時代?

 僕も前世では子供時代は一軒家に住んでいたような。

 別に親が金持ちだったわけじゃなくて、その頃はむしろ集合住宅の方が希少だったんだよ。

 一軒家も安かったような。

 僕の晩年だと都市部で一軒家に住むって普通の家庭では無理というか、少なくとも買ったりするのは大変だったからなあ。

 ちなみに僕の晩年は一軒家で過ごした。

 凄い田舎だと土地付きの家がただ同然で手に入ったから。

 思い出してきたけど、サラリーマン時代は通勤の関係で都市郊外のマンションに住んでいた。

 それでも勤務先まで電車で1時間以上かかったけど。

 子供達が成人して出て行って、僕も会社辞めてマンションを売って田舎に引っ越したと思う。

 記憶が曖昧で、何かの小説や映画と混じっているかもしれないけど。

 そこで町内会の副会長やったりしながら死ぬまでのんべんだらりと。


 そうだ。

 前世の僕は高齢ニートだった。

 まあ、老衰で働けなくなって年金と貯蓄で何とか生きのびていたんだけど。

 でも自由な日々だった。

 サラリーマン時代は鬱になったりしたけど、ヒキニートやっているうちに治った。

 やはり僕にはああいう生活が向いていると思う。

 何とかして若いうちからああいう環境に持ち込めないものか。

 年金と貯蓄がなければ無理かなあ。


 いや年金はともかくお金があれば何とかなるはずだ。

 そのお金も実を言えば大したことはない。

 はずだ。

 前世の晩年って本当に何もしなかったからなあ。

 人間ってただ生きていくだけだったらあまりお金を使わずに何とかなるんだよ。

 それを実践していたから判る。

 身体が効くうちはなるべく外出するようにして、近所のお店を出来るだけ把握した覚えがある。

 住んでいたのはど田舎だったけど、限界集落までいかなかったからそれなりの店があった。

 近くにスーパーマーケットがあったのも大きい。

 あと、なぜかは判らないけど少し離れた場所に安売りの店があった。

 スーパーとまではいかないけど、どうも賞味期限が迫った加工食品や野菜を購入して安く売っていたみたいだった。

 だから前世の僕は出来るだけそのお店で商品を買って、どうしても必要だけど安売りしていない物だけをスーパーや他の店で買って食べていた。


 前世の僕は若い頃から肥満体だったこともあって大食漢だったんだけど、中年以降はあまり食べられなくなった。

 代謝が全然違ってくるからね。

 それでも体重は減らなかったけど、あまり食べないので食費は減った。

 そして退職後はサラリーマン時代の知り合いとの付き合いをきっぱり切ってしまった。

 交際費がないと本当にお金が減らない。

 ていうか使わない。

 通勤しないので電車賃もいらないし、お昼や夕食を高い店で食べる事も無い。

 背広やYシャツ、通勤用ズボンに靴なんかも必要無くなった。

 夜のお店に行かなくなったことも大きかった。


 でも医療費は跳ね上がったけどね。

 酷い時というか晩年には全支出の15パーセントが医療費だった。

 あっちこっちやられて何度も入院したし、歯医者には毎月かかっていた。

 そういえば、ええと何だったっけ。

 夜中に呼吸が止まる病気にもかかっていたような。

 まあいいけど。

 でも、それを含めても生活費は年金より少なかったんだよ。

 つまり公的年金だけで暮らして行けていた。

 それは、僕が死にそうになりながら正社員のサラリーマンとして定年まで勤めたが故だったんだけど、今度の人生では無理だ。

 正直、今回もちゃんと就職してやっていける自信がない。

 僕の会社は別にブラック企業というわけでもなかったんだけど、それでも大変だったんだよ。

 肉体的はともかく精神的にゴリゴリ削られる毎日だったような。

 確か一度鬱になって休職したんだよね。

 思い出せないというよりは忘れたい過去だ。

 前世だけど。

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