12話 【作業厨】の初ダンジョン
父さんの学生時代の親友ギガントの農場にやってきた俺。父さんの……な過去を聞きつつ、ダンジョンの前までやってきた。
「この洞窟がダンジョンだ。リック、さぁ行って来い!」
父さんが手を振って送り出す。よし、頑張るぞ!
「……これで息子が行ってる間にイって来れるな」
恐らく、小声で言っているつもりなのだろう。でもギガントさん、聞こえてますよ。
洞窟の中に入ると物凄い異臭。鼻が曲がりそうだ。
この異臭、どうにかしてくれよ。
『スキル:【異臭耐性】を獲得しました。』
ふぅ。臭いが少し薄くなった。ご都合主義、マジ感謝。
ご都合主義、といえばソラを思い出す。
それは国語で『百科事典少年』という物語の授業を受けているときだった。登場人物のRくんは「ご都合主義なんてクソ食らえ! どうせ全部ハッピーエンドだろ?」というような人間。ちなみにRくんは、その後死亡フラグ立てまくって死ぬんだけどね。
隣に座っていたソラが突然立ち上がった。
「Rくんはご都合主義を嫌うけど、そんなん考察厨の私から言わせればむしろご都合主義じゃない脚本なんてただの現実。つまらないでしょ? ご都合主義を否定する教科書なんてクソ、はっきり分かんだね」
教室が静まり返る。
先生は「授業中私語は厳禁! 立ってろ!」と言った。
ソラは、テストこそ学年のトップだったが、先生に対するなんとかで成績表はオール4だった。
「もう立っているんですけど? 見ればわかりません?」と先生に言い返す、自分の意見をちゃんと言えるソラに俺は憧れた。
「やっぱり洞窟は暗いな。ファイアボ……!」
俺が炎で周りを明るくしようとすると突然、大量の水が。
何が起きたんだ……?
「洞窟内で火をつけるなんて何しているの! 死ぬわよ?」
出てきたのは中学生くらいのお姉さん……と言うか俺から言わせると子ども。
「ちびっ子だから許すけど、洞窟内で火を付けたら魔素不足でポックリよ? 大人だったら私がこの場で焼き尽くしてやるところよ」
この世界では酸素=魔素なのか。知らなかった……って今なんて? 焼き尽くすとかどうとか……。
「坊やは何しにここに来たのかしら? とっとと帰りなさい」
「俺はダンジョン攻略をしたいと思って、ギガントさんから……」
「聖水ジジ……父から!? あー坊やが例の子ね。 私はグルコサミン・ガードナー、天才植物学者よ! 父から聞いているわ、あなたを案内しろって。私のことは気軽にグリコって呼んで!」
あの……。ツッコミどころ満載なのですが。まず聖水ジジイって何なの? まさか娘にまでそんな呼ばわりを!? 次にグリコって呼んでってところ。片足上げて手を大きく上げるアレですか? そして一番のツッコミどころ。
あのエロ本作ったのお前かいっ!!
でもそんな風に全然見えない。
「あ、子供だから平気だと思うけど、発情とかしないでよ? この奥には暗いところでしか咲かない『腰下美人』が群生しているの。」
「ヨウカビジン? 一年のうちの8日しか咲かない花ですか?」
発情という言葉に違和感は覚えたが、俺は尋ねた。
「下半身に強く作用する花だから腰下美人。あ、そもそもこんな坊やが発情なんてわかるわけないわよね、もうウッカリしてた!」
やっぱりコイツだ。あの本書いたの。
『Hey シリ! 腰下美人って何?』
念のためシリウスさんに確認してもらおう。そうしよう。
『腰下美人。白く美しい花を咲かせる。果実はとても甘く、高級食材として扱われる。花は強い香りを放つ。香りには幻惑作用があり、強力な媚薬として知られる。第二次性徴前の子どもには効果がないが、不快に感じることもある。クールなあの子も嗅がせることでトロトロに! このような進化を遂げたのは、魔物たちに花粉や種を運ばせるためだと言われている。さぁ、あなたも……しちゃおう! (グルコサミン・ガードナー著『王族御用達! 素敵なガーデニング』より)』
えぇ……。ちょっと困惑。シリウスさんの知識って、本から来ているのか。進化を遂げた理由がマトモで一瞬感心しかけてしまった。最後の締めくくりが。でも、果実が高級食材とは……。
「ほら、見えてきたわよ! あれが腰下美人。父から、古くからの親友に渡すから取ってこいって言われているの。あとは王都の貴族の名門、ブロッサ家からも依頼されているのよ」
みんな欲しがるのか、コレを。あれ? ギガントさんの古くからの親友って、とうさ……。
「あれ? でもどうしてグリコさんはそういう……風にならないんですか?」
「私は、この程度じゃもう何も感じない体なのよ。耐性ってやつ? あ、もしかして坊や、知ってるわね? もう、そういうことはもっと大きくなってからだよ、ソコも」
……。今確信した。
やっぱりあの人達、親子だ。




